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大韓航空をディスる「エアアジア」の巧みな戦略

登録:2014-12-17 00:28 修正:2014-12-17 08:04
航空業界財閥3世経営者と専門経営者の全面戦争の幕開けを告げる「ナッツリターン」事件への「エアアジア」の対応
最近話題になっているヘテ製菓のハニーバターチップ//ヘテ製菓提供。 //ハンギョレ新聞社

世界の航空業界の歴史で前代未聞の事件である大韓航空の「ナッツリターン」は、国内外で多くの新造語を生み論議を呼んでいる。偶然にもこの時期、エアアジア会長のトニー・フェルナンデス氏は、パク・チソン選手を広告にした航空機を製作し、韓国就航を開始するプロモーションのために韓国を訪問していた。記者懇談会で彼は「韓国でハニーバターチップというお菓子が人気だというが、多く確保して機内サービスで提供したいと思う。しかし、ハニーバターチップは袋ごと提供されるもので、皿に載せられることはないだろう」と述べた。的確なタイミングで若者言葉でいうと余裕のある「ディス(ヒップホップでいう相手をけなす行為)」を飛ばしたのだ。インターネットは熱くなった。エアアジアは、瞬く間に検索語ランキングの上位に上がり、エアアジアのプロモーションまで一緒に関心を集めた。

 この「ディス」は、中短距離のドル箱路線を浸食し、大手航空会社の悩みの種となっていた低コスト航空会社(LCC)の空襲だったが、一方では韓国の空で繰り広げられる旅客分野における戦争の序幕のようにも見えた。韓国の二大航空会社を含む多くのLCCが圧縮的経済成長の過程で、政治権力との特殊な関係の中で形成された財閥システムの延長にあるのに対し、海外のLCCは航空産業たたき上げでキャリアを積み上げた専門家や他の分野で輝かしい成果を収め、独特の「軍鶏」気質を持ち、自力で成功した人々が率いる企業が多いためである。

トニー・フェルナンデスエアアシア会長(左)とチョ・ヒョナ前大韓航空副社長。 //ハンギョレ新聞社

 ディスを飛ばしたフェルナンデス会長はまさに航空産業において立志伝中の人物だ。外資系企業のサラリーマンからキャリアを始め、退社して処分したストックオプションで負債が深刻だったマレーシアの航空会社をたったの300ウォンで買収し、アジア初のLCCを導入してから1年ですべての債務を返済してしまった。 「ナウ・エブリワン・キャン・フライ」(Now Everyone Can Fly)と言ってアジアとオセアニア地域の隅々まで鬼のように路線を広げている。航空ショーでは、一度に飛行機200台を「お買い上げ」し、LCCには無理だと思われていた長距離まで狙っている。

 これまで専門経営者を筆頭にLCC空襲に対抗し、韓国の二大航空会社、特に大韓航空は「高級化」戦略を打ち出した。市場の変化に敏感なほかの航空会社がプレミアムクラスの限界を見直し、ビジネスとファーストの統合とエコノミーの細分化に力を入れる中、大韓航空は少し違った歩みを見せた。もちろん、このような高級化はエコノミークラスには適用されなかった。エコノミークラスは、機内食と座席の間隔を除けば、LCCと変わらないと言われるほどだ。さらに「高級化」戦略でも若干疑問に思われる部分があった。 LCCと他の航空会社との差別化のために、ビジネスクラスの場合1列に4つの座席を配置した航空会社とは異なり、1列に7つの座席を詰め込み、利便性が低いのではという評価も受けた。

 時に理解できない大韓航空の歩みについて、以前から業界では「社主の趣向」という「真実かどうか確認できない噂」が飛び交っていた。安全を最優先すべき航空会社があちこちで航空機が爆発するオンラインゲーム「スタークラフト」で企業のプロモーションを行い、飛行機全体を塗装までしたのも、一日に何回もめまぐるしく変わったこともあるというサービス指示も、たたき上げの専門家の決定というよりは社主の影響ではないかという意見が多い。

 フェルナンデス氏のようにたたき上げで力を蓄え業界の専門家になった経営陣がいる多国籍LCCと、企業の意思決定に絶対的な権限を持っており、最初からファーストクラスのキャビアの螺鈿スプーンを口にくわえて生まれた財閥3世に引き継がれていく財閥航空会社とは、今後どのようなゲームを繰り広げることになるだろうか? 単に低コスト・低価格と高級化・差別化のゲームではない理由は、まさにこの部分にある。絶対的な甲(優越者)は、この戦いでも引き続き絶対的な甲であり得るかどうかが観戦のポイントだ。今後の結果がどうなるかは分からないが、現在までに報道された事件であるハニーバターチップを用いたディスとナッツリターン、そして過去の「名義棄損(チョ前副社長の妹による名誉毀損の誤り)」事件を考えてみれば、世論をリードし反響を呼ぶテクニックにおいては、一方が一枚上手のようだ。

 また、大韓航空がほとぼりが冷めてからも、その乗務員と機長、そしてチョ・ヒョナ前副社長がどのような動きを見せるかが注目すべきポイントだ。少なくとも大韓航空は、政府の多くの支援を受けて成長した、いわゆるフラッグシップという大韓民国の代表航空会社であるからこそ、社主一家だけのものではないのは明らかだからである。

イ・キュホ 米国イリノイ大学人類学博士課程(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014/12/16 15:17

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/669326.html?_fr=mt5 訳H.J(2052字)

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