今月4日、監査院は4大河川事業に対する監査報告書を通して、最小水深が6メートルに拡大され16個の堰が建設されたこと、完工時期が繰り上げられ環境影響評価期間が短縮されたこと等が、すべて李明博(イ・ミョンバク)元大統領の指示によるものであったことを明らかにした。 4大河川事業の最大の責任者は李元大統領だが、当時彼を助けて4大河川事業を主導した人々は少なくない。 環境運動連合で『4大河川事業賛同者人名辞典』を編纂していたイ・チョルジェ環境運動連合「生命の川」特別委員会副委員長が、記憶すべき“あの時のあの人たち”を整理した。
4日監査院4大河川監査結果発表
「李元大統領が事業細部を指示」
数多くの政治家、官僚、学者が賛同
“S級”は 李明博 、イ・ジェオ、パク・チェグァンなど
今でも「4大河川事業は正しかった」と主張
ホン・ジュンピョ、キム・ムソンなど当時の与党政治家
「歴史的課業」云々して力添え
ウォン・ヒリョン済州知事も「すべて検証されるだろう」
「権力の狂気・詐欺劇に協力した人々、
謝罪し責任を負うべき」
「ドイツでは数十年前に放棄した狂った真似を、韓国はなぜ続けるのか?」
2011年8月、国際的河川専門家であるドイツのカールスルーエ大学のハンス・ベルンハルト教授は、李明博(イ・ミョンバク)政権が4大河川事業を強行していた南漢江(ナムハンガン)、洛東江(ナクトンガン)の工事現場を見て回り、深い嘆息を吐いた。 白髪の老教授は「ドイツでは川を運河にする事業は中断して久しい」として「欧州連合(EU)の“水管理基本指針”(Water Framework Directive)に盛り込まれた法的基準を満たさねばならないので、韓国の4大河川工事のようなものは貫徹されることも、実現されることもあり得ない」と話した。 河川地形学分野の専門家である米バークレーのカリフォルニア大学のマティアス・コンドルフ教授は「米国では1970年代に“清浄水法”(Clean Water Act)が発効して、4大河川事業のようなことは不可能なシステムになった」と述べた。 二人の専門家は共に、4大河川事業は先進国ではあり得ない事業であり、復元ではなく破壊であるという点を指摘した。
4大河川事業は2007年大統領選挙時の李明博候補の公約である「朝鮮半島大運河」を根元に置いている。 2008年、米国産牛肉輸入に対する国民の抵抗が激しくなると李明博当時大統領は「国民が反対するならば大運河はあきらめる」と明らかにした。 そして代わりに「4大河川再生事業」という名称で大規模河川整備事業を実施した。 4大河川事業は2009年11月に開始し2012年中盤に終了となった。 2011年10月22日南漢江の梨浦(イボ)堰で開かれた「4大河川の新しい波を迎える行事」で、李元大統領は「環境を生かす川として生まれ変わった」と言って4大河川事業の成功を宣言した。 以後、彼とその側近は「4大河川事業が洪水と日照りを防止し、国家の格を上げた」と自画自賛に没頭した。
李明博政権は成功だと主張したが、現実は全く違っていた。 「緑藻ラテ」という新造語が生まれるほどの深刻な水質悪化、大規模な魚類集団斃死、巨大クシ苔虫などそれまで見られなかった生物種の出現など、4大河川事業の弊害の証拠が続出した。
4日、監査院は4大河川事業に対する第4次監査結果である「4大河川再生事業推進実態の点検および成果分析」という報告書を通して、李元大統領が水深を6メートルに、貯水量を8億トンに増やすことなどを直接指示したという点、国土海洋部など関連部署が問題提起なしにそれに従った点、利水・治水・水質改善・経済性の面で4大河川事業は全て問題があるという点などを指摘した。 環境社会研究所のク・ドワン所長は「4大河川事業は民主主義が後退したため可能だった事業だ」と評価した。 この10年間あまり4大河川に24兆ウォン(約2兆4千億円)を使う中で、破壊されたのは川だけではない。 大韓民国の合理的システムと民主主義が後退し、国民が被害を受ける“大韓民国残酷史”が展開されたのだ。 この残酷史に数多くの政治家、官僚、専門家、言論人、社会的要人などが力を添えた。 しかし彼らは、依然として自分たちの行為について反省もしなければ、責任を負いもしない。
