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訪ねた町医者は「夏休み」…無駄足踏まされた市民、「集団休診」に冷淡

登録:2020-08-15 03:53 修正:2020-08-15 09:09
医学部定員拡大に反発する医療界が集団休業 
 
町医者の10軒に3軒が休診 
2万人の医師が汝矣島集会に参加 
 
市民「ストは集団利己主義」 
「休んでどうするつもりなのか…ありえない」
大韓医師協会が医学部定員拡大などに反発して集団休診に入った14日午前、ソウル市内のある病院の診療室で白衣が椅子にかけてある=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「8月14日から17日まで休診します」

 14日午前、ソウル麻浦区(マポグ)の弘大入口(ホンデイプク)駅近くのA耳鼻咽喉科医院を訪ねたCさん(86)は、病院のドアの貼り紙を見て地団駄を踏んだ。耳が痛むため急きょ訪ねた医院が、大韓医師協会(医協)の集団休診に加わり、閉まっていたからだ。Cさんは、近所の4つの耳鼻科を訪ねたものの、すべて閉まっていたため、弘大入口駅まで15分ほど歩いてやって来た。Cさんは「昨日から耳がよく聞こえず、痛くてかゆみもあるため病院を訪ねた。私たちのような年寄りは医師たちがストをすることも、どの病院が開いているのか閉まっているのかも分からない。なぜそんなことをするのかは知らないが、年寄りにこんな苦労をさせるべきではない」と語った。

 ネット上のコミュニティにも不便を訴える書き込みが相次いだ。ネイバーのオンラインコミュニティ「ママズホリック」のある会員は、「子どもの鼻風邪がひどくて、通っていた病院に行かなければならないが、どうしろというのか分からない。ありえない」と書いた。江原道江陵市(カンヌンシ)の住民オンラインコミュニティには、「小学2年の子どものために2つの皮膚科に電話したが、いずれも休診だった。診療が受けられる病院があれば教えてほしい」との書き込みがあった。

 政府による医学部定員拡大、公共医科大学設立計画などに反対し、全国の「町医者」の30%以上が14日、集団休診を強行した。保健福祉部(福祉部)は同日午後12時現在で、地方自治体に休診を届け出た町の医院規模の医療機関は1万1025軒であり、全医院(3万3836軒)の32.6%に達すると発表した。ハンギョレがこの日訪れたソウル鍾路区(チョンノグ)、麻浦区、西大門区(ソデムング)、銅雀区(トンジャクク)の20あまりの休診医院のほとんどは、医院の前に「集団休診に参加する」ではなく「夏休み」と書いた案内文を貼っていた。17日の振替休日指定による連休を名分としての休診だった。

 このように医院規模の医療機関が休診したことから、大病院は患者でごったがえしていた。ソウル聖母病院は、朝9時から1階のロビーに外来患者があふれた。同病院の専攻医たちは、病院の外で「医師増員全面再論議」などのプラカードを手にデモを行っていた。ソウル大学病院の本館前でも、専攻医たちがリレー1人デモを行った。娘と同病院を訪れたPさん(67)は「医者のストは集団利己主義に見える。新型コロナのせいで医療スタッフがたくさん必要ではないのか。だから世論もあまり良く思っていないみたいだ」と述べた。

 医協はこの日午後、ソウル汝矣島(ヨイド)など全国5カ所で集会を開き、医学部定員拡大と公共医科大学設立計画の撤回を要求し、政府がこれを受け入れなければ「26~28日に第2次集団休診」を行うと明らかにした。医協はこの日の集会に、汝矣島(ヨイド)の2万人など全国合わせて2万8000人が参加したと推定した。大韓医科大学・医学専門大学院学生協会(医大協)は、医師国家試験の拒否を論議すると表明した。

14日午後、ソウルの汝矣島大路で医大生、専攻医、開業医などが、政府の医療政策の撤回を求めている=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

 集団休診の直接的な契機となった医学部定員拡大、地域医師制の導入、公共医科大学設立の必要性をめぐっては、政府と医協の間で攻防が続いている。この日午前に医協が開催した討論会において、大韓開業医協議会のチャ・フンジョン企画副会長は「現在の医師数は経済協力開発機構(OECD)平均(1000人当たり3.5人)よりはやや少ないが、増加率が高く、2028年にはOECD平均に達するだろう」と主張した。韓国は医師の引退年齢が相対的に遅く、人口減少は相対的に速いというのが根拠だ。

 これに対して政府は、韓国の医師数は人口1000人当たり2.4人、漢方医師を除くと2人で、OECD平均に大きく及ばず、各地域の医師数の格差は最大で14倍にも達すると指摘した。政府が前日に公開した2011年のある研究結果によると、患者1人当たりの1次医療機関での診療時間は、OECD平均が17.5分なのに対し、韓国は4.2分に止まっている。これも医師数が足りないという現実を裏付けている。保健福祉部のキム・ガンニプ次官は、こうした現実が「そっくりそのまま医療人員の十分でない地域住民の被害となっていることは明確な事実」と反論した。

 この日、地域社会における新型コロナの新規患者が約4カ月半ぶりに最多となる85人となり、危機感が高まっているにもかかわらず、医療界が「診療の空白」を作り出し、集会を強行したことも不適切だという指摘が出ている。チョン・セギュン首相は「国民は新型コロナ克服のために現場で死闘を繰り広げたこれまでの医師たちの献身と犠牲を記憶しているが、一部の医師の集団休診は、こうした社会的認識を自ら掘り崩し、コロナと水害で困難に直面する国民に苦痛を与えるだけだ」と批判した。

チェ・ハヤン、チェ・ユンテ、チョン・グァンジュン、ペ・ジヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/957886.html韓国語原文入力:2020-08-14 21:31
訳D.K

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