2022年からの10年間、医学部定員を4000人増員するという政府の方針に反発する大韓専攻医協議会のスト予告日(7日)が1日後に迫った。大韓医師協会(医協)も14日の全面ストを宣言している。保健福祉部は5日、医師不足問題はこれ以上先送りできない緊急の課題だとして、医師団体の要求には一線を引きつつも、医協が要求した「(仮称)保健医療発展協議体」の設置を受け入れると発表した。にもかかわらず医協は、協議体を設置するより医学部定員拡大計画を撤回する方が先だと要求している。これは行き過ぎだ。政府は、コロナ危機の中で医療界のストによって国民の健康権が脅かされることのないよう備えを徹底するとともに、実際に被害が発生したら厳重な措置を取るべきだろう。
国民の10人に6人が医学部の定員拡大に賛成している中で、医師たちが国民の健康を人質にしてストを強行したとしても、国民の共感は得られない。韓国の医師数は経済協力開発機構(OECD)の平均値に遠く及ばないだけでなく、慶尚北道や忠清南道などは人口1000人当たりの医師数が1.5人程度で、ソウルの半分に過ぎない。激しい地域格差を解決するためにも、医療人材の増員は避けられない。
保健医療団体と市民団体は、医学部定員拡大には賛成しつつも、政府案は「地域公共医療強化対策」としては中途半端だと指摘している。これにも留意する必要がある。代表的なのが地域医師の服務義務期間(10年)だ。地域間の医療格差を縮小するために奨学金を支給してまで地域の医大生を育成しても、修練医、専攻医などの課程の終了後にわずか4~5年だけ勤務すればよいことにするのは問題の余地が大きい。また、政府案は既存の地域の医学部の定員を増やす方法を取っているが、これが公共医療の強化にどれほど貢献するかも疑問だ。専門家は、エリアごとに公共医科大学を新設し、地域の実情に即した公共医学教育を行うグランドデザインを描くべきだと提言している。不足する地域の医療インフラを強化できない医療人材の養成は、すでに過熱している病院間の競争をあおるだけだ。政府は市民団体の憂慮に耳を傾け、現行案を再検討すべきだ。
昨年、保健福祉部が実施した「保健医療人材実態調査」によると、医師の月平均収入は1342万ウォン(約119万円)で、一般労働者の5倍を超える。医療人材の拡大を頭ごなしに拒否する医師たちの主張は、国民の目には医療の公共性を放棄した「既得権擁護」にしか見えない。医師団体は、大義なきストの撤回を宣言し、公共医療の強化のために政府と膝を突き合わせて話し合ってほしい。