S級賛同者10人の行跡
環境運動連合と運河反対全国教授会などでは、2013年に4大河川事業推進に最も大きく寄与し真実歪曲の先頭に立った要人をS級(10人)、A級(167人)、B級(105人)に分けて282人を選定している。(環境運動連合のホームページ参照)
多くのS級の人々は今でも依然として「4大河川事業は必ず必要な事業であったし、成功した事業だ」と主張している。その代表はやはり李元大統領だ。 彼は2015年1月に発刊した『大統領の時間』という自叙伝で「4大河川事業で洪水と日照りの解決はもちろん、世界金融危機状況で金融危機を克服することができた」と主張した。 ソウル大学経済学科のイ・ジュング名誉教授はこれに対して「糞犬が呵呵大笑する話」(雑犬が大笑いするような話)と批判した。
イ・ジェオ元ハンナラ党国会議員は6日、メディアとのインタビューで「(私を) 4大河川伝導師と言うが、とても名誉なネームだ」として「4大河川事業はやってよかったと、多くの人が言っている」と話した。
学界の代表的な要人としては、梨花女子大学のパク・ソクスン教授と米ウィスコンシン大学のパク・チェグァン教授を外せない。 パク・ソクスン教授は2012年3月に『富国環境が私たちの未来だ』という本で、4大河川を批判する環境団体を「親北朝鮮の左傾化した環境団体」とし、4大河川事業を批判する専門家を「偽善的環境主義者」「詐欺師」と罵倒した。 パク・チェグァン教授は2010年4月に4大河川国民訴訟の政府側証人として出て「3年後には韓国全体が4大河川のためにとても暮らしやすい国になる」と主張した。 彼らはマスコミ界の要人のうち「4大河川A級賛同者」である韓国経済のチョン・ギュジェ前論説委員が社長兼主筆を務めるインターネット媒体を通して、4日に出た監査院監査結果が「偏向している」と主張するなど、相変らず反省のない姿を見せている。
仁荷大学教授在職中に長官級である4大河川再生推進本部長に抜擢されたシム・ミョンピル教授は、2009年9月30日「4大河川再生事業は単純な河川整備を越えて生命・経済・環境の流れる河川を作って先進韓国へと進むためのもの」と主張するなど、4大河川事業広報の先頭に立った人物だ。4大河川再生推進本部環境部本部長に抜擢されたチャ・ユンジョン氏は2012年6月25日に「4大河川事業をしなかったならば、水面にあらわになった砂底は熱気で熱くなっただろうし、わずかながらある水も上昇した水温と汚染物質でぶくぶく泡立っただろう」と話した。
チョン・ジョンファン元国土海洋部長官、クォン・ドヨプ元国土海洋部長官、イ・マニ元環境部長官、キム・ゴノ元水資源公社社長もまた、S級賛同者だ。彼らは「MB(李明博)アバター」と呼ばれても遜色ないほど李元大統領に忠誠を尽くした。 チョン・ジョンファン元長官は“速度戦”で進められた4大河川事業工事で労働者の死亡事件が続出した2011年4月21日、国会で「事故らしい事故は何件もなく、ほとんどが本人の過失による交通事故や溺死事故だった」と述べた。 イ・マニ元長官は2009年10月6日、国政監査場で「4大河川事業が失敗したら、私が責任を負う」と発言したが、まだ責任を負う姿を見せていない。
ウォン・ヒリョンなど今回の地方選挙当選者も含まれる
