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[ニュース分析]北朝鮮、開城南北連絡事務所から全員撤収…対南圧迫強める

登録:2019-03-23 00:11 修正:2019-03-23 07:29

連絡代表を通じて「上層部の指示」を通知 
ハノイ会談の決裂が南北関係にも影落とす 
米国の強力な制裁に遠回しに反発 
「北朝鮮、南北経済協力の履行を求めている」との分析も 
 
政府、NSC常任委員会招集…「正常に運営されることを望む」  
南側は残留…北側も軍通信線は稼動 
実務者級の窓口を通じて撤収を口頭で通知 
南側の共同事務所運営を“黙認”し 
軍の通信線・板門店連絡官も維持  
関係を全面断絶する可能性はあまりなく 
政府「合意の破棄ではない」  

北側の追加の行動が分水嶺になる可能性も

2018年9月14日、開城工業団地内に開所した南北共同連絡事務所の全景=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が22日、開城(ケソン)の南北共同連絡事務所(共同事務所)の北側人員を撤収させた。ハノイで開かれた第2回朝米首脳会談が物別れに終わって以来、朝鮮半島情勢の緊張の否定的な影響が南北関係にまで広がっている。

 政府は、チョン・ウィヨン国家安保室長主宰で国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、対策を話し合った。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、大邱(テグ)で開かれたロボット産業育成戦略報告会に出席した後、大統領府に戻り、安全保障会議の結果などの報告を受けて、参謀らと対策会議を開いたという。

 共同事務所から撤収した北朝鮮の措置はひとまず、米国と国連の厳しい強力制裁にもかかわらず、南北経済協力など合意の履行に拍車をかけることを求める強い対南圧迫と見られる。今回の措置が朝米対話基調に関連した戦略的路線の旋回の前兆なのかはまだ定かではない。北側の意図が何であれ、昨年9月14日に開所した南北関係史上初の「24時間・365日の疎通窓口」が189日目で危機に陥ったのは確かな事実だ。

 チョン・ヘソン統一部次官は同日午後4時30分、ソウル世宗路(セジョンノ)の政府ソウル庁舎で緊急記者会見を開き、「北側が今日(22日)午前、南北共同連絡事務所の南北連絡代表間接触を通じて、『北側連絡事務所は上層部の指示に従い撤収する』という立場を南側に通知し、共同連絡事務所から撤収した」と発表した。チョン次官は「北側は『南側の残留は我々とは関係ない』とし、『実務的問題は今後通知』すると言及した」と伝えた。さらに「政府は北側の今回の撤収決定を遺憾に思っており、北側が早期復帰し、南北合意どおり共同事務所が正常に運営されることを望んでいる」と強調した。

 政府は、共同事務所に勤務している南側の人員69人(施設の維持など支援担当を含めて)のうち、普段より多い25人を週末勤務要員として共同事務所に残留させた。チョン次官は「月曜日(25日)、出・入境は通常通り進める計画」だと明らかにした。

 開城共同事務所の運営は、昨年の「4・27板門店宣言」の主な合意事項である。したがって、北側の「共同事務所からの撤収通知」は「4・27板門店宣言の履行の暫定留保」(ク・ガブ北韓大学院大学教授)と受け止められる可能性がある。しかし、チョン次官は「(北側の)意図を予断するつもりはない」とし、「(南北)合意の破棄とまでは考えていない」と述べた。

 大統領府は発言を控えた。キム・ウィギョム大統領府報道官が「安全保障会議で北側の撤収状況について協議し、対策を論議した」と述べるにとどまった。困惑している様子がうかがえる。

チョン・ヘソン統一部次官が今月22日午後、政府ソウル庁舎で、開城南北共同連絡事務所の北側人員の撤収と関連し、政府方針を発表する途中、しばらく考え込んでいる/聯合ニュース

 ひとまず、北側の撤収通知は、少なくとも今は南北疎通の窓口の全面断絶を意味するものではない。北側は撤収しながらも「南側事務所の残留は我々とは関係ない」とし、南側だけの共同事務所運営は“黙認”する意向を示した。南北の軍通信線と板門店(パンムンジョム)連絡官チャンネルもそのまま開いている。チョン次官は「(開城)連絡事務所のほかに、別の軍チャンネルなどは現在正常に稼動している」と明らかにした。開城工業団地で10年間、法務チーム長を務めたキム・グァンギル弁護士(法務法人地平)は「北側がすべてを投げ出すつもりなら、『お前が出ていけ』と言ったはずだ。『我々は出ていくから、君たちは好きにしろ』とは言わない」とし、「南側に『やるべきことをやってほしい』という圧迫と見られる」と指摘した。

 “撤収通知”の格と形式が前例になく低いことも注目に値する。北側は実務者級の南北連絡代表の窓口を通じて「口頭通知」した。リ・ソングォン祖国平和統一委員会(祖平統)委員長やチョン・ジョンス共同事務所北側所長による文書通知はなかった。これは開城工団の長期中断または全面閉鎖の際の北朝鮮側の態度とは全く異なる。北側は2013年に開城工団を166日間にわたり暫定中断した際、キム・ヤンゴン当時統一戦線部長が直接談話を発表しており、2016年2月11日の開城工団の全面閉鎖措置の際は、祖平統が声明を公表した。

 多数の専門家は北側の「撤収通知」をひとまず韓国に対する圧迫のためと分析した。元高官は「南側が制裁を理由に経済協力などに二の足を踏んでいるため、開城共同事務所で『やることもないのに、なぜ我々がここにいなければならないのか』という圧迫」だとしたうえで、「南側が言葉を並べるだけで、それを実行していないという極度の不信と不満の表れ」だと指摘した。

 朝米の間で南が果たしてきた“仲裁・促進”の役割に対する懐疑の表出と見る専門家も少なくない。チョン・セヒョン元統一部長官は「文大統領による朝米関係の接点作りに対する期待を諦めたという意味」だと指摘した。この問題と関連しては、ソ・フン国家情報院長と金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長間の非公開チャンネルが作動するかどうかが、判断基準になる見込みだ

 北側が「開城共同事務所からの撤収」に止まるか、それとも追加行動に出るかも南北関係の進路と関連して注目すべき部分だ。 元高官は「北側が軍通信線の断絶など、南北が既に合意・実践していることを元に戻すかどうかが重要だ」と指摘した。一応22日には北側の追加行動はなかった。政府当局者は「週末まで見守らなければならないと思う」とし、慎重な態度を示した。

 多数の専門家は、北側が朝米対話基調と関連し、戦略的路線の旋回を意味する“追加行動”に出る可能性は、現在のところ高くないと見通した。元高官は「米国まで行くようなことではない」と話した。ク・ガブ教授も「北朝鮮は、米国はもちろん、韓国側に対してもまだ自分の路線を確定していないようだ」と指摘した。 しかし、チョ・ソンニョル元国家安保戦略研究院首席研究委員は「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が近く米国と非核化交渉を中断すると宣言する可能性がある」として、他の専門家とは異なる見通しを示した。

イ・ジェフン、キム・ボヒョプ、ノ・ジウォン、パク・ミンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/887058.html韓国語原文入力:2019-03-22 22:11
訳H.J

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