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「『K防疫』は、社会的弱者の犠牲を一方的に搾り取る唯一無二の体系」(2)

登録:2021-10-21 11:41 修正:2021-10-26 16:39
インタビュー|ウ・ソッキュン人医協共同代表 
 
財政支出しないK防疫、「ゼロコロナ」グループの中でも唯一無二 
必須労働者などの犠牲によって得た偶然の成功が「政府の無能さ」を隠した 
「間欠的パンデミック時代」に対応するには抜本的な体制問題に注目すべき
人道主義実践医師協議会のウ・ソッキュン共同代表が15日夜、ハンギョレのインタビューに先立ち、カメラを見つめている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

(1の続き)

-二つの戦略の成果はそれぞれどうだったのか。

 「ウィズコロナは初期に莫大な犠牲者を生んだ。その後、西欧諸国は『ロックダウン・ライト』(軽い封鎖)政策を取ってから、ワクチン接種とともにまたウィズコロナに戻ったといえる。ウィズコロナは経済成長を犠牲にしないために人間を犠牲にするという批判が強かった。ところが、双方の成果を比較した『ランセット』の今年6月号によると、ウィズコロナの方が死亡者ははるかに多く、国内総生産(GDP)の伸び率はむしろ下がっている。経済成長面でもむだな犠牲だったわけだ」

経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち「ウィズコロナ」と「ゼロコロナ」政策を取った国家間比較グラフ=「ランセット」 2021年6月号

-「ゼロコロナ」の一方的な勝利とみていいのか?K防疫の成功も数値で確認されたのではないか。

 「相対的にましだったとは言えるだろう。初期に人命を守った成果は高く評価できる。しかし、相対的に良好な経済成長率はどのようにして得られたのかも、必ず問わなければならない。今年のドイツの総選挙で左派政党リンケ(Die Linke)の選挙綱領の最初の文は『現在の問いはたった一つ。コロナ危機の費用を誰が負担するのか? 大企業のオーナーなのか、富豪なのか、弱者である労働者なのか』だ。韓国に適用してみると、『K防疫の費用は誰が負担したのか?』とでも言えるのではないか。K防疫はゼロコロナのグループの中でも極めて例外的だ」

-どういう意味か。

 「韓国は同じグループの中でもコロナに対する財政支出が絶対的に少ない。国際通貨基金(IMF)が集計した今年5月までのコロナ対応財政支出統計を見ると、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、日本などゼロコロナを実施した国は平均してGDPの18.1%を支出した。韓国は4.5%だ。韓国の総GDPを2000兆ウォンと考えると、使うべき金を年間およそ270兆ウォンも使わなかったということだ。緊縮財政といっても過言ではない。他のゼロコロナ諸国は日常的に厳しい距離措置を取った分、補償も大きかった。韓国は同じグループの中でも社会福祉が最も脆弱で、損失補償などの財政支出も最も少なかった。また、OECD加盟国のうち、コロナ有給休暇や傷病手当が制度化されていない唯一の国でもある。有給ケア休暇もほとんどの国で実施しているのに、韓国は得意気に見せびらかすだけだ。労働者や庶民は苦しむほかない」

-では、韓国はなぜ高い評価を受けたのか。

 「国民が主体的に防疫政策に従ったことで、政府の惰性と安易さ、無能さが隠されてしまった結果だとみている。そもそも、短期的・局地的流行だった中東呼吸器症候群(MERS)の対応計画を世界的規模のパンデミック対応にそのまま適用したのが問題だ。大邱(テグ)・慶尚北道で初期にコロナが拡散した時を振り返ると、その地域の公共病院を総動員したのに病床が途方もなく足りず、人々が死んでいった。東山病院が移転して残った建物と施設を提供したが、外部からボランティアが来て働いた。熟練した医療人員ではないため、現場で多くの問題が発生した。さらには病院の建物の構造が分からず右往左往した。結局、東山病院からスタッフが戻ってこなければならなかった。それでも私立大学の3つの上級総合病院が病床を100床ずつ提供したので何とかなったが、結局ほとんどの患者が全国に移送されざるを得なかった」

