ヤン・スンテ前最高裁長官(71)が24日未明、逮捕された。裁判所が司法壟断と名づけられた司法の信頼毀損の最終責任を前職の司法府トップに厳重に問うたのだ。前・現職の裁判官約100人を取り調べ7カ月以上続いた検察捜査は、ヤン前最高裁長官らを裁判にかけ、最終手続きに入る。司法の信頼回復のカギは、再び裁判所が握ることになった。
前日、前最高裁長官に対する憲政史上初の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)という負担を抱え、午後4時ごろ尋問を終えたソウル中央地裁のミョン・ジェグォン令状担当部長判事は、10時間の熟慮の末「犯罪事実のうち相当部分について容疑が疎明された。また、事案が重大であり、現在までの捜査進行経過と被疑者の地位および重要関連者との関係などに照らして証拠隠滅の恐れがある」とし、検察が請求した逮捕状を発給した。42年間他人を審判した法壇から降り、後輩裁判官の判断を待っていたヤン前最高裁長官は、京畿道儀旺市(ウィワンシ)のソウル拘置所に囚人服を着て収監された。
これまで「防弾裁判所」との非難を受けてきた裁判所が、前最高裁長官の逮捕状を出すかは検察も予断できなかったようだ。裁判所の判断は、「最高上級者」として司法行政事務に対する包括的な指揮・監督権を持つ最高裁長官の責任を他人に押し付けることは不可能だという「大前提」が敷かれている。地に落ちた司法の信頼を回復するためには、前最高法官の処罰も避けられないという裁判所内外の気流が反映された結果と見られる。
特に「ヤン・スンテ‐パク・ビョンデ-イム・ジョンホン」につながる指示・報告関係から、パク元最高裁判事という中間ルートがなくても、ヤン前最高裁長官の犯罪容疑は相当部分で疎明されると判断したものとみられる。これに先立ち検察は、補強捜査を通じてヤン前最高裁長官が単なる指示者ではなく、実質的な実行者だったことを示す物証と供述の確保に力を入れた。ヤン前最高裁長官の指示をこまかく記録した「イ・ギュジン業務手帳」、日本企業の代理人に直接会って日帝強制労働損害賠償請求訴訟裁判の遅延を話しあった情況が書かれた「キム&チャン文書」、特定性向の判事らに人事上の不利益を与えるようにした「物議を起こした裁判官文書」などだ。特に検察はこの日午後、同じ裁判所で特定の検事1人に人事的不利益を与えたアン・テグン元検察局長に懲役2年を言い渡し、法廷拘束した事実を取り上げ、「裁判官数十人に人事的不利益を与えたヤン前最高裁長官の容疑はさらに重い」と主張したという。
ヤン前最高裁長官側はこの日、「司法府のトップとして、最高裁(大法院)の判決による波紋に対する考えや悩みを伝える水準だった」「最高裁長官の正当な人事権の行使だった」という従来の立場を繰り返したという。「最高裁長官から指示を受けた」という後輩裁判官たちの供述が提示されると「嘘の供述」だという趣旨で反ばくしたという。「イ・ギュジン業務手帳」が後からねつ造された可能性もあるという主張もあったという。ミョン・ジェグォン部長判事は、前最高裁長官側の主張よりも、検察が提示した物証と供述の信ぴょう性をより高く買ったわけだ。
一方、同じ時間すぐ隣りの法廷で、パク・ビョンデ元最高裁判事の拘束前被疑者尋問を行ったホ・ギョンホ令状担当部長判事は、「主要な犯罪容疑に対する疎明が十分でない。一部は犯罪が成立するかどうかに疑問がある」とし、先月の1次棄却時と類似の理由で逮捕状請求を棄却した。