5・18民主化運動に対する流血鎮圧の最終責任者である全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領が、“被告人”として光州(クァンジュ)の法廷に立った。国民の注目が集まった法廷で、全氏は戒厳軍ヘリコプターによる機銃掃射と名誉毀損の疑いを全面否定した。
光州地裁刑事8単独(チャン・ドンヒョク部長判事)は11日午後2時30分、光州池山洞(チサンドン)の刑事法廷201号で、故チョ・ビオ神父の名誉を毀損した疑いで起訴された全氏の初公判を開いた。同日の公判には、光州地検の検事4人や被告の全氏、法律代理人のチョン・ジュギョ弁護士、信頼関係人のイ・スンジャ氏らが出席した。傍聴席では、全氏を告訴した故チョ神父の甥、チョ・ヨンデ神父をはじめ、取材陣や警護員、全氏の側近や5月団体の会員らが裁判を見守った。
公判は、判事の人定訊問と検事の公訴事実の朗読、弁護人の冒頭陳述の順で、1時間16分間にわたり行われた。検察は「全氏は2000年代から回顧録の準備を始め、周囲から助けられ、2015年に草稿を作るなど、出版を主導した。1980年5月、光州一帯で軍のヘリコプターから民間人に向けた射撃があったことが、軍内部の文書や国立科学捜査研究院の鑑定、国防部調査などで確認されたにもかかわらず、虚偽の事実を記した回顧録を作って全国に配布し、チョ・ビオ神父の名誉を傷つけた」と公訴要旨を述べた。検察はまた「全氏が5・18当時、保安司令官と合同捜査本部長らの職責を遂行していたため、状況を把握しており、回顧録の出版3カ月前にも多数のヘリコプターからの射撃の弾痕が確認されただけに、虚偽事実を特定多数人に故意に流布し故人の社会的評価と名誉を傷つけた責任がある」と強調した。
全氏側は、ヘリコプターによる機銃掃射が事実なのか、チョ神父に対する表現に故意性があったかなどを争う戦略で対抗した。チョン・ジュギョ弁護士は「ヘリによる機銃掃射はまだ確認されておらず、大衆の論争がある事案だ」と公訴事実に反論した。また、最高裁判所が棄却した管轄裁判所の変更を再び申請した。チョン弁護士は「光州は被告人の住所地でも、犯罪の発生地でもない。回顧録を作った出版社が京畿道坡州(パジュ)であるため、光州地裁の管轄ではない」と主張した。
全氏は2017年4月3日に出版した回顧録で、「光州事態当時、ヘリコプターによる機銃掃射はなかったため、チョ・ビオ神父がヘリコプターからの射撃を目撃したというのは、歪曲された悪意的な主張だ。チョ神父は聖職者という名にふさわしくない破廉恥な嘘つきだ」だと主張した。チョ神父の甥は同月27日、全氏を死者に対する名誉毀損の容疑で告訴し、検察は翌年の5月3日、彼を裁判にかけた。死者の名誉を傷つけると、懲役2年以下または罰金500万ウォン以下の処罰を受けることになる。
同日昼12時33分ごろ、光州地裁の裏門に到着した全氏は、「発砲命令を否定するのか」という取材記者の質問に、「なぜこういうことをするのか」と述べるなど、神経質な反応を示した。「光州市民に謝罪する用意がないか」や「ヘリコプターによる機銃掃射を認めるか」などの質問には何も答えなかった。
警察は光州地裁周辺に10中隊約1200人を配置したが、これと言った衝突は起きなかった。次の公判は4月8日に開かれる。証拠整理のための公判準備期日であるため、全氏には出席の義務がない。