息詰まる25日間だった。アシアナ航空が“限定意見”で株式取引を停止されてから公式売却発表が出るまでに1カ月もかからなかった。アシアナ航空は、当初から高い負債比率、特に資産流動化証券(ABS)など市場性借入に対する高い依存度のために“時限爆弾”とまで言われた。ただし業界は“運命の時間”を第1四半期の事業報告書が出てくる5月以後と見ていた。運用リース(2兆9千億ウォン=約2900億円)を負債に含める新しい会計基準により、昨年末に649.3%だった負債比率が1000%以上に暴騰することが予想されたためだ。そうなれば、信用等級が現在の“BBB-”から投機等級である“BB”に引き下げられ、資産流動化証券の早期償還トリガーが発動され、いざという時には“デフォルト”(債務不履行)に至る危機だった。しかし、サミル会計法人が先月22日、監査意見で“限定”を出したことにより“破局”は前倒しされた。
アシアナ航空は先月21日、監査人であるサミル会計法人との協議を終えずに財務諸表を理事会で通過させ、議事録をサミルに通知したと伝えられる。サミル会計法人が「限定意見を出すことがありうる」と警告したのに、アシアナが一方的に押し切ったという。アシアナがこうした“無理な手”を使ったのは、既存の流動性問題と関係なくはないというのが業界の評価だ。「不良の規模を隠さなければならないと見てまともに資料を提出しなかった」という指摘だ。
翌日に限定意見を受けたアシアナの慌てぶりがはっきりと表れた。アシアナのハン・チャンス代表理事らがサミルとの再協議に乗り出し、監査資料を再提出した。さらに先月27日に出された修正財務諸表(連結基準)で、負債比率は505%から649%に急増した。その間に韓国信用評価院などがアシアナを信用等級下方修正の検討対象として登録するなど、市場の信頼は急落した。
錦湖(クムホ)アシアナグループのパク・サムグ会長は28日「事態に責任を負う」と明らかにした。アシアナ航空と錦湖産業の代表理事・登記理事職を辞任すると発表したが、それでも不十分だった。辞任だけでは、昨年4月に債権団と結んだ1年間の財務構造改善約定(MOU)が充分に履行されなかった状況と、市場の信頼急落を揉み消すことはできなかった。ハン・チャンス代表理事が1日「資産売却、非収益路線整理、組織改編断行」を通じて経営を正常化するとの談話文を発表したが、やはり市場の反応は冷たかった。錦湖アシアナグループは10日、債権団に「オーナー一家が保有する錦湖高速の株式持分を担保に、流動性5千億ウォンの支援と3年の時間を貸して欲しい」として最後の賭けに出たが、これも拒絶された。
金融当局と債権団がパク前会長と錦湖に送った信号は変わらなかった。経営を正常化し、市場の信頼を回復する実質的方案を講じよということだった。チェ・ジョング金融委員長は11日、「パク・サムグ会長が退き、息子(アシアナIDTのパク・セチャン社長)が経営するというが、その二人は何が違うのか」と話した。債権団は同日、公式資料を出し「有償増資などの方案」がないとして拒絶した。債権団が有償増資を取り上げたので、それは売却を意味するものと解釈された。債権団と錦湖の協議結果に詳しいある関係者は「債権団が拒絶したので、12日からは議論の速度が速まった。週末までに売却協議が事実上完了した」として「パク会長が早くアシアナ航空を放棄したのは、売却だけが皆が生きる唯一の方案であることを知っているから」と話した。