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「『K防疫』は、社会的弱者の犠牲を一方的に搾り取る唯一無二の体系」(1)

登録:2021-10-21 11:37 修正:2021-10-26 16:41
インタビュー|ウ・ソッキュン人医協共同代表 
 
「ウィズコロナ」急速に進めれば最悪の場合、累計死亡5万人 
今の医療・社会政策対応から抜け出せなければ「距離措置」に逆戻り 
医療・防疫人員の拡充、上級病院の動員、弱者支援の制度化が急務
人道主義実践医師協議会のウ・ソッキュン共同代表が15日夜、自身が院長を務めるソウル市内の病院でハンギョレのインタビューに応じている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 最近、韓国で新型コロナ感染の実効再生産数(1人の感染者が感染させる人数)が1以下にわずかに下がった。感染者数が久しぶりに減少に転じていることを示す指標だが、確実とは言えない。政府があえて「段階的日常回復」と呼び、「ウィズコロナ」へと向かうために踏み出した一歩はそれよりずっとはっきりしているように思える。私たちはもうすぐ元の日常を取り戻すことができるのだろうか。

 この問いには、元の日常とは何なのかを話さずには答えられない。例えばマスクをつけずに生活できるかどうかについての医学的判断だけでは、日常の回復を遂げたとは考えられない。つまり、その答えはテレビのニュースのパネラーとして朝晩登場する感染学の専門家から得られるものではない。グローバル・パンデミックにおいて医学は「分科学問」の一つだ。

 そのようなことを知るために、人道主義実践医師協議会(人医協)の共同代表であり、保健医療団体連合の共同代表でもあるウ・ソッキュン氏にインタビューした。ウ代表は保健政策を専攻し、家庭医学専門医であり、博士課程では経済学を学んだ。コロナに関してはテレビよりも討論会と文章を通じて活発に発言している。15日夕方、ウ代表が院長を務めるソウルのある町の医院を訪ねた。

 ウ代表は約束の時間を少し過ぎて、記者が待っている部屋にあわただしく入ってきた。彼は深い息を吐きながら言った。「遅れてすみません。この町はワクチン休暇が取れない若い労働者がほとんどで、金曜日の午後遅くに接種予約者が殺到するんです」。会うなり感染学の教科書には出てこないような話が飛び出した。時間が遅延したため、直ちに本論に入った。

-政府が来月初めからウィズコロナに入ると言っている。どうなるのか、風景を描写するように話してほしい。

 「ソン・フンミン選手が試合をする英国のサッカー場の観客席の風景とまでは行かなくても、マスクは外さず社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)をほとんど廃止し、『検査-追跡-隔離』を大きく緩和したら、英国と似たような状態になるだろう。英国は今年7月19日、ジョンソン首相が『フリーダムデー』(自由の日)措置を取ったところ、患者数と死亡者数が増え、現在は1日に新規感染者が3万人、死亡者が100人以上出ている」

-悲観的すぎる見通しではないのか。

 「デルタ変異株の突破感染(ブレイクスルー感染)率を20~40%とみているが、80%が接種を完了し、そのうち20%が突破感染すれば、64%だけが免疫を備え、36%が免疫を備えられなくなる。30%と見積もっても1500万人だ。その1500万人の間で感染し続けるということだ。60歳以上の未接種者は160万人ほどになるが、そこから重症・中等症患者が出続けるだろう。時間が経つほどワクチンの効果は大きく落ちる。それでも重症化の予防率は90%以上が維持されるといわれているが、それすらも下がっているという報告が出ている。年齢ごとの死亡率などの変数を反映して計算すると、防疫措置を完全に解除したら、最悪の場合、未接種の高齢者を中心に累計死者が5万人に達する可能性もある(現在2600人台)。強力な距離措置体制に再び戻るといっても決して驚くことではない」

3日、英ロンドンのトッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われたイングランド・プレミアリーグのホーム試合。ソン・フンミン選手の後ろに人で埋め尽くされた観客席が見える=ロンドン/EPA ・聯合ニュース

-早急にウィズコロナへと向かうべきだと言う専門家も多い。

 「彼らも前提をつけている。漸進的でなければならず、特に今冬は過渡期とすべきであり、『検査-追跡-隔離』はむしろ強化しなければならないということだ。一方、ウィズコロナを『経済的弱者のために生物学的弱者を犠牲にするもの』と言う専門家もいる。自営業者のために高齢層や基礎疾患保有者を危険に陥れているということだ。その言葉も間違ってはいないかもしれない」

-なぜそのように見解が違うのか。

 「実際、世界的なレベルから見れば、ウィズコロナ論争はワクチン接種後ではなく、初期からあった。OECD(経済協力開発機構)加盟国のほとんどの対応方式はウィズコロナだったといえる。ジョンソン首相は国民に『愛する人と別れる準備をしてほしい』とまで述べた。事実上、感染による集団免疫政策だった。その反対側に、強力に検査-追跡-隔離を実施した一群の国家がある。このうちOECD加盟国は、韓国を含めて5カ国だけだった。学界でも双方の見解が拮抗した。医学ジャーナル『ランセット』には、昨年10月と11月に二つの見解を代弁する論文が交互に掲載された。この論争は、ワクチン接種が始まりデルタ変異株が出現した後、新たに展開されている」(続)

アン・ヨンチュン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1015834.html韓国語原文入力:2021-10-20 09:28
訳C.M

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