二人の議員‘単一案発議’明らかにしたが
人権団体‘野党本分忘却’批判
"人権を政治的駆け引きの対象にした"
民主統合党のキム・ハンギル、チェ・ウォンシク議員が‘包括的差別禁止法’法案の発議を撤回する意向を明らかにした。 保守キリスト教系の反発に押され、法案発議を事実上あきらめたわけだ。 民主党が第一野党としての本分を忘却して人権を政治的駆け引きの対象にしてしまったという批判が出ている。
21日キム・ハンギル、チェ・ウォンシク議員室の説明を総合すれば、両議員は去る17日に差別禁止法案を共同発議した同僚議員に法案撤回同意書を送り同意を求めている。 キム議員は2月12日、同党所属議員51人と共に性別・年齢と政治的立場、性的指向、学歴などにともなう差別の被害を救済する内容を盛り込んだ‘差別禁止法’を発議し、続いて2月20日にはチェ議員も民主統合党・進歩正義党所属議員12人と共に類似の法案を発議した。
両議員は法案発議の後‘主体思想称賛法’、‘ゲイ議員’等の誹謗に苦しめられたとし撤回の理由を説明した。 両議員は共同発議議員に送った電子メールで「法案発議以後、キリスト教一部教壇を中心に法制定反対運動が激烈に展開された。 ‘主体思想称賛法’、‘同性愛合法化法’という誹謗と‘従北・ゲイ議員’というようなレッテル貼りまで横行している」として「それぞれ発議した法案を撤回し再議論を通じた単一案を推進しようと思う」と明らかにした。
実際、保守キリスト教系の攻撃は激しかった。 宗教界は特に‘性的指向、性別アイデンティティ’条項と‘政治的見解’条項を問題にした。 代表発議した二人の議員をはじめとして、法案が係留された法制司法委員会と共同発議した議員の事務室にも3月から抗議電話が多い日には数百通ずつ続いた。 「従北議員」、「同性愛に賛成するサタン」などの暴言と言うのもはばかられる悪口が浴びせられた。 「私たちの牧師様が電話しろと言った」 として米国や香港などからかかってきた国際電話も少なくなかったという。
チェ議員が発議した差別禁止法案の立法予告期間だった3月26日~4月9日には総攻勢がかけられた。 ダウムのアゴラなど主要ポータルや宗教団体などのホームページには‘携帯メール散布’等、差別禁止法制定反対のための行動要領を書いた文が載った。 該当掲示物には「差別禁止法が通過すれば同性愛を慎めと言ったり他宗教には救いがないと説教する牧師様は監獄に行くことになる」とか「従北勢力さえ批判できなくなる」などの内容が盛り込まれていた。
チェ議員は「(代表発議した)私は耐えられても共同発議した議員が地域の大型教会に召還され落選させられかねないと言われて持ちこたえられなかった。 差別禁止法が理念葛藤に流されていて、民主党が民生を守らなければならない今、このような構図に陥るべきではないと判断した」と話した。
人権団体らは虚脱感を隠せなかった。 差別禁止法の制定は、参与政府が2007年10月に立法予告した後、常にキリスト教系の反発にぶつかって挫折してきた。 40ヶ余りの人権・市民団体の集いである‘差別禁止法制定連帯’は論評して「社会的少数者に対する差別と嫌悪を助長・拡散する保守キリスト教勢力に怒りを禁じえない」と糾弾した。
民主統合党に対する批判も激しい。 同性愛者人権連帯はこの日声明を出して「第一野党である民主統合党さえ差別禁止法案を撤回するならば、平等と人権の価値を政治的駆け引きの対象にしたという非難を避けられないだろう」と批判した。 ‘民主社会のための弁護士会’のチョ・ヘイン弁護士は「立法過程で原則も意志も責任感も見せられなかった民主統合党が立法を推進できるか疑わしい。 キリスト教系の支持だけを意識し、少数者の声には耳を傾けないということ」と指摘した。
現在、国会法司委には昨年11月キム・ジェヨン統合進歩党議員など10人が共同発議したまた別の差別禁止法案も係留中だ。 キム議員は19日報道資料を出し「根拠なき歪曲と非難には妥協しない」と明らかにした。
オム・ジウォン、ソン・ホジン記者 umkija@hani.co.kr