中国人のスン・ウェイジュンさん(42)は、2011年10月にE-7ビザを取得して韓国国内に入り、先月8日まで慶尚南道金海(キメ)市のある中華料理店でシェフとして働いた。彼は中国に帰る準備をし、5年6カ月間給料から毎月一定額を納めていた国民年金保険料600万ウォン(約60万円)余りを返してほしいと国民年金公団に申請したが、国民年金公団は「E-7ビザの場合、既に納めた国民年金を返す規定がない」とし、国民年金の払戻し要請を拒否した。
同じく中国人の調理師であるウィ・シャオポンさん(38)は、2012年12月から昨年2月までソウル江南(カンナム)の中華料理店で勤務し、1月に他の中華料理店に職場を移した。彼は最初の職場をやめる過程で、自分が納めた国民年金を返してもらうことができないことを知った。しかし、給与から源泉徴収される国民年金を払わない方法がなく、現在通っている2番目の職場でも国民年金保険料を納め続けている。
2012年10月から2014年1月まで、ソウルの中華料理店で調理師として働いた中国人のクォ・ルイさん(35)は、未払い給料と未支給の退職金・国民年金を返してもらうため、事業主を相手に法廷で争っている。事業主は賃金と退職金を払わないのはもちろん、彼の給料から毎月国民年金を差し引きながらこれを国民年金公団に納付していなかったことが明らかになった。
彼らは「一度も触ってみることもなく払うばかりだった国民年金保険料を必ず返してもらいたい」と口をそろえた。
韓国で働く移住労働者も韓国人と同じく国民年金を納めるが、E-7ビザを受けた人などの多くは帰国する時、自分が払った国民年金を返還されていないことが分かった。
「移住民の人権のための釜山・蔚山(ウルサン)・慶南共同対策委員会」は20日、慶尚南道昌原(チャンウォン)の慶尚南道道庁プレスセンターで記者会見を開き、「韓国政府は調理師・通訳、大学講師などの専門・熟練人材に分類される84の職種のE-7ビザ対象者に対しては、国民年金を払っても返さないことで中国などと協定を結んだ。しかし彼らの大半は低賃金・長時間・高強度の労働者にすぎない」として、政府に正確な実態把握と対策作りを要求した。
共同対策委が情報公開請求を通じて国民年金公団から確保した資料によると、E-7ビザを受けて韓国で働き本国に戻ったか、現在どこにいるのか把握できていない移住労働者は、昨年9月末現在で3万5835人であり、彼らが納めた国民年金保険料の総額は1389億3213万ウォン(約138億円)余りに上る。つまり、彼ら3万5835人は保険料として1389億ウォン余りを払っても、帰国したり職場を辞めたことで返してもらえなかったということだ。
共同対策委は「E-7の他にもさまざまな種類のビザを受け韓国で働いて帰国した移住労働者がいるという点を考えるとき、移住労働者が返してもらえなかった国民年金保険料は少なくとも2000億ウォン(約200億円)を超えるだろう」と主張した。
これに対して国民年金公団の関係者は「移住労働者が国民年金加入の申告をすれば、国籍によって年金を納付しなくてもいい場合や、産業研修生や同胞の場合には払戻し一時金の形で払った年金を受け取れるという案内文を送っている。この程度では十分でなく、中国国籍者には、韓国と締結された社会保障協定により加入3カ月以内に本国の年金加入を証明しなければ年金保険料を納めなければならないという別途のアナウンスを推進中」だと話した。保健福祉部の国民年金政策課の関係者は「雇用主が年金を納付しなければ滞納事業場とみなし、追って差し押さえなどの手続きを踏んだり、労働者当事者に滞納事実を通報している。移住労働者の場合はどうなのか、実際、どのような方法で払戻し一時金を渡しているのか、手続き上の問題はないのかなどを確認している」と話した。