海兵隊捜査団が8月2日に「チェ上等兵殉職事件」を警察に移牒(いちょう)した直後、大統領室と海兵隊の間で電話連絡がなされていたことが確認された。この通話の後、国防部は事件を警察から回収しており、当時のパク・チョンフン海兵隊捜査団長(大佐)が抗命罪で立件されている。イム・ソングン海兵隊第1師団長ら指揮責任者の過失致死容疑を指摘し、警察に移牒した海兵隊捜査団の措置が黙殺され、逆に反撃される過程に大統領室が介入したという強力な情況が明らかになったのだ。捜査に対する大統領室の違法な介入の真相究明をこれ以上遅らせてはならない。
ハンギョレの取材の結果、8月2日に海兵隊捜査団が警察に事件を移牒してから約1時間後の午後12時51分、大統領室国家安保室に派遣されていたK大佐が海兵隊司令官秘書室長に電話をかけ、この時は電話に出なかった秘書室長が35分後に折り返し電話して通話が行われた。それから24分後、国防部のユ・ジェウン法務管理官が慶尚北道警察庁に電話し、事件を回収すると表明した。K大佐はそれより前の7月30日に、キム・ゲファン海兵隊司令官に捜査団の調査結果についてのメディアブリーフィングの資料を要請し、受け取っている。このような一連の状況は、海兵隊捜査団の捜査結果に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が激怒し、大統領室が介入して事件の移牒を覆したというパク・チョンフン捜査団長側の主張を裏付ける。
国防部が海兵隊捜査団に「師団長ら指揮責任者を捜査対象から除外せよ」と圧力を加えたということは、すでに物証まで出ている。国防部長官の秘書室長役を務める軍事補佐官が8月1日、海兵隊司令官に「確実な容疑者は捜査依頼に、指揮責任関連人員は懲戒にすることも検討してください」というメッセージを送っていたことが明らかになったのだ。当初は海兵隊の捜査結果を承認していたイ・ジョンソプ国防部長官(当時)がわずか一日で態度を変え、警察への移牒の保留を指示し、捜査からの指揮責任者の除外を迫った背景は、大統領室による介入抜きには説明できない。
にもかかわらず、軍検察はこれついての捜査に力を注いでいない。国家安保室に派遣されていたK大佐、国防秘書官らを書面で調査しただけで、8月2日の電話は問いもしていない。高位公職者犯罪捜査処にも告発されているが、明確な捜査の動きはまだない。チェ上等兵殉職事件の全貌を明らかにするための特検法は、10月に国会で迅速処理案件に指定されたが、来年4月までの熟慮期間を経なければならない。特検法の表決を繰り上げてでも、チェ上等兵殉職の真実と大統領室による捜査への介入疑惑を早急に明らかにすべきだ。