金正恩委員長の「二番目の特使」
金英哲統一戦線部長、金正恩委員長の核心側近
政府「北朝鮮と事前協議…米にも知らせた」
「非核化」含む協議に期待感
南北の指導者“代理人”立て間接対話
金副委員長の相手役にソ・フン国政院長を指名
大統領府、対北朝鮮特使派遣の負担減らす
米朝対話に繋がるか米国の反応に神経尖らせる
北朝鮮が金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長兼統一戦線部長を団長とする第2次高官級代表団を25~27日に派遣することにしたのは、“代理人”を通じた南北の最高指導者の間接対話を持続するという意味とみられる。北朝鮮が事実上2番目の特使派遣に乗り出したことで、南北は平昌(ピョンチャン)五輪閉幕後にも対話の動力を維持しながら、朝鮮半島情勢を積極的に解決していく機会を広げていけるものと見られる。
金英哲副委員長は、党政治局員や中央軍事委員、国務委員会委員、最高人民会議常任委員など、北朝鮮統治体制全般にわたる要職に就いている金正恩(キム・ジョンウン)委員長の側近の一人だ。平昌五輪開幕の際、金委員長の実妹の金与正(キム・ヨジョン)特使が訪韓したのに続き、閉幕式に合わせて金副委員長まで訪韓し、南北関係はむろん、非核化問題を含めた朝鮮半島の懸案に対する密度ある協議が行われるという期待感が高まっている。大統領府関係者は22日「(高官級代表団が)韓国を訪れることになっただけに、南北関係と朝鮮半島の平和や発展、和解などに向けた様々な論議が行われるのではないかと思っている」と話した。
金副委員長の訪韓は、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長を団長とした第1次高官級代表団の訪韓後、南北が続けてきた“水面下の対話”の結実と見られる。金副委員長が韓国政府はもちろん、米国などの独自制裁対象であることから、彼の訪韓と関連した韓米間の事前調整もあったものとみられる。実際、大統領府のある高官は、金副委員長の訪韓問題を米国側にいつ通知したかという質問に対し、「前回の高官級代表団の訪問以降(南北は)持続的に協議を行ってきた。(南北の)非公式接触を進める過程で米国側に要請(通知)したと聞いている」と話した。
金副委員長の訪韓に伴い、政府は対北朝鮮特使の派遣に向けた負担をある程度減らせるものと見られる。金正恩委員長の親書伝達と訪朝の招請に対する南北の後続対話を、金副委員長訪韓期間中に進められるからだ。大統領府関係者が同日、金副委員長の「相手役」(カウンターパート)にソ・フン国家情報院長を指名したのも、このような脈絡からだ。
ソ院長と金副委員長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩委員長の“代理人”として前面に乗り出したのは、今後行われる南北関係の修復過程はもちろん、朝鮮半島情勢を安定させ、米朝対話に進むための両指導者の“勝負手”としての性格もある。
ク・ガブ北韓大学院大学教授は「北朝鮮の統一戦線部は外交関係や南北関係を問わず、国家戦略全体の責任を負う包括的な機構」だとしたうえで、「内閣機構である外務省や祖国平和統一委員会とは異なり、核問題と関連した発言もできる人が来るという意味」と話した。北朝鮮が核・ミサイル発射猶予(モラトリアム)など、米朝対話のための先制的行動に乗り出せば、朝米対話に進む呼び水になれるという意味だ。
チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「北朝鮮は金副委員長の派遣を通じて、本格的な米朝対話に先立ち、米国の対話の意志を試しているようだ」と話した。制裁対象の金英哲副委員長の派遣に対して、米国側がいかなる反応を見せるかによって、朝米対話の見通しを立てる可能性もあるということだ。