「北朝鮮が核・ミサイル活動を中止すれば、韓米合同軍事演習の縮小について米国と論議できる」と述べたムン・ジョンイン統一・外交・安保特別補佐官の発言に対して、大統領府は19日、「韓米関係に役立たない」とし、“自制”を要求した。前日、ムン特別補佐官の発言について「学者として個人の意見に過ぎず、大統領府と事前の調整はなかった」と線を引いたことから一歩進み、事実上の「公開警告」をしたということだ。米国訪問中に出たムン特別補佐官の発言が、29~30日の韓米首脳会談を控えたワシントン政界に波紋を起こすと、さらに強力な表現を動員し、大統領府の公式の立場とは異なるという点を明確にしたものだ。
大統領府の高位関係者は同日、春秋館で記者団と会い「責任を取れる地位ににある人物が今日ムン特別補佐官に連絡した。(最近の発言が)韓米関係に役立たないという部分について、厳重に申し上げた」と明らかにした。発言の文脈から、ムン特別補佐官に大統領府の意思を伝えた人物はチョン・ウィヨン国家安保室長とみられる。同関係者は「ムン特別補佐官の米国訪問の過程で、大統領府と事前の調整は明らかになかった」とし、「ムン特別補佐官は、訪米前にチョン・ウィヨン安保室長と会って本人の話をしたが、チョン室長は『個人のアイデアのレベル』として受けとめた」と伝えた。ムン特別補佐官とチョン室長の会合については「初めて会うので挨拶も兼ねて設けられた席であり、米国に行ってどのような話をするか調整する席ではなかった」と重ねて強調した。
大統領府がこのように直接的表現を動員してムン特別補佐官発言と距離を置くことにしたのは、THAAD(高高度防衛ミサイル)配備をめぐる議論の後、韓米間に形成された異常気流を早めに鎮めなければ、政府発足後最初の首脳会談が両国の“足並みの乱れ”ばかり露呈する結果に終わりかねないという懸念のためだ。さらに、「北朝鮮の核・ミサイル活動中止」と「韓米連合軍事演習の規模縮小」の連携の可能性を示唆したムン特別補佐官の発言が「核実験猶予」と「韓米軍事演習の中止」の交換と曲解される余地があるという点も、大統領府の警戒心を膨らませたものとみられる。これは中国の「双中断」の主張と似ている。
文大統領の外交・安保助言グループに参加してきたある中核の関係者は、「北朝鮮が核・ミサイル開発を中止し対話に乗り出すようにするには、それに相応するカードを出す必要があることは事実」だとしながらも、「ただ、ムン特別補佐官の発言が今の時点で米国に行ってする話ではないことは明らかだ」とした。
一方、8日にドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスの会議の途中、韓国内のTHAAD配備の遅れと関連して「それはどういうことだ」と激しく怒ったという一部の報道に関して、大統領府関係者は「十分説明された事案」だと釈明した。同関係者は「米国のマスコミが(大統領府の)THAADに関連するブリーフィングの一部だけを見て、まるで韓国が(THAAD配備を)保留しているように報道し、米国側からの反応が悪かったのは事実のようだ」としながらも、「その後にいろいろなチャンネルを通じて説明をし、その部分については十分解明されたものと理解している」と強調した。