北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、2~4日に北朝鮮を訪問した中国の王毅外交担当国務委員兼外交部長と会わなかった。北側の最高指導者が訪朝した中国外交部長に会わない前例はなくはないが、非常に珍しいことだ。金委員長は、王毅部長が昨年5月2~4日に訪朝した時は直接会った。
王毅部長は4日、中国の習近平国家主席が金委員長に「あたたかい挨拶と素晴らしい宿願」を伝えて欲しいとリ・スヨン労働党副委員長に託したと労働新聞が5日に伝えた。金委員長が王毅部長に会わなかったことを間接語法で確認したということだ。イ・ヒオク成均館大学教授は「習主席の親書を王毅部長に伝えたという意味」だとし、「金委員長の訪中の招請内容が書かれている可能性もある」と話した。
王毅部長の訪朝日程に最初から金委員長との面会の計画がなかったかは確認されていない。ただ、中国の耿爽外交部報道官は4日、「金正恩-王毅面談」と関連した質問に「知らせがあれば適宜発表する」と答え、面会の可能性を排除しなかった。しかも、1999年10月の唐家セン外交部長(当時)の訪朝の際に金正日(キム・ジョンイル)国防委員長に会えなかった例を除いては、この20年間でこのような形の面会不発はなかった。
金委員長が予想を破って王毅部長と会わなかったのは、長期の膠着の兆候を見せている朝鮮半島情勢、特に朝米実務交渉を含む対米戦略に対する考慮が作用したのではないかという分析が多い。3回目の朝米首脳会談の尺度となる実務交渉の議題と時期などをめぐり、金委員長がトランプ大統領と「大詰めの駆け引き」「熾烈な死活戦」をしている最中に、何かを外部に出すには時期と形式が適切でないと判断したということだ。局面の膠着を解く糸口を差し出せば金委員長が神経戦で負ける形になりえ、米国に対する強硬発言を繰り出せばトランプ大統領との信頼関係を損ねる恐れがあるからだ。
朝中関係に詳しい元高位関係者は「『核交渉』に死活をかけている金委員長としては、習主席が北朝鮮カードを活用してトランプ大統領と葛藤を緩和するように助ける余裕がなく、それだけ柔軟性の幅が狭い」と指摘した。
しかし、これを朝中関係の“異常兆候”と見る理由はないというのが、政府や専門家ら大方の見方だ。昨年3月以降の金委員長の4回の訪中と、6月の習主席の訪朝を経て、朝中関係は「新たな全盛期」と呼ばれるほど相互交流が活発なためだ。北朝鮮の軍序列1位であるキム・スギル人民軍総政治局長が8月16~20日に訪中し、苗華・中国共産党中央軍事委政治工作部主任と「高官級軍事会談」を行ない、カン・ユンソク中央裁判所長が7月15~20日に訪中し、「朝中司法協力了解覚書」を結んだ。リ・スヨン副委員長は4日、「朝中親善協力関係を新たな高い段階に昇華発展」させようと述べ、王毅部長は「中国は朝鮮の同志、友としていつも共にする」と答えた。外交安保分野の元老は「金委員長が王毅部長に会わなかった事実に大きな意味をおく必要はない」と話した。
また別の関心事は、金委員長が「新中国」創建70周年(10月1日)、朝中国交樹立70年(10月6日)頃に中国を訪問するかどうかだ。朝中関係に詳しい元高位関係者は「金委員長が訪中する可能性がある」とし、「行くとすれば習主席に会い、核問題と関連した論議をすることになるだろう」と見通した。