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[ルポ]20代貧困が今や40代貧困に…“落ちこぼれ青年”の救出に乗り出した日本

登録:2016-01-21 23:37 修正:2016-01-23 07:55

「失われた20年」の悟り 
地方自治体・市民団体など 
青年の働き口・住居支援に乗り出す

 東京に暮らす佐藤カオル氏(仮名、31)は、会社のコールセンターで派遣職として10年間電話業務を遂行して退社した。 だが、新しい職場を探すのは容易でなかった。 家賃を払えなくなり結局追い出された。 住居をなくした佐藤さんは毎日アルバイトをしながら個室のあるネットカフェで生活した。 家庭内の不和でうつ病に罹った長谷川トオル氏(仮名、20)も家を出てネットカフェや24時間営業のマクドナルドで過ごした。

長期不況前後の日本社会と日本の青年の正社員に比べた非正社員の所得の比率//ハンギョレ新聞社

 先月18日午前、東京新宿のビル3階にある「TOKYOチャレンジネット」には、佐藤さんや長谷川さんのような11人が介護職関連の授業を聴いていた。 韓国が住民登録番号社会だとすれば日本は「住民票社会」だ。 「日本では住居が不定な人は仕事を見つけたり福祉恩恵を受けることは難しい」とTOKYOチャレンジネットの小田智雄所長は言う。 ここは「仕事はしたいが安定した住居がなく」新宿や渋谷の繁華街のネットカフェや漫画カフェ、ファーストフード店などを転々としている人々の住宅支援、仕事の斡旋、生活相談などのために東京都が民間に委託して8年前に運営を始めた機関だ。

 1980年代中盤から非正規雇用の拡大、雇用柔軟化などによる不安定雇用が現れ始めた日本にとり、青年問題は長年の宿題だ。 1990年代に長期不況できちんとした仕事を見つけられない若年層が本格的に現れ始めたが、彼らが40代になった2010年以後には「ネットカフェ難民」に象徴される住居と仕事が不安定な貧困層の登場につながったと専門家たちは指摘する。

 2014年にTOKYOチャレンジネットの支援を受けて職場と住居を見つけた人々の中で、40~50代は50%程度を占める。 20~30代の比重も38%だ。

 東京都福祉保健局の松本功・生活援助係長は「20~30代場合、最近就職状況が改善されたとは言え、それは4年制大卒の就職活動学生中心の話で、すでに日本では派遣などの非正社員が増えた状況だ。 その上、ますます家族が崩壊する中で頼れる家族もなく自発的ネットカフェ難民になる青年たちも現れている」と話した。 日本の過去20年余りは「貧しくて仕事が不安定な」青年層が同じような境遇をぐるぐる巡って中年層になってきたことを証明しているわけだ。

 2014年基準で日本の非正社員比率は37.4%で、派遣法が初めて制定された1985年(16.4%)当時に較べて2倍以上に急増した。 経済協力開発機構(OECD)が最近出した所得不平等報告書によれば、日本は1980年代中盤にジニ係数(1に近いほど不平等)が0.291だったが、2010年以後には0.326に悪化した。格差が深刻な米国(0.315)より悪い数値だ。 その上、最近では若い青年労働者を大規模に採用した後に長時間違法労働で絞り取り会社を出て行かせる方法で成長している“ブラック企業”問題が深刻化した。 このような流れに対抗して、日本のNPO、そしてTOKYOチャレンジネットのように民間と手を握った地方自治体は「ひとりの落伍者」でも多く救う努力を各地で行っている。

NPO「POSSE」「首都圏青年ユニオン」
青年求人詐欺・労働搾取がイシュー化
日本政府も「最低賃金1000円」

競争社会で淘汰されたニート族たちのために
企業・政府・NPOなど支援事業も
「20代で落伍しないよう対処」

日本の青年を助ける人たち//ハンギョレ新聞社

■ブラック企業・賃金泥棒をなくせ

 「POSSE(ポッセ)」は働く青年層の権益保護活動を活発に展開する青年が作った非営利団体だ。 今野晴貴代表(33)が学生時代に青年層の勤労実態を調査しシンポジウムを開催したことを契機に2007年にスタートし、以後、非正社員やアルバイトで生活する青年たちを絞り取る“ブラック企業”や“ブラックバイト”問題を一貫してイシュー化してきた。

