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韓国、雇用回復傾向「明確」というが…非正規労働者「過去最多」の800万人

登録:2021-10-27 02:08 修正:2021-10-27 08:27
非正規労働者の割合38.4%…64万人増 
公共雇用事業が非正規雇用の増加を牽引 
政府「非正規は増えたが、労働条件は改善」
求職(失業)のため入社志願書の画面を見ている人=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 今年、正規労働者は昨年より9万4000人減少し、非正規労働者は64万人増加したことが分かった。賃金労働者全体に占める非正規労働者の割合は38.4%で、史上最高値を記録。これまで政府は、コロナ禍2年目を迎えて緩やかな雇用回復が続いていると説明してきたが、実情を見てみると「質の悪い雇用」ばかりが量産されていたわけだ。

 統計庁が26日に発表した「2021年経済活動人口調査・労働形態別付加調査」の結果によると、今年8月現在の賃金労働者総数2099万2000人のうち、正規労働者は1292万7000人、非正規労働者は806万6000人。昨年は、コロナ禍で賃金労働者の総数が減少する中、特に非正規労働者が直撃を受けたため、非正規労働者の割合が下がっていた。しかし今年は、賃金労働者の数は回復したものの、その増加分のほとんどが非正規労働者で埋められたことで、非正規労働者の割合は対前年(36.3%)比で2.1ポイント上昇した。韓国労働研究院のキム・ユビン動向分析室長は「コロナ禍が長期化していることで、企業が雇用安定性の低い職種と職位で人を補充していると見るべきだ。危機が繰り返される可能性があるという見通しによるものだ」と説明した。

 増えた非正規労働者のかなりの部分が、政府の公共雇用事業によるものだった。今年増加した64万人の非正規労働者のうち、22万8000人が政府の高齢者雇用事業の影響を大きく受ける保健・社会福祉サービス業の従事者だった。年齢層を見ても、60歳以上が27万人と最も多く増えていた。コロナ禍によって打撃を受けた民間領域は依然として回復が遅い。打撃が最も大きかった宿泊・飲食店業は増加も減少もなく現状を維持しており、卸・小売業も3万1000人増にとどまった。

 このような結果は、このかん政府が示してきた診断とは全く異なる。文在寅大統領は今月25日の国会施政演説で、「(韓国は)主要先進国の中でも、コロナ危機前の水準を最も早く回復しており、最も回復が遅れていた雇用でも、先月には危機前の水準の99.8%にまで回復している」と述べている。ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官も20日の国会国政監査で「雇用の質が下ちたというが、週36時間以上の全日制労働者と常用職労働者も、過去のどの時期よりも増加している」とし「コロナ禍という特殊状況においても、雇用だけは実質的にはっきりとした回復の流れを示しているというのが事実」と強調している。

 この日の統計庁の発表内容について、企画財政部は別途に説明資料を発表し、「非正規職労働者の規模は増加したが、非正規労働者関連の主な労働条件指標は改善している」と主張した。非正規労働者の月平均賃金は176万9000ウォン(約17万3000円)で、1年前に比べ5万8000ウォン(約5660円)増えたこと、非正規労働者の雇用保険、健康保険、国民年金の加入率が小幅ながら上昇したことが、政府の提示した根拠だ。

 非正規労働者であることを「自発的に選択した」とする回答も59.9%を占め、昨年(56.6%)より3.3ポイント増えたが、政府はこれもまた非正規労働者の労働条件改善の主な根拠として挙げた。「労働条件に対する満足、安定的雇用などが(非正規労働者であることの自発的選択の)主な理由」というのだ。これについて韓国労働社会研究所のキム・ジョンジン先任研究委員は「時間が余っているからパートを選ぶ人が増えているということもありうるが、もしかしたら回答者がコロナ危機の中で労働条件の質的低下を内面化した結果かもしれない。外的変数を考慮せずに単純に肯定的現象と解釈するのではなく、政府はより綿密な分析を行うべきだ」と指摘した。

 非正規労働者の増加は今年に限らない。韓国の非正規労働者の割合は世界ランキングでも年々上昇している。経済協力開発機構(OECD)が国家間比較のために独自の基準を設定して集計する「非正規労働者(Temporary workers)」の昨年の割合は、韓国は26.1%で全加盟国中2位だった。2017年には韓国は8位だったが、2018年は7位、2019年は4位と次第に順位を上げ、昨年はコロンビア(27.3%)に次いで非正規労働者の多い国となった。文在寅政権は公共部門の非正規労働者の正規職化を推進して民間の動きを誘導しようとしたが、全くうまくいかなかったのだ。

 専門家は、この間のコロナ危機の中でなす術なく悪化してきた雇用の質を、本格的に引き上げる時に来ていると指摘した。キム・ジョンジン先任研究委員は「この2年は、民間雇用が消えても公共雇用を作り出すことで持ちこたえる時期だったとしたら、今は段階的日常回復を図っているだけに、雇用政策も転換すべきだ」とし「コロナ禍の中で最も打撃を受けた人々の雇用を安定化させるとともに、良質の雇用を創出するというやり方で構造的転換を行うことが必要な時期に来ている」と述べた。

イ・ジヘ、パク・テウ、シン・ダウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1016701.html韓国語原文入力:2021-10-26 16:31
訳D.K

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