政界にも4大河川賛同者が多い。 李明博政権時代のハンナラ党出身政治家たちは、多くが4大河川事業に対する責任を負わねばならない。 ホン・ジュンピョ自由韓国党前代表は2017年3月30日、「4大河川事業は成功した事業だ」として「4大河川の堰のために緑藻が生じたと言うのは無知の結果だ。 4大河川事業により国家的災難である洪水と日照りがなくなった」と強弁した。 キム・ムソン自由韓国党議員は2010年8月30日、4大河川事業を「歴史的課題」と称して「必ず成功させなければならない」と発言している。
キム・ムンス、キム・ギヒョン、キム・テホ、アン・サンス、ウォン・ヒリョン、ソン・ギソプ、クォン・ギチャンは今回の6・13地方選挙で立候補した4大河川賛同者だ。 このうちウォン・ヒリョン、ソン・ギソプがそれぞれ済州(チェジュ)知事と鎮川(チンチョン)郡守に当選した。 ウォン・ヒリョン知事は2010年9月16日の討論会で「4大河川事業が川を殺すと心配するが、来年6月には全部検証されるだろう」と言った。 それから8年が過ぎ、4大河川事業で川が破壊されたことが検証されたが、ウォン・ヒリョン知事は発言に対する責任を負っていない。
4大河川事業に賛同した政治家の中で、当時大統領府秘書室長を務めていたイム・テヒ(国立韓京大総長)、キム・ソンジョ前国会議員(韓国体育大総長)は大学総長になった。 キム・ヒョンオ前議員(釜山大社会科学研究院客員教授)、ナ・ソンニン前議員(漢陽大経済金融学部特聘教授)、ホ・ナムシク元釜山市長(東亜大国際専門学部客員教授)は大学で客員教授などの席を占めている。
チョン・ドンヤン(韓国教員大名誉教授)、チョ・ウォンチョル(延世大名誉教授)、キム・ヒョングク(ソウル大環境大学院名誉教授)など、当時4大河川事業に賛同した専門家たちも現在名誉教授になっている。 大学総長、客員教授、名誉教授は学問の象徴であり業績を賛える地位だ。 このような地位を国土環境と国民に被害を与えた人々が占めることが、果たして正当なことなのか。 4大河川再生推進本部長だったシム・ミョンピル仁荷大学教授が2014年に大韓土木学会長に選出されたということは、学界が自浄能力を喪失したことではないのか、問わざるを得ない。4大河川事業に賛同したユン・ビョンマン明知大学教授もまた2015年水資源学会長に就任した。
官僚集団内にも賛同者が多かった。 環境運動連合の資料によれば、李明博政権時代、4大河川事業にともなう勲・褒賞、大統領・国務総理・国土部長官の表彰を受けた受賞者1354人のうちでは、国土部(傘下機関含む)が343人で最も多く、次いで農林水産食品部42人、環境部36人、行政安全部16人、文化体育観光部11人の順だった。 これらの部署のうちで文在寅(ムン・ジェイン)政府になって実施された部署別革新委員会で4大河川事業が扱われたところは環境部だけだ。 4大河川事業推進の核心部署だった国土部と農林水産食品部などは初めから抜けている。「4大河川事業は、やむを得ず従わなければならなかった」として被害者を装っている。 実際に自分たちが被害を与えた国民と数多くの生命に対する反省には背を向けながらだ。
李明博・朴槿恵政権時代、4大河川事業に対する一部マスコミの態度も深刻だった。 多くのメディアが大運河に対して妥当性検証不足と国民的合意不足を挙げて批判的立場を見せたが、朝鮮日報・中央日報・東亜日報などは4大河川事業に対する合理的な疑いを持つことなく「4大河川事業は大運河ではない」として批判意見を誹謗中傷した。 これらもやはり、自らの誤謬とマスコミとしての責任放棄に対していかなる謝罪も反省もない。
ソウル大学環境大学院のホン・ジョンホ教授は、李明博・朴槿恵政権時代を“狂気の時代”と評した。 権力による狂気は常に深い後遺症を残す。 これを克服するには、誤ちに対する謝罪と社会的責任を負おうとする姿勢、そして省察を通しての自浄能力の回復が必要だ。 4大河川事業という総体的詐欺劇に協力した彼らが、今直ちにしなければならないことだ。
イ・チョルジェ/環境運動連合「生命の川」特別委員会副委員長