 先月東京世田谷区の事務所で会った東京大大学院生の渡辺寛人氏は「ブラック企業の求人詐欺の実態を摘発する活動を計画中」と話した。 企業が求人広告を出す時は条件を膨らませて書いておき、仕事を始めれば全く異なる雇用条件であれば、求職者の立場から見れば一種の詐欺に遭った気分だろう。 渡辺氏は「固定的に残業があるとして残業手当まで基本給に含めて給与基準を表記する飲食店やIT企業などがターゲットだ。 外部との連絡を遮断して集団研修を受けさせるような新人教育システムについても問題提起する予定」と話した。 実際、日本の3大牛丼チェーンの一つ「すき家」は、2年前に深夜時間帯に若いアルバイト1人でお客さんの応対から皿洗い、清掃なども全て負わせる“ワンオペ”(ワンオペレーション)の適用を拡大してアルバイトが集団退社するなど大きな論議になったことがある。

 POSSEは今後日本政府を圧迫して最低時給を引き上げ、非正規雇用労働者の低賃金問題を解決して正社員の長時間労働時間も減らしていく方向での政策変化を追求する計画だ。 現在、東京都の最低時給は907円(約9270ウォン)、全国平均は約800円(約8170ウォン)だが韓国の最低時給は6030ウォンだ。

 2010年、韓国に青年ユニオンが初めて作られた時にベンチマーキングした日本の首都圏青年ユニオンは、16年間活動を続けている。 近頃は非正社員、アルバイトにノルマを課して、これを強制的に達成させたり勤務時間の前後の準備時間は時給に含めないなど大小の“賃金強奪”行為を根絶させようというキャンペーンを展開している。東京豊島区の東京労働会館内にある事務室で会った神部紅・執行委員長(34)は「日本の既成世代はかつて青年たちが自由意志でフリーターの暮らしを選択していると考えた。 自分が選んだ仕事であり自己責任ではないかとして既存の労働組合でも彼らの相談に乗らなかった。 だが、状況が悪化して青年たちが自ら『これは自分の責任ではないかもしれない』という認識が増えている」と話した。

 日本政府も最低賃金引き上げの必要性には同意し始めた。 千葉県千葉市にある放送大学の宮本みち子副学長(社会学)は「政府も全国平均最低時給を1000円に引き上げ、保育費を支援してでも青年たちが家庭を設けて子供を産む“1億総活躍”社会を作ると言い始めた。 超高齢化社会を年金で暮らさなければならない高齢者と貧しい青年世代の共存のために、政府は何としても青年を支援しなければならない状況」と話した。

■ニート・引きこもりを家の外に

 競争社会に耐えられず自ら淘汰される道を選ぶいわゆるニート(学校や職場に通わず求職意志もない人)や引きこもりを家の外に引き出すための支援も進行中だ。

 神奈川県横浜市にある「K2インターナショナルグループ」で会計スタッフとして仕事をする植竹正樹氏(34)は一時仕事を見つけられなかった。 小学校高学年の時にいじめにあって、一時学校に通えなくなった。 放送通信高校に進学したが卒業に8年もかかった。 その後も2年間家に引きこもっていた。 暮らしは裕福でなかったし和やかな方でもなかった。 バブル経済崩壊後、建築会社を営んでいた彼の父親は借金が増えた。 保険の営業をしていた母親は後に着物を貸す店を開いた。 事務室で会った彼は「20代半ばまで一度も働いたことがなく不安でしたが、そこから抜け出す道を知らなかった」と話した。

 植竹氏が働く会社は横浜市と厚生労働省の委託で「地域サポートステーション」という地域内共同体を作り、心を病んだ青年を支援している。 植竹もそちらで「若者自立プログラム」を履修してから徐々に家の外に出るようになった。 プログラムを終えた人の80%は他所に就職するが、就職先が見つからない場合、こちらに就職するという。

 28年間に数千名のニート族と引きこもりを支援してきたK2インターナショナルグループの金森克雄代表理事は「就職を始める20代で落伍しないよう積極的に対処することが重要だ」と助言した。 彼は「仕事をせずに20代を過ごしてしまえば、その後も仕事を始めることが難しくなる。 以前はそういう人は特殊だと言ったが、急速な社会変化に適応できなければ誰にでも起きうること」として「政府は就職支援、職業訓練さえやれば解決したと考えるが、彼らが人生をあきらめずに仕事が出来るよう関係ネットワークの形成や生計支援などの包括的サービスが必要な時代」と話した。

 韓国統計庁がOECD基準で把握した青年ニートの数は92万3000人、青年全体の9.7%だ。 これらの青年は「求職意思がない」という点で学校と労働市場から完全に離脱した状況に置かれている。 このような青年たちの社会参加活動を支援し心を治癒することに対する政策や議論はまだ特に行われていない。

東京・千葉・横浜/チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/727178.html 韓国語原文入力:2016-01-21 17:03
訳J.S(3838字)

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