指導者がその構成員の平均水準を超えるのは難しい。構成員一人ひとりの良心や知的・精神的水準を総合したのが指導者の水準というものだ。金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表は最近の訪米を通じて、それをはっきりと見せつけた。
金代表は“我が国を助けてくれた”ウォーカー将軍の墓地で深々とお辞儀し、「中国よりアメリカ」と語って自ら問題を呼び起こした。韓中関係の重要性を知らずにした発言とは思えない。常に力のある者に従う韓国の保守・右派の実態が、こうした形となって表れたに違いない。
我が国(韓国)の主流勢力である、いわゆる保守・右派は、常に力を持つ側に寄り添ってきた。朝鮮王朝時代には中国を崇め、日帝強制占領期間には日帝に媚びることで栄華を享受した。解放されると、今度は米国に寄り添って自分たちの権力を維持した。こうした変身の理由について、持ち出させる限りの華やかな地政学的論理を突きつけるのだが、それは一言で、自分たちに利益になるためだからだ。今、韓国の保守・右派にとり米国は、まさに彼らの利益を保障する定義となっている。
国内政治でもこうした力の論理が徹底的に貫徹されている。次期大統領候補の選好度で1位になった金代表も、大統領の権力の前では猫の前のネズミのような心細い身の上だ。見ていて痛ましいほどだ。現職大統領に睨まれたら次期大統領候補になれない現実的な理由が最も大きいだろうが、権力への服従は彼らの遺伝子に脈々と流れる基本的な属性である。このような保守・右派に「階級章抜きの論争」を期待するのはそもそも不可能なことだ。
絶えることのない理念論争を呼び起こし、自分らと考え方の違う勢力を排除するのも韓国保守・右派の特徴だ。彼らから真の保守の基本価値である寛大な心や包容など見当たらない。韓国社会の権力をほとんど掌握しているのに自信を持てず、彼らはいつも不安だ。真の保守の旗印を掲げ、正当な競争を通して掌握した権力でないことを知っているためだろうか。
金代表は今回の訪米中にも「進歩左派勢力の蠢動」などと発言し、勢力の棲み分けを試みた。それと共に生徒たちに否定的な歴史観を植え付ける歴史教科書を国定教科書に変えると公言した。これは自分らと考えが違う人は容認しないという意味だ。そしてすべての国民の考えを自分らの思い通りに変えるということに変わりない。多様性を基本原理にする民主主義とは両立できない全体主義的政治観だ。
韓国の保守・右派は体質的に親資本・反労働的だ。彼らのルーツを考えれば当然のことだ。手垢のつくような仕事はしたことがない朝鮮の官吏にとり、労働は卑しい者たちがするものだった。日帝強制占領期間で日帝に媚びた一部の高級管理や大地主にとっても、労働者は単に自分の富を蓄積する手段に過ぎなかった。解放後も今までこうした構図は大きく変わらなかった。韓国の保守・右派にとり労働者とは、対等な境遇で相互で利益を得ようとする関係ではない。企業の利益創出に忠実に寄与する時にだけ、その存在を認められた。
金代表が政権を失う覚悟で臨むと語った労働改革も同じ脈絡にある。彼が言う労働改革の核心は、労働市場の柔軟性を高めることにある。要するに、企業が労働者を簡単に解雇できるという意味だ。そうすれば利潤は増え、企業も生きながらえ、仕事も生まれ、経済も生き返るという論理に他ならない。だが、今まで保守・右派政権が推進してきた親企業、反労働政策がもたらした結果を振り返れば、これは詐欺に過ぎない。非正規雇用が全労働者の50%を超え、正社員の権限はさらに縮小され、その中で企業は天文学的な社内留保金を積んだまま投資には回そうとしない。にもかかわらず労働者の立場を一層劣悪にさせる“労働改革”に躍起になっているのが韓国保守・右派の現在の姿である。
このような属性を持つ保守・右派が私たちの社会の主流を形成しているという事実は、実に不幸だ。金代表は今回の訪米で、自身が韓国の保守・右派を代表していることを確認させ、帰国後、保守・右派の課題を果敢に実行すると堂々と明らかにした。金武星の未来は明るくなったかも知れないが、韓国の未来はより絶望的になった。
韓国語原文入力:2015-08-03 22:03