ドナルド・トランプ米大統領が、財務省が課した対北朝鮮制裁を1日で取り消した。
トランプ大統領は22日(現地時間)午後、ツイッターに書き込みを掲載し「北朝鮮に加えられた既存の制裁に加えて、大規模な制裁が追加されると今日財務省が発表した」とし、「私は今日そのような追加の制裁の撤回を指示した」と明らかにした。
トランプ大統領は財務省の制裁発表時点を「今日」と表現したが、これは「昨日」と混同したものとみられるとニューヨーク・タイムズは報じた。財務省は前日の21日午後、北朝鮮の制裁回避を助けた疑いで中国の海運会社2社を制裁対象に指定すると発表した。財務省はまた、北朝鮮との違法な瀬取りを行った疑いを受けている北朝鮮および第3国の船舶95隻のリストが含まれた不法海上取引に関する注意報を更新して発令した。これは米政府の強力な対北朝鮮圧迫の信号と受け止められた。
トランプ大統領の制裁撤回指示ツイッターは、財務省の制裁発表から約24時間後に行われた。韓国時間でいうと、財務省の対北朝鮮制裁の発表は金曜日の22日午前2時40分頃に行われ、トランプ大統領が撤回ツイッターを掲載したのは土曜日の23日午前2時20分ごろだ。その間に北朝鮮は開城(ケソン)に設置された南北共同連絡事務所から人員を全員撤収させ、韓国政府に通知した。
ホワイトハウスのサラ・サンダーズ報道官は、トランプ大統領のこの日のツイートに関する詳しい説明を求める記者団に対し「トランプ大統領は金(正恩)委員長を好ましく思っており、このような制裁が必要だと思っていない」と述べた。
トランプ大統領は、15日(米国時間14日夜)に北朝鮮のチェ・ソンヒ外務次官が記者会見で「米国との交渉の中断を検討」と言及した後、直接的な発言を控えた。この日のトランプ大統領の制裁撤回ツイートは、チェ次官の発言から8日目に出た北朝鮮関連の発言だ。
トランプ大統領が前日、財務省の対北朝鮮制裁発表の事実を後になって知ったのか、それともあらかじめ知っていながらも意図的に「北朝鮮なだめ」を強調するために撤回命令を下す姿を演出したのかは定かではない。しかし、いずれにしてもトランプ大統領の意中は北朝鮮との緊張の高まりを避け、非核化交渉の扉を開けておく側にあるようだ。サンダーズ報道官が「トランプ大統領は金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長を好ましく思っている」と説明したことまで考慮すれば、トランプ大統領は金委員長と最高指導者間の「トップダウン」対話の枠組みを維持する考えを示唆したものと受け止められる。トランプ大統領がひとまず「追加の対北朝鮮制裁は不要」という立場を表明したので、当分の間はよほど特別なきっかけがない限り、米政府が北朝鮮に対する追加の制裁に乗り出す可能性も低いと思われる。このため、この日のトランプ大統領の制裁撤回指示が、北朝鮮の今後の対応にどのような影響を及ぼすのかが注目される。
アダム・マウント米国科学者連盟先任研究員は、「これが送るメッセージは明らかだ。ハノイで制裁緩和を考慮することを拒否した後、トランプは対話を維持するために(制裁)施行を自発的に緩和させている」とCNNに語った。
ただ、トランプ大統領のこの日のツイートで、米行政府は大きな混乱に陥った。政府省庁が相当な意味を与えて施行した重大措置を大統領が直後に覆すという事態が起ったからだ。前日、スティーブン・ムニューシン財務長官は対北朝鮮追加制裁を発表し「米国と協力国は北朝鮮の『最終的かつ完全に検証された非核化』(FFVD)を達成するために専念している」と述べ、「財務省は制裁を継続する」と明らかにした。ジョン・ボルトン国家安保補佐官も財務省の対北朝鮮制裁発表直後、ツイッターに「財務省が今日重要な行動をした」と積極的に呼応した。米メディアは、ホワイトハウスと政府高官がトランプ大統領のツイートに困惑していると伝えた。
財務省報道官は、トランプ大統領の対北朝鮮制裁撤回ツイートに対するメディアの論評の要請に即答しなかった。