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【社説】今は主権者の時間、司法府は国民の選択を制限してはならない=韓国

登録:2025-05-02 06:37 修正:2025-05-02 23:04
チョ・ヒデ最高裁長官をはじめとする最高裁判事らが1日午後、ソウル瑞草区の最高裁大法廷で、共に民主党のイ・ジェミョン大統領候補の公職選挙法違反事件の上告審判決を準備している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 韓国最高裁判所が最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン大統領候補の公職選挙法違反容疑事件を有罪の趣旨で破棄し、差し戻した。イ候補はソウル高等裁判所で再び裁判を受けることになる。大統領選挙を目前に控えた時点で、有力候補の被選挙権がかかった裁判が行われるという極度の混乱がもたらされた。民主的権力をつくりだす過程に司法府が無理に介入した結果だ。内乱事態に触発された国家的危機の中で、主権者が国家の未来を決定する選挙が、選出されていない権力である司法府に左右されることがあってはならない。

 最高裁全員合議体(裁判長:チョ・ヒデ最高裁長官)は1日、イ候補のいわゆる「ゴルフ発言」と「国土交通部脅迫発言」が虚偽事実の公表に当たるという判断を示した。「多義的に解釈されうる発言」あるいは「意見表明に該当する」として無罪を宣告した控訴審判決を覆したのだ。裁判に関与した最高裁判事12人のうち10人がこのような多数意見に参加し、イ・フング判事とオ・ギョンミ判事は「虚偽事実公表罪の適用範囲を広げることは、政治的表現の自由と公論の場に刀を突きつける形で民主主義の発展の歴史を後退させる退行的発想」だとして、反対意見を出した。

 選挙法で候補者の発言を規制する理由は、最高裁が述べた通り「候補者の公職適格性に対する選挙人の正確な判断を誤る懸念」があるためだ。すなわち主権者の判断を保障するためのものだ。司法府は主権者に代わって、その言葉が処罰されるべきかどうかを決定するわけだ。ところが一審と二審の結論が明らかに分かれたのに続き、最高裁でも多数意見と少数意見が正反対に分かれた。このような事案なら、主権者の判断を尊重するのが優先だ。これまで一審と二審の裁判を国民が見守り、これに対する国民の判断は現在イ・ジェミョン候補が受けている政治的評価に反映されている。虚偽事実公表罪を拡張した場合、検察が選択的起訴で野党弾圧に悪用する余地があることも、司法府は厳しく判断しなければならない。

 そのうえ、今は大統領選挙が1カ月後に迫った時点だ。新しい権力を創出する高度な政治的過程がすでに始まっている。特に今回の大統領選挙は、内乱を乗り越え、速やかに国を安定させなければならない状況で行われる大統領選挙だ。選出されていない権力である司法府がこれに介入して影響を及ぼすのは、代議民主主義の原理に反する。司法府は主権者の時間を尊重し、司法的自制を働かせるべきだった。

 このような状況で、最高裁が異例の速さで急ぎ、わずか9日で上告審判決を下したのは、大統領選挙に影響を及ぼそうとしているという疑念を招いた。このような速度戦の中で十分な審理が行われたのかも疑問だ。今回の最高裁判決を公正な判決だと信じる国民は多くないだろう。また、選挙法裁判を早期に決着させるという最高裁の名目とは違って、かえって混乱を深めるだけになった。ただでさえ裁判所が内乱首謀の疑いで拘束された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領を奇妙な論理で釈放したかと思えば、チョ・ヒデ最高裁長官が内乱事態に沈黙を守っていることから、司法府は憲政・民主主義を守る意志があるのかも疑われている。最高裁の強引な対応で、もはや司法府に対する信頼は取り返しのつかない水準まで崩れる危機に直面した。国民の信頼がなければ、司法府は存在の根拠を失う。今後行われる裁判で、裁判所は司法府の正道が何なのかを深く考えなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1195392.html韓国語原文入力:2025-05-01 20:04
訳H.J

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