セーフティネットの強化が最優先
災害的危機状況でもっとも打撃を受けた
脆弱層が誰なのかが明らかになり
全国民雇用保険を導入するものの
雇用形態に関わらず働くすべての人の所得保障を
保健・介護の公共性を拡大
高齢者療養など、事実上市場に外注化
社会サービス院の設立を実現すべき
「韓国型ニューディール」を「グリーン・ニューディール」に
型にはまったSOC事業の代わりに
エネルギー低減のためのスマートグリッドや
ソフトウェア・都市環境の転換に投資
ポストコロナ時代の雇用創出を
政権4年目の突入を控えた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政治的立地は固い。「初めてレームダックのない大統領になりうる」という見通しが出るほどだ。しかし、その前に置かれた道は「誰も通ったことのない道」だ。文大統領自ら「大恐慌以来最悪」と名付けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機を乗り越えなければならない。世界的な景気低迷を突破して成長を防御し、崖っぷちに立たされた経済弱者をまとめて支えるセーフティネットも拡張しなければならない。危機は前例がないが、政治的条件は歴代のどの政権の4年目よりも良い。残る2年間の任期で文在寅政府が集中すべき主要課題を、専門家インタビューを通じてまとめた。文大統領は10日午前11時、大統領府でCOVID-19後の国政課題を国民に説明する特別演説を行う予定だ。
新型コロナウイルスは、これまで私たちが築いてきたセーフティネットがどれほどずさんだったかを如実に示した。ウイルスは差別なく人間を攻撃したが、それによる失業と所得断絶の災難的苦痛は不平等に分配された。「ポストコロナ時代」を迎える4年目の文在寅政権が考えるべきことは、きめの粗いセーフティネットの外にいる人びとの苦痛をどのように抱きかかえるかから出発しなければならないという助言が出ている理由だ。
専門家らは、「COVID-19事態」が残した苦痛の様相に注目すべきだと口をそろえて強調した。ソウル科学技術大学のチョン・イファン教授(社会学)は「COVID-19事態で、誰が災難的危機の状況で最も大きな困難を強いられたのか。COVID-19以前まで声を出すことができなかった真の社会的弱者のための制度設計に乗り出す時だ」と述べた。文在寅政府の初期、強くドライブをかけた「非正規職の正規職化」「最低賃金の引き上げ」「労働時間短縮」などの政策イシューが頑強な反対に押され速度を出せない今、政策の死角地帯にいた人びとを包括できるセーフティネットの強化に政策の力量を集中させなければならないという意味だ。
与党も雇用保険加入対象を就業者全員に拡大する案を水面下で議論している。3月基準で2800万人近い経済活動人口のうち、雇用保険に加入していない1300万人(自営業者、特殊形態労働従事者、プラットフォーム労働者など)を保険対象者の中に入れるということだ。ただし、専門家らは技術の発展などで伝統的な雇用関係が変動する今、フリーランス・特殊形態労働従事者など一部の職域を雇用保険の特例加入対象に含める消極的な対応では不十分だと指摘する。さらにCOVID-19が触発した「アンタクト経済」(非対面経済)の発展は、プラットフォーム労働に代表される非定型労働をさらに拡散させる可能性が高い。
専門家らは、雇用ではなく所得に基づいた雇用保険を代案として提示する。韓信大学のチョン・ビョンユ教授(経済学)は「雇用保険拡大議論は20年近く進められてきたが、ゴルフ場のキャディーなどいくつかの業種に加入を許可する程度までしか進展しなかった。雇用形態と関係なく全ての働く人びとの所得を保障するようになれば、大変な成果として残る」と話した。中央大学のイ・スンユン教授(社会福祉学)は「高齢者階層に対しては国民年金、基礎年金、基礎生活保障制など多層構造で所得保障の死角地帯を最小化している。雇用保険の拡大とともに第20代国会で議論された韓国型失業扶助まで導入し、働く年代の所得保障にも多層な構造を設ける必要がある」と提言した。
保健と介護の領域で公共性を強化することも課題だ。韓国のCOVID-19防疫が目覚ましい成功を収めたのは、公共性の強い健康保険財政を土台にした医療システムの役割が大きかった。ただし、公共医療の空白地だった慶尚北道などの外郭地域や高齢者療養施設など、防疫の脆弱地帯が露呈した。イ・スンユン教授は「急激な高齢化が進むにつれ、高齢者療養など保健領域の相当部分が事実上は市場に外注化されている状況だ。COVID-19で脆弱性が表れた以上、国民の安全と生命を守るために保健と介護の領域でも公共性を強化する策を考えなければならない」と話した。これに先立って文在寅政府は、社会サービス院の設立などを通じた「介護の公共化」を公約に掲げたが、第20代国会で関連法案が可決されず、進展を示せずにいる。
世界経済秩序の再編に足並みを揃えて、生産性を高め、雇用創出にも力を入れなければならない。韓国はこの10年間、中国を中心にした製造業の分業体系を完成することで量的成長を強化した。COVID-19でこのようなグローバル・バリューチェーンが弱まる基調にうまく適応しなければならないということだ。漢陽大学のハ・ジュンギョン教授(経済学)は「経済秩序の転換期にあるため、政府が産業保護の必要性と構造調整を通じた生産性強化を細かく調整しなければならない。セーフティネットの強化を通じて革新成長のための経済主体のチャレンジを導くことができるよう、好循環構造を設けるべき」と話した。
「グリーン・ニューディール」を通じた新しい社会的合意を解決策として提示する声も強かった。「私が作る福祉国家」のオ・ゴンホ共同運営委員長は「文在寅政府が提示した韓国型ニューディール事業に、型にはまったSOC(社会間接資本)の代わりに『グリーン・ニューディール』を積極的に取り入れていくべき。化石エネルギーの低減や都市環境の転換など、巨大な構造の変化で新しい社会・経済的秩序を作らなければならない」と話した。韓国労働研究院のペ・ギュシク院長も「グリーン・ニューディールは遠く離れた話のようだが、すでに日本などの国もエネルギー低減のためのスマートグリッド分野に大規模な財政を投資し、新しい雇用を創出している」とし、「保健・医療、介護の公共性強化とともに、ソフトウェア投資、エネルギー転換など『グリーン・ニューディール』こそポストコロナ時代に合った新しい雇用を創出できる分野」だと指摘した。