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憲法裁判所、「国定教科書違憲訴訟」2年4カ月引き延ばし結局「却下」

登録:2018-03-29 23:01 修正:2018-03-30 09:46
朴槿恵(パク・クネ)政府の時に憲法訴訟請求 
消極的審理に国会からも叱責 
政権交替で告示改正されるや却下 
「効力喪失し憲法訴訟請求の目的は達成」 
 
請求人「生徒の被害・葛藤が大きな事案 
憲法判断抜きで誠意のない決定」批判
民主社会のための弁護士会、韓国史教科書国定化阻止ネットワークの会員たちが29日午後、ソウル市斎洞の憲法裁判所前で「歴史教科書国定化違憲訴訟宣告への立場発表記者会見」を開き、憲法裁判所の却下決定に反論している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 憲法裁判所が、政権の好みに合わせた画一的な歴史観の注入が憂慮された歴史教科書国定化に対する憲法訴訟の審理を、2年4カ月引き延ばした末に却下した。国定化告示が廃止されており、繰り返される危険もないという理由だが、朴槿恵(パク・クネ)政府の時に審理に消極的だった憲法裁判所が、最高審判機関としての責務を怠ったという批判が出ている。

 憲法裁判所は29日、裁判官全員一致意見で朴槿恵(パク・クネ)政府の韓国史教科書国定化の根拠になった初・中等教育法条項と、教育部の「中・高等学校教科用図書国定・検定・認定区分」告示(国定化告示)などに対する憲法訴訟を却下した。憲法裁判所は「国定化告示は完全に廃止され効力を喪失した。請求人が憲法訴訟審判請求で達成しようと思う目的が達成されているため、違憲の有無を判断する権利保護利益は消滅した」と却下の理由を明らかにした。初・中等教育法の条項などに対しても憲法裁判所は「国定教科書の義務使用は初・中等教育法などではなく、国定化告示のため」という趣旨で、憲法裁判所の判断対象ではないと見た。

 これに先立って2015年11月3日、当時のファン・ウヨ副首相兼教育部長官は「歪曲され偏向した歴史教科書で子どもを教えることはできない」として、韓国史教科書国定化を確定告示した。これに対し小中高生、保護者、教師たちは2015年11月11日と12月22日に「国定化告示と根拠法令は違憲」とし、憲法訴訟を請求した。

 だが、憲法裁判所は「判断の遅延は国定教科書を容認する形になるので、速かに判断を下さなければならない」という国会の指摘を受けても、教育部からの回答を受けるだけに245日を使うなど、審理に消極的だった。その間に朴槿恵前大統領が弾劾され、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が当選すると、教育部は2017年5月31日に国定教科書の根拠になった告示を改定する方式で廃止した。憲法裁判所は、初めて憲法訴訟が請求されてから2年4カ月が過ぎて、こっそりと“却下”を決めたのだ。憲法裁判所は2016年にもパケット盗聴を許可する通信秘密保護法条項に対する憲法訴訟判断を5年間引き延ばして、当事者が亡くなるとすぐに審判手続を終了したことがある。

 しかも、憲法裁判所は今まで実際の権利救済に役立たず、古い法秩序の守護・維持のために必要ならば審判対象として合憲・違憲の有無を決めてきた。しかし、今回の事件では「国定化告示以後、韓国社会は教育の自主性・政治的中立性と関連して大きな論議に包まれたし、深い議論を経て関連告示が現在のように改定された」として、「こうした事情を総合してみれば、今後韓国社会にこの事件と同じパターンの侵害行為が再現される危険があるとは断言し難い」と判断した。国定教科書が再現される憂慮はないと恣意的に判断し、違憲の有無さえ判断しようとしなかった。しかし、憲法裁判所は2014年6月、警察の放水銃直射に対する憲法訴訟を「近距離で放水銃の直射という基本権侵害が今後も繰り返される危険があるとは見難い」として却下したが、わずか1年後の2015年11月、警察の放水銃直射を受けて農民のペク・ナムギ氏が亡くなった。

 今回の憲法訴訟請求を代理したイ・ヨンギ弁護士は「憲法裁判所がこの間、決定を引き延ばして無責任に却下した」とし、「前政権の反憲法的な国定教科書強行により、社会的混乱、生徒の被害は大きかったし、歴史教科書の国定化はいつでも再び試みられうるの、葛藤を繰り返さないためにも憲法裁判所が憲法的判断をすべきだった」と指摘した。

キム・ミンギョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/838272.html韓国語原文入力:2018-03-29 19:45
訳J.S

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