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大統領選挙でも“透明人間”扱いされる移住労働者らの訴え

登録:2017-05-02 03:23 修正:2017-05-02 07:10
メーデー前日、300人以上がソウル都心で集会 
声揃えて「雇用許可制の廃止、取り締まり中断」 
投票権なく、大統領選挙候補らも無関心 
沈相ジョン候補だけが10大公約に具体的な改善策を提示
国際労働者の日(5月1日、メーデー)を翌日に控えた4月30日、ソウル鐘路の普信閣前で移住労働者労働組合が主催した「労働3権勝ち取り」集会に参加した移住労働者たち=チョ・イルジュン記者//ハンギョレ新聞社

 「Stop crackdown、Stop EPS(取り締まりを中止せよ、雇用許可制を廃止せよ)!」"

 「We the worker are one!(私たち労働者はひとつだ)!」

 国際労働者の日(メーデー)を翌日に控えた4月30日午後、ソウル鍾路(チョンノ)普信閣前の広場では韓国語と英語が入り混じった演説とスローガンが響き渡った。「移住労働者2017メーデー集会」だった。ソウル・京畿地域だけでなく、遠くには慶尚北道密陽(ミルヤン)から上京した移住労働者約300人が、うららかな春の休日を返上して一堂に集まった。手にしたプラカードには労働3権勝ち取り、宿泊費の強制徴収指針の撤回、取り締まりや追放の中止、雇用許可制の廃止、作業場変更の自由などの言葉がハングルと英語で書かれていた。

 ソウル・京畿移住労組のセクアル・マムン首席副委員長は「私たちはメーデーの5月1日にも仕事をしなければならず、1日早く日曜日に集まりました。(まさにこれが)韓国の移住労働者たちがどのように生活しているのかを示しています」と話した。ネパール、フィリピン、バングラデシュ、台湾など東南アジア各国から出稼ぎにきた移住労働者らも、劣悪な労働環境と不当な待遇を受けた経験を打ち明けながら、悲しみを分かち合い、連帯の意志を固めた。

 今年3月末基準で、韓国国内に滞在している非専門就業および訪問就業者は約51万人。ビザの満了時限を超えた未登録の移住者まで合わせれば、移住労働者数は70万~80万人に達する。中小製造業と農畜水産業、サービス業種の低賃金労働力の主軸だ。彼らはしかし“国民”ではなく、“投票権”がないとの理由で、日常ではもちろん、選挙シーズンでも“透明人間”のように扱われている。今回の大統領選挙でも事情は変わらない。

 主要政党の5人の大統領選候補のうち、具体的な移住労働者政策を10大公約に盛り込んだのは、沈相ジョン(シム・サンジョン)(正義党)候補だけだ。雇用許可制の廃止や労働ビザの導入、移住女性の滞在権の保障、就職移住女性の労働人権の保障、移住労働者国際協約の批准、未登録の滞在者に対する健康保険の適用などだ。正義党のイム・スンジュン政策委員は「一定期間真面目に働いた移住労働者らには永住権の申請資格を付与し、安定的身分で権利と義務を行使するのが望ましい」と話した。

 これに先立ち、アムネスティ・インターナショナル韓国支部が主要政党の5人の大統領候補に送った「8大人権議題質疑」の中には、「移住労働者の権利保護」に関する3つの質問があった。▽事業場変更を理由にビザの延長・更新を制限する雇用許可の改正▽農畜産業部門の労働者に対し勤労時間および休憩基準を例外とする勤労基準法63条の廃止▽強制労働の禁止や団結権の保護、団体交渉権の適用など、国際労働機関(ILO)4大核心協約の批准などだ。これに対する回答は、候補と政党によって、はっきりと分かれた。共に民主党と正義党は3つの課題をすべて「推進」すると答えたが、自由韓国党はすべて「推進できない」との立場を明らかにした。正しい政党は「推進」または「一部推進」で、国民の党は「一部推進」または「無回答」だった。

国際労働者の日(5月1日、メーデー)を翌日に控えた4月30日、ソウル鍾路普信閣前で、外国人移住労働者が労働3権と人間らしい暮らしの保障を求めて集会を開いてから、街頭行進に乗り出している=チョ・イルジュン記者//ハンギョレ新聞社

 政府の外国人滞在政策の最優先目的は「定住化の防止」にあり、労働力需要の充員も「短期循環」原則に焦点が当てられている。2003年に制定された「外国人労働者の雇用などに関する法律」に基づき、翌年から実施された「雇用許可制」が柱となっている。政府は毎年、移住労働者の導入規模を決定し、雇用許可を受けて入国した移住労働者は最長4年10カ月まで滞在できる。韓国政府から「誠実勤労者」として認められれば、ビザ満了後に一旦出国してから、3カ月後に再入国できる。しかし、「誠実勤労者」制度は、移住労働者がかえって雇用主の横暴に耐えざるを得ない足かせになる場合もある。また、長くは9年8カ月に及ぶ滞在期間中に家族連れの滞在は許されない。

 忠清南道天安(チョンアン)から上京したネパール出身のオジャ・モドゥスドンさん(35)は2年4カ月の間、劣悪な作業環境と雇用主の横暴が原因で2回も作業場を移った。本国に妻と幼い息子を残してきたという彼は「韓国は経済先進国だが、移住労働者たちにいつ関心を持つようになるかが気になる。韓国(の労働者たち)が貧しい時代にサウジアラビアに行ったように、私たちも経済が厳しくて韓国に来た。私たちは搾取されるために、自殺するために、悪口を言われるために、韓国に来たわけではない」と訴えた。京畿道安山(アンサン)から集会に参加したバングラデシュ出身のある労働者は、演壇に上がり「私たちは黒い牛や機械ではありません。労働者は人間であり、皆(親にとっては)大事な子どもです」としながら、「脅迫と労働の強要を止めよ」と叫んだ。

 集会参加者らは労働者闘争歌が流れる中、「取り締まりや追放、宿泊費の強制徴収、ひどい社長、暴言・暴行・セクハラ」など、雇用許可制の毒素条項と人権侵害の現実を告発する内容を書いた垂れ幕を一緒に破るパフォーマンスをした後、街頭行進を繰り広げた。「カササギのお正月」のように1日早いメーデー集会を終え、再び作業場がある生活の場に戻った彼らにとって、今回の大統領選挙以降はこれまでとどれほど違うものになるだろうか。

チョ・イルジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/793067.html 韓国語原文入力:2017-05-01 20:29
訳H.J(2658字)

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