文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1日、三一節(独立運動記念日)記念式典での演説で、歴史問題と他の懸案を切り離す「ツートラック」アプローチに基づき、韓日関係を改善する意志を改めて強調した。しかし、強制動員被害者問題と日本軍「慰安婦」賠償判決など、主な懸案について、日本が期待していた“具体的な解決策”は提示しなかった。米国のジョー・バイデン政権の発足後も、韓日関係に薫風が吹くまではかなりの時間がかかるものと見られる。
今年の三一節記念式典における文大統領の演説は、韓日関係の改善と韓米日三角協力の復元を強調してきたバイデン米大統領就任後初めて公開されるもので、国内外から大きな注目を集めた。しかし日本が執拗に要求してきた懸案解決のための韓国の“譲歩案”は示さなかった。その代わり「韓国政府は常に被害者中心主義の立場で賢明な解決策を模索する」という原則的な立場と「韓日両国の協力と未来の発展のための努力も怠らない」という協力意志を同時に示す「ツートラック」基調を改めて確認した。さらに、「韓日協力は両国だけではなく、北東アジアの安定と共同繁栄にも、また韓米日3カ国の協力にもプラスになるだろう」と述べ、協力の必要性を重ねて強調した。韓国には韓日関係を円満に解決しようとする意志があるが、日本の“強硬な態度”のため、それが実を結んでいないことをバイデン政権に間接的に伝える形を取ったのだ。
韓国政府は昨年9月に菅義偉首相が就任した後、「最も近い隣国である日本政府といつでも対話し、コミュニケーションを取る準備ができている」として対話を呼び掛けており、昨年11月にはパク・チウォン国家情報院長が直接日本を訪れ、「東京平和五輪」開催の成功に向け、積極的に協力する考えを明らかにした。
しかし韓国のこうした融和的な姿勢にもかかわらず、日本は「関係改善のきっかけは韓国みずから作るべきだ」として、強硬な姿勢を崩さなかった。今年1月8日、日本政府が慰安婦被害者に直接賠償しなければならないという裁判所の判決が出てからは、菅首相と茂木敏充外相が新任のカン・チャンイル駐日韓国大使と面会を拒否し、チョン・ウィヨン外交部長官と電話で会談にも応じない冷淡な態度を維持している。このような状況で、文在寅政権が歴史問題に取り組む大原則と言うべき「被害者中心主義」を破ってまで日本との関係改善に乗り出す必要はないという判断を下したものと見られる。
今後、両国が関係改善を試みるとしても、合意案をまとめるのは容易ではないのが現状だ。文大統領は同日も「易地思之(相手の立場に立って考えること)の姿勢で膝を突き合わせれば、過去の歴史問題もいくらでも賢明に解決できる」と韓日共同の努力を強調したが、日本は「(慰安婦への賠償判決は)国際法に明らかに反する。韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講じることを求める」(1月23日、外相談話)とし、韓国の一方的な譲歩を求めている。日本国内の状況に目を向けても、新型コロナと菅首相の長男の総務省官僚接待問題などの政治スキャンダルのため、韓国と交渉を進める状況ではない。
結局、韓日関係が解決するには、早ければ4~5月頃に新型コロナワクチンの効果が確認されて、各国が防疫に自信を持つようになり、バイデン政府が対北朝鮮政策を公開して不確実性を最小化するなど、東京五輪を「朝鮮半島平和プロセス」再稼働のための契機にする諸条件が整うことが必要であるとみられる。韓日関係を先に解決してこそ南北関係改善と朝米対話のきっかけができると判断した時、文大統領にとっても“譲歩の名分”が生まれるからだ。見方を変えれば、7月の東京五輪という機会を逃した場合、来年5月までの文大統領の任期内に韓日関係改善の新たな機会をつかむのは困難であることを意味する。