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[社説]民主主義の道しるべを新たに打ち立てた市民革命の勝利

登録:2017-03-10 23:57 修正:2017-03-11 06:16
10日午前、朴槿惠大統領弾劾案が憲法裁判所で認容された瞬間、ソウル鍾路区の安国駅近隣に集まっていた市民が立ち上がって歓呼している=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 愚かで極悪非道な大統領は、結局権力の座から追い出された。事必帰正。国民を蔑視し国家権力を私物化して国の根本を揺るがした罪に対する当然の因果応報だ。長い冬が去り春が来る町角で、腐って病気にかかった枝は落ちた。そしてその場に新しい芽生えが始まっている。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領罷免の外的形式は憲法裁判所の弾劾認容だが、実際的内容は常識と当然な道理の勝利だ。これは、左右の問題でも、進歩と保守の対決でも、理念と階級の問題でもない。冬の間に広場で燃え上がったろうそくの炎は「法治と民主」に向けた渇望であったし、憲法裁判所は「全員一致の罷免賛成」でこれに答えた。「大統領の違憲・違法行為は、憲法守護の観点から容認できない重大な法違反行為」であり「大統領罷免により得られる憲法守護の利益が圧倒的に大きい」という憲法裁判所の決定は簡潔で的を射ている。ろうそく市民が流した涙は、不正な権力によって汚された世の中を浄化し、炎に宿った生命力は国を新たに脱皮させようと力強くゆらめいている。

 法治主義は統治者の恣意的支配を排撃することから始まる。憲法の「憲」は、何人も社会構成員に対し害を及ぼせないよう、目と心で徹底的に監視するという意味を含んでいる。大韓民国が一瞬にして奈落の底に落ちたのは、合理的な法の支配ではなく権力者の自分勝手な支配が横行したためだ。憲法裁判所は傍若無人な恣意的統治にとどめを刺し、国家に害悪を及ぼした最高権力者を厳しく懲治することによって法治主義の大義を再び打ち立てた。

「法治と民主」の価値を確認した憲法裁判所決定

昨年11月26日夕方、ソウルの光化門広場で開かれた第5回ろうそく集会を終えた市民が大統領府側に行進している=キム・ポンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 大統領の罷免は国民にとって羞恥であると同時に誇りでもある。ねつ造された神話と虚像にだまされて傲慢無道な資格未達者を国家の最高指導者に選んだことは復元が難しい失敗であった。だが、私たち国民は誤りを自ら原状回復させる偉大な底力を発揮した。「水は船を出すことも、ひっくり返すこともできる」という古の先賢の言葉を身をもって証明した。これを通じて民主主義を一段階進展させた。2017年3月10日は、世界史的にも類例を探し難い市民革命の貴重な勝利の貴重な勝利の日として歴史に長く記録されるだろう。

 朴前大統領は今“失楽園”の悲哀を再確認しているかもしれない。過去4年の歳月、彼女にとって大統領府は思う存分羽を伸ばして楽しむ楽園であっただろう。だが、国民にとっては地獄だった。経済はどん底で停滞し、民生は破綻して、韓国は国際社会の袋叩きに遭うことになった。全国どこを見回しても、一箇所として完全なところはない。無能な権力者が追い出され、残された各種の不幸な遺産はそっくり国民の肩の上に重い荷物として残った。

 それでも朴前大統領には最後まで反省も懺悔もない。憲法裁判所の罷免決定の後にも、一切の立場発表もせずに沈黙で一貫している。この間、憲法裁判所前の道路で繰り広げられた弾劾反対者らの集会は、暴力と過激に上り詰め、2人が亡くなるという不幸な事態が起こった。朴前大統領に最小限の良識があるならば、憲法裁判所の決定直後に直ちに謙虚に承服するという立場を発表することが正しい身の振り方であった。それでパニックに陥った弾劾反対者らをなだめて、気持ちを落ち着かせようと努力することこそ正しかった。しかし、彼女は最小限の義務さえも最後まで放棄した。

 朴前大統領は逆に弾劾反対集会での不祥事を、自身の立場の強化に活用しようと考えているかもしれない。権力の座から追い出されたその先には、検察の捜査など険しい茨の道が待っている。弾劾反対者らの激烈なデモは、自身を保護する良い盾になると見ているかもしれない。朴大統領がこれまで見せた振る舞いを見れば、国家がどうなろうが自分の利益のためには何でもするという破廉恥と小細工の連続だった。「憲法裁判所決定への承服が民主主義の出発点」という命題くらいは簡単に蹴飛ばす人が朴前大統領だ。真に嘆かわしいことだ。だが、朴前大統領は勘違いしてはならない。そうした小細工で法の厳重な審判を避けることはできない。

憲法裁判所決定に沈黙で一貫している意図は何か

 朴前大統領と彼女の支持者は、もう狂気の濁流から抜け出さなければならない。大統領に対する弾劾反対は、灯りに向かって無為に飛び込んでいく夏の虫に過ぎないことが、憲法裁判所の決定により確認された。それでも無駄になった迷妄と盲信から抜け出せずに、このままずっと太極旗を辱める行為を続けるならば、それは国の不幸であり本人の不幸だ。

 憲法裁判所は単に朴大統領の弾劾可否だけを決めたのではない。国の根幹を新たに立て直し、今よりもっと良い国を作らなければならないという課題が、そこには含まれている。憲法裁判所の決定は、弾劾列車の終着駅であり、新しい挑戦に向けた出発駅だ。国の根幹を新しく立てることは、単に法治主義の確立、最高権力者の節制などにとどまらない。“ヘル朝鮮”という言葉で代弁される社会全般の不条理と不平等、社会の随所で乱舞する反則と特権、政官財界の強固な既得権体系など、これまで韓国社会に重々積み上げられた積弊の清算がそれだ。

 憲法裁判所の決定で目前の現実になった5月「桜咲く大統領選挙」の歴史的意味もやはり自明だ。春の明るい気勢をむかえ、古く病にかかった枝をすべて落として、新しい芽生えを果すための重大な過程だ。その新しい芽が花を咲かせるまでには、まだ長い道のりが待っている。

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/786026.html 韓国語原文入力:2017-03-10 20:02
訳J.S(2355字)

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