「欧州スパイ団捏造事件」で45年前、無実の罪で死刑にされたパク・ノス氏(当時39歳)の遺族に対し、国が23億ウォン(約2億3千万円)を賠償すべきという判決が出た。欧州スパイ団事件は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権の代表的な公安捏造事件で知られている。
ソウル中央地裁民事26部(裁判長パク・サング)は1日、パク氏の遺族が国を相手に70億ウォン(約6億8千万円)の賠償を求めて起こした訴訟で、23億4768万ウォンの支給を命じる判決を言い渡した。裁判部は「不法な捜査で違法に収集された証拠によって死刑が宣告され、執行された」と述べた。裁判所は今年2月、同事件でパク氏と共に死刑にされたキム・ギュナム民主共和党議員の遺族に対し、国が27億ウォン(約2億6千万円)を賠償すべきと判断した。
パク氏は1953年から米ハワイ大学、東京大学法学部、英国ケンブリッジ大学の法学部で修学した後、ケンブリッジ大学の招聘研究員として勤務した。15年間韓国を離れていたパク氏は1969年2月に帰国したが、同年4月に中央情報部(現国家情報院)に連行され、違法に拘束されたうえに拷問を受け、結局、英国での留学時代、東ベルリンと平壌を訪問し、指令を受けてスパイ活動をしたという容疑で裁判にかけられた。裁判所は「中央情報部で物理的な加害を受けて自白した」というパク氏の主張を認めず、1970年に死刑を確定した。パク氏は再審を請求したが、1972年に死刑が執行され、この世を去った。パク氏の無念さは2015年、最高裁判所が再審無罪判決を確定した後にようやく晴らされた。2013年、再審で無罪を言い渡したソウル高裁は刑事2部は「過去の権威主義時代の裁判所の形式的な法の適用で被告人と遺族に多大な苦しみと悲しみを味わわせた。謝罪と慰労の言葉とともに、すでに故人となった被告人の冥福を祈る」と述べた。
遺族らを代理したチョ・ウィチョン弁護士(法務法人イダム)は「(パク氏の)妻は韓国に嫌気がさしてカナダに移民しており、娘は(父親が)スパイという濡れ衣の陰で苦しんできたのに、今回の賠償金額には物足りなさを感じる」としたうえで、「当事者らと相談して控訴する」と明らかにした。