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ビタミンDの不足で新型コロナによる死亡率あがる

登録:2020-05-09 02:33 修正:2020-05-09 07:40
相関関係を究明する研究論文が相次ぐ 
ビタミンDが過剰免疫反応を抑制
ビタミンDと新型コロナによる致死率との間には強い相関関係があるという複数の研究結果が出た=Pixabay//ハンギョレ新聞社

 ビタミンDは、骨を丈夫にするカルシウムの代謝を円滑にするとともに、免疫力を高める栄養素として知られている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生後、ビタミンDが含まれる栄養剤を買い求める人が増えたのもこのためだ。ビタミンDが不足すれば、COVID-19への感染による死亡の危険性も高まるのだろうか。両者の間には強い相関関係があると主張する研究結果が相次いでいる。

 米ノースウェスタン大学の研究チームは最近、韓国をはじめ中国、フランス、ドイツ、イタリア、イラン、スペイン、スイス、英国、米国の10カ国のCOVID-19患者のデータを分析した結果、イタリアなどの致死率の高い国の患者は、そうでない国に比べてビタミンDの数値が低いことが分かったと発表した。

 同研究チームはまず、医療システムの質、年齢別人口構成、検査率などが原因である可能性を検討した。しかし「こうした要因のうち、どれも明らかな影響を与えそうにはない」と判断した。同研究チームによると、まず「イタリア北部の医療システムは世界最高水準」だ。また、同じ年齢層でも致死率は国ごとに異なる。検査の方式や規定は国ごとに様々だが、検査率を同様と仮定しても、国ごとの致死率は依然として大きな違いが出る。

南欧の人々のビタミンDの数値が低いのは、強い日差しを避けて日陰を好むことの影響もある=Pixabay//ハンギョレ新聞社

COVID-19による致死率を半分にする可能性

 研究チームは最後に、免疫力に影響を及ぼすとされるビタミンDとの相関関係を調べた。その結果、ビタミンDの体内濃度とサイトカインストームとの間に強い相関関係があることを発見した。サイトカインストームとは、免疫システムが過剰に反応して引き起こされる過度な炎症のことだ。

 サイトカインストームは患者の肺を深刻に傷つけ、急性呼吸困難を引き起こし、死に至らしめる恐れがある。研究チームは「COVID-19患者の死亡のほとんどはウイルス自体による肺の損傷ではなく、まさにこの免疫系の誤った指示によって引き起こされる合併症が原因」と説明した。

 研究チームは、ビタミンDが白血球細胞の免疫過剰反応を抑制する役割を果たすと推定した。これは、適正な濃度のビタミンDが、死亡を含む合併症から患者を保護する役割を果たすということを意味する。研究を率いたバディム・バックマン(Vadim Backman)教授は「分析の結果、ビタミンDは感染者の致死率を半分まで下げ得ることが分かった」と述べた。ただし「だからといって、皆がビタミンDのサプリメントを摂取すべきという意味ではない」と述べた。今回の研究は、4月8日付けの医学分野の事前出版論文集「メドアーカイブ(medRxiv)」に掲載された。

ビタミンDの数値とCOVID-19による致死率(100万人当たり)。Aging Clinical and Experimental Research (2020)//ハンギョレ新聞社

過度の服用はダメ…適正数値は今後の研究課題

 英アングリア・ラスキン大学とクイーン・エリザベス病院の研究陣が欧州20カ国のCOVID-19患者の致死率を分析した結果も、ほぼ同様だった。

 同研究陣によると、イタリアとスペインの人々は北欧諸国の人々よりビタミンDの数値が低い。これは南欧の人々の皮膚の色素がビタミンDの合成を阻害する上、彼らに強い日差しを避けて日陰を好む傾向があるためだと研究陣は分析した。

 一方、タラ肝油やビタミンDのサプリメントを摂取し、日光浴を楽しむ北欧の人々のビタミンDの数値は非常に高い。スカンジナビア半島は、欧州で人口当たりの感染者と致死率が最も低い地域だ。高齢者の場合も、血清のビタミンDの平均数値はスペインが26nmol/L、イタリアが28nmol/L、北欧が45nmol/Lだった。この論文は5月6日付けのジャーナル『老化臨床実験研究(Aging Clinical and Experimental Research)』に掲載された。

 ノースウェスタン大学のバックマン教授は、ビタミンDとCOVID-19による死亡率の相関関係は、まだ後天的な免疫システムが完全に発達していない子どもの感染者の死亡率が低い理由も説明してくれると付け加えた。先天的な免疫システムのみを持つ子どもには、サイトカインストームが起きる可能性は低い。しかしバックマン教授は「ビタミンDを過度に服用してはならず、どの程度の数値がCOVID-19合併症の予防に最も効果的かは今後の研究課題」と述べた。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/944180.html韓国語原文入力:2020-05-08 16:23
訳D.K

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