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[コラム]めまいを引き起こすトランプ

登録:2018-08-30 23:01 修正:2018-08-31 09:36
ホワイトハウスのダン・スカビーノ局長(ソーシャルメディア担当)が24日(現地時間)、自身のツイッターアカウントにドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスの執務室で参謀らとともに会議をする写真を掲載した=ダン・スカビーノ局長のツイッターからキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「トランプはトランプだ」

 ワシントンに来る前、ソウルのある米国人大学教授がドナルド・トランプ米大統領に関してこのように話した。既成政治・マスコミなどワシントン主流の文法を破壊し、自分の意地と度胸で金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長との歴史的な初の朝米首脳会談を成功させたことについての対話の中で出てきた言葉だ。その表現には、猪突的ながらも予測を許さないトランプ・スタイルに対する冷笑のようなものも混じっていたと思う。

 停滞期に陥っていた朝米関係に、最近再び視線を集中させるトランプ大統領を見て「トランプはトランプだ」という言葉を思い浮かべた。トランプ大統領は、マイク・ポンペオ長官が4回目の訪朝を発表してからわずか24時間後にツイッターで取り消しを発表した。四日後、ジェームズ・マティス国防長官は「韓米合同軍事演習をこれ以上中断する計画はない」として、演習再開カードを持ち出した。韓国と米国のマスコミは「朝米関係がシンガポール首脳会談以前に戻る」という解説を吐き出した。ところが、またその翌日にはトランプ大統領がツイッターを通じて「現時点で多くのお金がかかる合同演習を実施する理由はない」とあっさり覆した。

 トランプ大統領が足早に朝鮮半島の緊張強度を引き下げたことは幸いだが、このようなめまいにいつまで耐えなければならないのか、苦々しい思いを拭うことはできない。「火炎と怒り」のような戦争直前の言辞から「朝米首脳会談開催受け入れ」と「首脳会談取り消し発表」を経て「予定通りに進行」に至ったきわどい「トランプ・ジェットコースター」を経験した私たちだ。だが、朝鮮半島と全世界に途方もない波及力がある米国の外交が、このような形で毎日シーソーのように続いてもいいのだろうか。

 現在、朝米間の膠着は完ぺきな相互信頼を積めないまま、それぞれ「終戦宣言」と「非核化措置」を先に要求し対抗しているが、双方にとって決断が必要な問題だ。だが、朝米膠着、南北停滞、米中葛藤、そして韓米亀裂説が出てくるまで、米国が振り返ってみなければならないことも少なくない。

 トランプ大統領は、シンガポール首脳会談の後「前任の大統領が数十年間できなかったことを、私は数カ月でやり遂げた」として「もはや核脅威はない」と自慢した。最近では「北朝鮮が非核化措置を取ったと信じる」と話して、朝米間に何らかの進展がなされているのではないかという観測を呼んだ。米国は韓国政府の「南北関係の過速」を牽制しているが、トランプ大統領のこうした楽観気流が周辺国に「肯定信号」を与えたのではないか、振り返ってみる必要がある。

 米国が北朝鮮問題に関する懸案を韓国と深く共有しているのかも疑問に感じる。マティス国防長官が言及した「韓米合同軍事演習再開の可能性」という敏感な事案に関し、韓国政府は事前に全く聞いていなかった。米国はむしろ南北の鉄道事業共同点検計画を不許可にし、「主権侵害」論議まで引き起こした。トランプ大統領が北朝鮮非核化問題に米中貿易戦争を取って付けたことについては、米国内でも問題解決をさらに難しくし「カオス(混沌)にした」という指摘が出ている。

ファン・ジュンボム・ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 朝鮮半島の非核化と平和構築の大きな礎石を置いた初めての朝米首脳会談は、両首脳の出会い自体が途方もない成果だ。だが、その履行過程は具体的な合意と実践を積んでいかなければならないから、はるかに難度が高い。それだけに双方を行き来する水面下の交渉と公開的メッセージも緻密で慎重でなければならない。だが、最近トランプ大統領が駆使しているシーソーは、「もしかしたらの反転」を期待した交渉術とだけ見るには不安だ。このような形が続くなら、朝米が非核化と関係改善措置の実行に着手するとしても、信頼を裏切らず重々しく持続させることができるのだろうか。

ファン・ジュンボム ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/859985.html韓国語原文入力:2018-08-30 18:55
訳J.S

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