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教会なのか商売なのか…堕落した韓国キリスト教を痛快に皮肉る映画『クオワディス』

登録:2014-12-10 10:50 修正:2014-12-11 08:11
『トゥルーマッショー』『MBの思い出』に続き
キム・ジェファン監督 大型教会の世襲や脱税を皮肉り
映画『クオワディス』の一場面。ダンユフィルム提供。 //ハンギョレ新聞社

マイケル・ムーア監督に扮した主人公
最初から最後まで風刺満載で爆笑

 2万対7万8000。

 2014年の韓国のコンビニ店と教会の数を比較した数値だ。「いつでもどこでも便利に利用できるほど多い」というコンビニより教会はなんと4倍近くも多い。深夜に高層アパートの屋上に上がって数え切れないほどたくさんの光る“赤い十字架”を見た経験がある人なら、この数字を聞いても驚きはしないだろう。

 放送局が紹介する話題の食堂の真実を赤裸々に暴いた『トゥルーマッショー』(2011)、李明博(イ・ミョンバク)政権5年の現実をまとめた『MBの思い出』(2012)などのドキュメンタリー映画で好評を得たキム・ジェファン監督(写真)が、今度は教会にメスを入れる映画『クオワディス』(10日封切り)で戻ってきた。根っからのクリスチャンであるというキム監督は今月4日、「韓国の教会はどこに向かおうとしているのか、その欲望の根源には何があるのか、誰も話そうとはしない。この映画は堕落した韓国教会の素顔をつぶさに暴いた映画」と紹介した。クオワディスというタイトルは「クオ・ワディス・ドミネ?」(主よ、どこへ行かれるのですか?)という聖書に記されたペトロの問いで、映画は「2014年、韓国の教会はいったいどこへ行くのか」と問いかける。

教会の大反発で劇場試写会取り消し
「断絶された教会の内と外をつなぐ架け橋に
観客1万人を超えれば収益金を寄付」

映画『クオワディス』の一場面。ダンユフィルム提供 //ハンギョレ新聞社

 映画の構成はかなり独特だ。韓国の大型教会に関するドキュメンタリーを製作しようとアメリカからやって来たマイケル・ムーア(イ・ジョンユン)という映画監督が、大型教会の牧師(演技する俳優)を追いまわし直球の質問を投げかけるフェイク・ドキュメンタリーに近い。キム監督の分身であるマイケル・ムーアは『ボウリング・フォー・コロンバイン』で有名な同名監督をパロディにした人物だ。ムーアはギリシャ語で“バカ”という意味だ。些細なことにまでこだわるキム・ジェファン式の批判だ。

 映画は昨年3000億ウォン(約300億円)をかけソウル一等地の瑞草(ソチョ)洞に高層の礼拝堂を建設した「愛の教会」新築問題、「汝矣島(ヨイド)純福音教会」のチョ・ヨンギ牧師の脱税・背任問題、「三一教会」のチョン・ビョンウク牧師の性犯罪問題に加え、多くの大型教会が抱えている世襲と数十~数百億ウォン台にのぼる“餞別金”問題などをつぶさに描いていく。

 「韓国の教会は既得権勢力と共に成長してきました。日帝時代には日本軍に戦闘機を上納し、軍事独裁政権時代には正当性もない軍部のために朝餐祈祷会を開き、2007年の大統領選挙の時は長老でもあるイ・ミョンバクのための選挙運動を行い…。既得権のそばには常に教会がいたじゃないですか」。映画は過去のニュース映像、教会改革を訴える教授や専門家たちのインタビュー、大型教会牧師の実際の説教映像などを挿入して説得力を高める。ところどころでMBC(文化放送)解雇記者であるチェ・スンホ、イ・ヨンマ、イ・サンホも出演する。MBCの時事教養担当ディレクターだったキム監督のための友情出演だ。

キム・ジェファン監督。//ハンギョレ新聞社

 10月に後援者のための巡回上映をしようとした際にマルチプレックスシネマの突然の試写会取り消しで困難に直面した『クオワディス』は、マスコミ試写会も突然場所と時間を変更しなければならなかった。マルチプレックスが教会の反発を憂慮し試写会に難色を示したためだ。

 今月正式に封切りしたものの芸術映画館を中心に封切り館13か所を確保できたにすぎない。「マルチプレックスの担当者が電話で泣きついてきました。教会信者が『劇場の不買運動を行う』と言ってきたためでしょう。夜になると私にも発信制限表示の電話がかなりかかってきました。ハハハ」。

 今月6日には愛の教会が「説教映像の無断使用とイメージき損」を理由に映画の一部分の削除を求める内容証明を送りつけてきた。キム監督はこうした現実がまさに『クオワディス』のような映画が必要である証だと語る。「今年最も流行った言葉が『じっとしていなさい』(訳注:セウォル号事故時の船内アナウンス)だといいます。大型教会も「批判せずにじっとしていなさい」と言っています。“世襲”を“請聘”(請い招聘する)だと主張し、審判は神のみができると言っておきながら罪を認めない姿にじっとしていてはだめでしょう」。

 キム監督は『クオワディス』を信者でない人がより多く見る映画になるように面白さと大衆性を持たせたという。映画は爆笑が絶えることのないほど笑わせてくれる。「大型教会は神の審判を口にするが、私は「ケ(犬)督教」(訳注:基督教=キリスト教を揶揄した呼び名)と皮肉られる教会と内と外が徹底して断絶した現在の状況が、まさに彼らに下された審判なのだと思います。この映画が教会の内と外をつなぐ架け橋の役割になることを願っています」。

 彼は映画がたいした興行を果たせなくても1万人は超せるようにしたいと言った。1万人の基準収益である3000万ウォンを、借金に苦しんだ彼らを援助したクリスチャンの集い「禧年に共に」に寄付することに約束をしたためだ。「聖書には50年ごとに到来する禧年制度があります。禧年には奴隷も解放させ、借金も減らせました。教会がすべき役割を少しでも代わりにできたらとの思いで寄付を決めました」。

 誰も関心を持たないテーマばかり選ぶと言われるキム監督は、次の映画『エックスマンプロジェクト』(仮題)を構想中だ。「韓国の古びた政治風土を変えるエックスマンを選挙を通じて政界に送りだすという奇抜な内容」だという。万一プロジェクトが成功したら世界の映画会社を揺さぶる映画になりそうだ。

ユ・ソンヒ記者 写真ダンユフィルム提供(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014.12.09 19:08

https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/668251.html 訳Y.B

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