文在寅(ムン・ジェイン)大統領が5日、平壌(ピョンヤン)に対北朝鮮特使を派遣する方針を明らかにしたのは、非核化交渉をめぐる朝米間の膠着状態を打開し、南北関係の発展で朝米関係を牽引していくという強い意志を示すためと見られる。朝鮮半島情勢が難局に陥った中、仲裁者であると同時に促進者として勝負に出たのだ。
対北朝鮮特使の派遣は、文大統領が先に北朝鮮に提案した。文大統領は、最近、朝米が互いに非核化と休戦協定をめぐって膠着状態に陥ったことで、4・27板門店(パンムンジョム)宣言の履行に支障を来しており、9月の平壌南北首脳会談の成果までもが不透明になったことを受け、特使の派遣を決心したものと見られる。米国は非核化交渉で北朝鮮との隔たりを埋められず、8月末のマイク・ポンペオ国務長官の訪朝を急きょ取り消すと共に、韓米合同軍事演習の再開可能性にも言及した。このような中、開城(ケソン)南北連絡事務所の開所が延期され、南北間の京義線北鉄道共同点検事業も見送られている。キム・ウィギョム大統領府報道官は「9月中に平壌で南北首脳会談を開くことにした合意を守るためには、これ以上先延ばしにしてはならないと判断したようだ」と述べた。現在の状況を重く受け止め、先に突破口を開かなければならないと判断したわけだ。さらに、大統領府が5日に特使を派遣することにしたのは、北朝鮮政府樹立日の9・9節を避けるためとみられる。9・9節の直前に平壌を訪問した場合、特使団がまるで今年で70周年を迎える北朝鮮政権樹立日の式典に使節団の役割を果たすという誤解を招きかねないためだ。
文大統領は特使派遣を通じ、まず非核化と休戦協定に関して北朝鮮の本音を把握することを目指すものと見られる。大統領府関係者は「特使は最高指導者の代理人だ。南北の指導者間の間接対話を通じて、高官級会談では共有できない虚心坦懐な意見を交換できる」とし、「非核化などの全ての問題が包括的に取り上げられるだろう」と話した。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員も「(特使団が)非核化をめぐる朝米間の隔たりに関する仲裁案を用意しなければならない」とし、北朝鮮を説得し、(結果を)米国に伝えなければならない」と話した。 イ・ジョンチョル崇実大学教授は「(現段階で)南北が互いに何ができるかについて話し合い、朝米関係に対する北朝鮮の立場を聞いてみなければならない」と話した。
さらに、文大統領は先月13日の高官級会談で合意しなかった9月の南北首脳会談の日程の確定を目指すものと見られる。文大統領は南北首脳会談を朝鮮半島の完全な非核化と終戦宣言、平和協定への必須段階と考えている。文大統領は光復節記念式典での演説で「南北関係の発展は朝米関係進展の付随的な効果ではない。南北関係の発展こそが朝鮮半島の非核化を促進させる動力だ」と述べ、南北関係を発展させることで非核化を後押しするという強い意志を表明した。キム・ウィギョム報道官も、ポンペオ長官の訪朝が取り消された後、「朝米関係が硬直した状況では、詰まった部分を解消し、米朝間の理解の幅を広げることにおいて、促進者・仲裁者として文大統領の役割がむしろより大きくなった」と述べた。
大統領府は、対北朝鮮特使団の面々や規模などはまだ決まっていないとした。しかし、すでに今年3月に対北朝鮮特使として訪朝し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に会ったチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長やソ・フン国家情報院長が今回も重責を任されると見られる。2人はそれぞれ、対米、対北朝鮮ラインの責任者だ。当時、特使団は二人を含めて、チョン・ヘソン統一部次官、キム・サンギュン国情院2次長、ユン・ゴニョン大統領府国政状況室長などで構成された。今年7月、上海総領事から異動したパク・ソンウォン国情院長特別補佐官も特使団に含まれる可能性がある。状況が厳しいだけに、イム・ジョンソク大統領秘書室長が直接行くと予想する専門家もいる。大統領府は特使団が面会する北側の人物に関して「考えてはいるものの、まだ決まったわけではない」とし、言及を避けたが、第1次特使団が金委員長に会っただけに、今回も彼に会う可能性が高い。