「千辛万苦の末、現金化命令の最終段階まで来ていますが、外交部は意見書を提出する前に少なくとも、許可ではないですが、せめて了解くらいは求めるべきなのではありませんか」
2日に社団法人日帝強制動員市民の会(以下「市民の会」)と民主社会のための弁護士会光州全南支部が公開した「7月28日外交部面談議事録(同面談をテープ起こししたもの)」によると、市民の会のチャン・ウンベク弁護士はイ・サンニョル外交部アジア太平洋局長に対し「意見書を(被害者に)一言の相談もせずに出したのは訴訟妨害だと考えており、(外交部が)公に謝罪すべき問題だ」と指摘した。光州広域市にある市民の会の事務所で行われた外交部との面談には、外交部の3人の関係者と市民の会の6人の関係者が参加した。
7月26日、外交部は勤労挺身隊被害者として最高裁で賠償確定判決を受けたヤン・クムドクさん(1929年生まれ)、キム・ソンジュさん(1929年生まれ)の債権に関連する商標権と特許権の特別現金化(売却)命令事件が係留されている最高裁の2つの上告審担当法廷に対し、最高裁民事訴訟規則第134条の2を根拠として意見書を提出している。28日の面談は、意見書提出に関して外交部が立場を説明する場だった。
外交部のイ・サンニョル局長はその日、市民の会の関係者たちに「現金化というのは日本企業の資産が実際に人手に渡る状況を意味する。渡ってしまえば、日本はその時点で報復すると私たちは考えている」と説明した。そして「そのような観点から最も合理的に解決しうる事案は何か。現金化される前に望ましい解決策を模索すべきということだ」と述べた。
問題は、外交部の意見書提出が強制動員被害者を排除して行われたことだ。パク・チン外交部長官は1日の国会外交統一委員会で、国民の力のテ・ヨンホ議員に「長官は懸案報告の際、意見書を提出したと報告したが、意見書提出について被害者、原告側に十分に説明したのか」と問われ、「被害者側には意見書を出してから外交部が訪ねていって説明した」と答えている。
パク長官の答弁のとおり、外交部は意見書を最高裁に提出する前にいかなる事前説明もしておらず、意見書の内容も語らず市民の会に一方的に事後通知して反発を受けている。市民の会は、2日午後2時から光州市(クァンジュシ)議会市民疎通室で行われた記者会見で「外交部の意見書提出は、政府による日帝強制動員事件の強制執行に対する妨害行為」と批判した。
市民の会のイ・グゴン常任代表は「現金化問題は韓国の最高裁判決を無視して足蹴にしている日本企業と日本政府のせいで起きたものだが、韓国政府はむしろ現金化の前に解決策を出すと言った後、最高裁に意見書まで提出した」とし「外交部は、8回の判決と決定を経て、ようやく強制執行を目前にしている被害者の手足を縛っている。この意見書はまったく提出されるべきではなかったものであり、事後通知で正当化できるものではない」と指摘した。
外交部による最高裁への意見書提出は今回が2度目で、「不適切な行為」だとの指摘が出ている。外交部は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2015年1月28日に最高裁が新設した政府意見書提出制度という新たな制度を「活用」し、2016年11月25日に最高裁に意見書を提出している。意見書には「強制徴用事件の最高裁判決がそのまま認容された場合、韓日関係は破局へと突き進むとともに、外国からの信頼にも傷がつくだろう」という趣旨の内容が書かれていた。2016年のろうそくデモ後、司法府が大統領府や外交部と強制動員被害者の起こした裁判の進行の延期などを秘密裏に議論していたことが明らかになり、「司法壟断」問題へと発展している。
2度目の意見書提出も、被害者に事前に伝えていないことなどが2016年のケースと似ている。市民の会は「外交部は、2016年には最高裁に係留中の裁判の判決を傷つけることを目的として意見書を提出し、今回は強制執行を妨害することを目的として意見書を提出した。外交部は再び歴史の時計を司法壟断の時期に戻した」と批判した。
外交部は現金化決定が下される前に解決策を講じるべきだとして、被害者団体、学界、メディアの関係者などが参加する官民協議会を設置したが、被害者を支援する団体である市民の会と訴訟代理人団は不参加を宣言している。市民の会は「1~2カ月以内に最高裁の特別現金化命令が確定するという見通しが出てきていた時期に、外交部の意見書が提出された」とし、「最高裁は迅速かつ適法に強制執行手続きを履行せよ」と述べた。
最高裁は2018年11月29日、三菱重工に対し、勤労挺身隊として強制動員され、一銭の賃金も受け取れなかったヤン・クムドクさん、キム・ソンジュさんらに対する1億~1億5000万ウォン(約999万~1500万円)の賠償金の支払いを命じる判決を下したが、三菱重工は履行していない。これに対しヤンさんらは、三菱重工が韓国国内に所有している商標権や特許権などを売却して現金化し、それを賠償金として受け取るための強制執行手続きを進めている。