韓国法務部が8日、「チェ上等兵捜査への外圧」疑惑事件の重要被疑者のイ・ジョンソプ前国防部長官に対する出国禁止措置を解除した。イ前長官は前日、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の調査を受けた。専門家らは、法務部が被疑者の異議申し立てを受け入れて出国禁止を解除したのは前例がないと指摘している。重要な捜査対象者が主要国の大使に任命されて出国することになり、外圧疑惑の捜査における支障は避けられなくなった。
法務部は8日午後、「同日、出国禁止審議委員会を経た結果、(イ前長官の)異議申し立てに理由があると判断し、出国禁止を解除した」と発表した。法務部は出国禁止解除の理由として、特別な調査もなく出国禁止が数回延長されてきた点▽最近出頭し調査を受けた点▽本人が捜査手続きに積極的に協力する用意があることを明らかにした点などを考慮したと説明した。パク・ソンジェ法務部長官は同日朝、政府果川(クァチョン)庁舎に出勤する際、記者団に「(イ前長官の出国目的が)逃走ではなく、公的業務である点を考慮する」と述べた。
捜査機関ではなく、捜査対象者の要請を受け入れたのは極めて異例
出国禁止解除の決定は、イ前長官による異議申し立てを受けて行われた。出国禁止の承認・解除・延長の権限は法務部長官にあるが、当事者が異議申し立てをした場合、必要に応じて法務部関係者で構成された出国禁止審議委員会が妥当性と必要性を審議した後、長官が最終決定を下す。
捜査機関の要請でなく捜査対象者の要請(異議申し立て)によって出国禁止が解除されたケースは非常に珍しい。韓国刑事政策研究院のイ・スンヒョン研究委員とキム・デグン研究委員が2017年に出した研究資料「現行出国禁止制度の問題点と改善方案」によると、2016年に出国禁止に対する異議申し立ては236件だったが、この内229件が棄却され、棄却率は97%に達した。特に被疑者による異議申し立てはほとんど受け入れられず、多くの被疑者たちが行政審判・行政訴訟を選んだ。
キム研究委員はこの日、ハンギョレとの電話インタビューで、「これまでの異議申し立て事例と比較してみると、被疑者の要請を受け入れて電撃的に出国禁止の解除決定が出た事例はない。公平性に反する」と述べた。出国禁止処分を不服とする行政審判業務に詳しいソ・グァンジョ行政士も「捜査途中には出国禁止に対する異議申し立てが受け入れられにくいため、多くの場合は行政審判を選ぶ」とし、「異議申し立てが受け入れられる例外的なケースは、滞納した税金の分納計画を提出したり、家族の結婚式や葬儀など人道的な理由がある時」だと説明した。
イ前長官は同日夕方、豪州シドニーに出国する予定だったが、日程を延期した。政府当局者は「イ前長官は8日午後、豪州シドニーに出国することを検討したが、これを延期することにした」とし、イ前長官がいつ出国するかについては分からないと述べた。