ある移住民の女性(34)は、タクシーに乗っていたとき、運転手から「夜は夫とうまくやっているか。ベッドではうまくいっているか」と言われた。彼女の移住民女性の友人も、駅の出口に立っていたとき、見知らぬ韓国人男性から「あんた、ここに来て金を稼ぐのも大変なんじゃないか。自分と一緒に来れば毎月30万ウォン(約3万円)を小遣いにやる」と言われ、強いショックを受けた。
移住民という理由でセクハラをされるのは女性だけではない。東南アジア出身のある移住民男性(35)は「『どこから来たのか、宗教は何か』と聞かれ、『妻は何人か』とだしぬけに言われ『夜の生活はどうなんだ』と何度も聞かれることもある」と言い、「移住民は男でも女でもセクハラを受けるのが一度や二度ではない」と話した。
あるトランスジェンダーの人(33)は、出勤途中に誰かに言葉をかけられ答えたところ、声を聞いた相手が「もしかしてトランスジェンダーか?きれいな顔だ」と言い、連絡先を教えろと要求された。その人が問い詰めると、相手はいきなり「声でわかるじゃないか。車の中でいっしょにアレをしよう」と言った。
ある身体障害者の女性(30)は、非障害者のボーイフレンドと駅の乗り換えエレベーターに乗っていたところ、ある中年女性が彼女のボーイフレンドに「何しているの、両親を悲しませるようなことをして…」と露骨に軽蔑する様子をした。
国家人権委員会は昨年、淑明女子大学産学協力団に依頼し、性的マイノリティ・女性・障害者・移住民とマイノリティでない男性など1014人を対象にアンケート調査と対面調査を行い、オンラインを分析した「ヘイト表現の実態調査および規制案研究」結果を19日発表した。今回の調査は、2010年代に入って本格的な社会問題に浮上した差別的表現と関連し、韓国で初めて実施した体系的な調査であり、報告書の分量は340ページに至るほどで調査の規模や分野が膨大だ。特に、様々な類型のマイノリティ20人を対象に深層面接をした後、彼らが経験したヘイト表現とこれによる苦痛を詳細に記述したことで注目を集めている。
報告書によると、性的マイノリティの94.6%がオンラインでヘイト表現の被害を経験していた。続いて女性(83.7%)、障害者(79.5%)、移住民(42.1%)の順だった。オフラインのヘイト表現の被害経験率も、性的マイノリティ(87.5%)が最も高く、障害者(73.5%)、女性(70.2%)、移住民(51.6%)の順だった。
自分のアイデンティティのために性的マイノリティの84.7%、障害者の70.5%、女性の63.9%、移住民の52.3%が非難に対する恐怖を感じていることが調査された。また、性的マイノリティの92.6%、女性の87.1%、障害者の81%が憎悪犯罪の被害を心配していた。
被害を受けたマイノリティ集団は、烙印と偏見などによって仕事や学業など日常生活から排除され、これによる恐怖と悲しみを感じ、持続的な緊張状態や無力感に陥っていることが調査された。特に、ストレスや自殺衝動・うつ病・パニック障害の発作・心的外傷性ストレス障害など様々な類型の精神的苦痛を経験したケースは、障害者58.8%、移住民56.9%、性的マイノリティ49.3%だった。
研究陣は「ヘイト表現を扱う立法が必要だが、表現の自由と衝突する恐れもあるだけに、ヘイト表現そのものを規制することのほかに、市民社会の対応能力を向上させる『形成的規制』が同時に行われなければならない」と強調した。
人権委は、今回の実態調査結果をもとに、専門家や関係者の意見を収集しヘイト表現の予防に向けた案をまとめる計画だと明らかにした。