昨年2月以後4カ月間、東山コロナ地域拠点病院に指定された大邱東山病院の当時の様子=大邱東山病院提供//ハンギョレ新聞社

-その後はどうだったのか。

 「大邱・慶尚北道が落ち着いた後、防疫当局は段階的な距離措置体系を組んだ。MERS問題以降に確保した陰圧病床数と感染者数を連動させ、感染者が一定水準まで増えるごとに距離措置の強度を大幅に高めた。強度の高い距離措置は、このようにどんぶり勘定式に行われた。また、韓国は世界で一番の診断検査過剰国家だ。選別検査に強いのは当然だ。デジタル監視技術の水準は中国に次ぐ。疫学調査官が現場に到着すれば、5分足らずで個人のクレジットカード使用情報や、電話の通話内訳が通知された。GPS(衛星利用測位システム)の位置追跡、監視カメラ(CCTV)の情報が動員されたりもした。厳しい検査-追跡-隔離は、こうして可能になったのだ。技術監視システムが恐ろしく強化されている。屋外集会の禁止も科学的根拠が全くないまま乱発されている。昨年、国連人権特別報告者は、感染予防を政治的反対者を弾圧するための政治的口実にしてはならないと発表した。韓国政府は気にしていない」

-偶然の結果ではあるかもしれないが、惰性や安易さ、無能さではないのではないか。

 「第1波の時、病床と人手の不足を痛いほど経験したにもかかわらず、対策はまったく立てなかった。そのため、次の流行が来るたびに病床が不足し、待機患者が死亡し、人手不足は慢性状態になって久しい。保健医療団体と労組、市民団体が、施設と人員に最も余裕のある上級総合病院で病床を100床ずつ確保するようあれほど要求しても放置していたが、第3波の際、病床不足で人命被害が大きくなったため、かろうじて重患患者室を1%ずつ動員した。MERS問題で苦境に立たされた私立大学病院は、金にもならずリスク負担ばかり大きいコロナ患者を受け入れようとはせず、政府はその時の経験だけを信じてあえて私立大学病院と対立を起こさないようにしていると見ざるを得ない」

-ではウィズコロナの前提条件とは何だと思うか。

 「ウィズコロナへと進むのは、多くの面で避けられない。しかし、感染者はいずれにせよ今よりは確実に増える。私たちの現在の医療の力では対応できない。保健所の防疫人員はすでに休職者が半分に達している。病院の看護スタッフもかなり前からバーンアウト(燃え尽き症候群)になっている。コロナ病室の看護師たちをインタビューしたことがあるが、話し始めるなりまず皆が涙を見せた。ソウルポラメ病院を調べたところ、少なくとも2倍の人員が追加で必要だった。医療人材を急いで教育して配置しなければならない。今からでも上級総合病院の病床を10%以上コロナ病床に動員すべきだ。人医協の会員の保健所長たちは異口同音にウィズコロナに反対している。疫学調査の人員不足が原因だ。疫学調査ができなければウィズコロナは不可能だ。時間はあまりない」

-今後ウィズコロナで耐えなければならない期間はどれくらいになると思うか。

 「短くても2~3年。もっと長くなる可能性もある。さらに大きな問題は、パンデミックが数年ごとに周期的に来る可能性があるということだ。すでに世界保健機関(WHO)が新型コロナ以前に『間欠的パンデミック』についての報告書を出していた。医療的対応よりも重要なのは、社会政策的対応だ。政府がコロナ初期に真っ先に述べた言葉が『具合が悪ければ家で休みましょう』だった。しかし休めるようにはしてくれなかった。K防疫は、社会的弱者と医療・配達サービスなどの必須労働者の一方的な犠牲を徹底的に搾り取る、世界に唯一無二の体系だといっても過言ではない。彼らに必要なのは拍手ではなく、実質的な支援だ。社会政策的対応の核心は、雇用保障(解雇禁止)、所得保障、住居保障(退去禁止)だ。そうしてこそ医療的対応も十分に効果を発揮できる。気候危機とパンデミックは資本主義的利潤の追求という一つの原因によって引き起こされた鏡の両面だ。ウィズコロナを超えてポストコロナ時代に生き残るための根本的な処方は、そこに歯止めをかけることだと思う」

-政治の役割は何よりも重要なようだ。

 「人類はワクチン分配で完璧に無能さを露呈した。国際人権機関『オックスファム』が今年4月にまとめた報告書に、このような内容が書かれている。モデルナ、ファイザーなどのコロナワクチンの開発に投資し、新たに億万長者となった9人が稼いだ金を合わせると、最貧国の人口の130%に2回ワクチンを接種することができる。もともと億万長者だった8人とその家族が同じ方法で稼いだ金では、インドの全人口に接種することができる。大韓民国の大統領選に挑んでいる人たちに訴えたい。韓国を『ワクチンハブ』にするということはほかでもなく、ワクチンの不平等を解消する真の人類愛を示すハブになるということだ。ワクチンの知的財産権を一時停止し、技術移転をすべきだという立場を明確にしてほしい。そして、北朝鮮にワクチンを無条件で無償で供給すると約束してほしい。南北平和を最も確実に保障できる方法だと思う」(了)

アン・ヨンチュン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1015834.html韓国語原文入力:2021-10-20 09:28
訳C.M

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