「マスコミがどう報道するのかを一々気にしていたら、狂ってしまうだろう」
マイク・ポンペオ米国務長官は8日、韓米日3カ国外相会議後の記者会見で、このように述べた。「批判する人たちが我々が成し遂げたことを過小評価することも知っている」とも付け加えた。ポンペオ長官は「だから、気にしないようにしている」としたが、逆説的に批判世論に敏感にならざるを得ない状況を告白したわけだ。
ドナルド・トランプ大統領に敵対的な米国の主流マスコミと専門家集団が主導する批判世論が、北朝鮮との交渉に乗り出した米国政府の足を引っ張っている。6・12朝米首脳会談以降、「トランプが金正恩(キム・ジョンウン)が仕掛けた罠にかかった」という非難世論にさらされていたトランプ政権は、ポンペオ長官の3度目の訪朝期間に、非核化の議題に“オールイン”(すべてをかける)したようだ。北朝鮮側が極度の拒否感を示してきた「最大の圧迫」という言葉も、1カ月ぶりに再び取り出した。韓米軍事演習の中断など、訪朝前に発表した“善意の措置”のほかに、朝米関係の改善と平和体制の構築に関する“追加の贈り物”はなかった。北朝鮮側が「外務省報道官談話」で「米国側が焦った挙句」と指摘した背景だ。
実際、“客観的構造”だけを見ると、焦るべきなのは金正恩委員長の方であり、トランプ大統領は相対的に余裕がある。周知の通り、トランプ大統領は「北朝鮮の非核化」の進展を11月の中間選挙と2020年の再選勝利への足場にしようとしている。少なくとも11月までは“時間”があるわけだ。一方、4・20労働党中央委全員会議で「経済と核武力建設の並進路線」を事実上廃棄し、「社会主義経済建設に総力集中」を新しい戦略路線として採択した金正恩委員長には、経済部門で目に見える成果が必要だ。9月9日「共和国創建70周年を勝利者の大祝典として慶祝」(「労働新聞」7月3日付の社説)するためには、また、2019年4月15日の「太陽節」(故金日成主席の生誕記念日)までに「元山葛麻海岸観光地区を最上の水準で完成」(「労働新聞」6月5日付1面)して外国人観光客の外貨を手に入れるためには、対北朝鮮制裁の緩和が行われなければならない。元高官は「対北朝鮮制裁が緩和されなければ、金正恩体制の“国策事業”の元山葛麻海岸観光地区はなんの役にも立たないだろう」と話した。金委員長にとって対北朝鮮制裁の長期化は災いだ。制裁を緩和するため、スピード感のある非核化措置に乗り出さなければならない状況だ。
しかし、同高官は「客観的な構造からすると、焦るべきなのは金委員長の方だが、批判世論によってトランプ大統領が追い込まれている逆説的な状況が、朝米交渉に否定的影響を及ぼすのではないかと懸念している」と指摘した。実際、ポンペオ長官の3度目の訪朝の結果は、このような懸念が杞憂ではないことを示唆する。最近、米国を訪問したある専門家は「トランプ大統領の対北朝鮮政策を米国専門家らは皆批判し、韓国の専門家らが擁護する不思議な現象が起きている」とし、「このような状況が続くのは危険だ」と話した。
実際、“米国の焦り”は北朝鮮にとって一方的な圧迫と受け止められており、北朝鮮の非核化における“速度調節”は米国で疑念を拡散させる恐れがある。誤解の増幅を遮断し、史上初の朝米首脳会談を可能にした好循環の動力を持続・強化する知恵が求められるという指摘が多い。例えば、米国は、金正恩委員長が「能動的非核化措置」に乗り出せるよう、関係改善と平和体制関連の初期措置に誠意を示さなければならず、北朝鮮はトランプ大統領がツイートに“自慢”できるように“協力”すべきということだ。「善意のやり取り」が必要だと言う指摘だ。朝米交渉が行き詰まらないよう、「潤滑油が必要な時点」(政府関係者)だ。