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[ルポ]「今日も眠らず夜を明かした」…THAAD追加搬入を防ぐ人々の“長い夜”

登録:2017-05-03 22:57 修正:2017-05-04 06:18
ルポ・慶尚北道星州“平和区域”の韶成里(ソソンリ) 
 
3日未明「THAAD設備の追加搬入説」広まると 
全国から集まった100人余りが会館で住民と共に 
「国防部への不信…大統領選前に『THAAD既成事実化』を懸念」
今月3日未明、慶尚北道星州郡草田面韶成里会館前の道路の真ん中に住民たちが書いた立て札が立てられている//ハンギョレ新聞社

 「この地域は平和区域のため、THAAD配備関連装備および関係者の出入り自体を禁ず」

 3日午前1時、慶尚北道星州郡(ソンジュグン)草田面(チョジョンミョン)韶成里(ソソンリ)会館前の道路。住民たちがこのように書いた立て札が道路の真ん中に立てられている。住民たちは往復2車線の道路の両側に乗用車数十台を縦列して駐車した。未明の隙をついたTHAAD(高高度防衛ミサイル)装備追加搬入を阻止しようと、小型車だけがやっと通れる空間だけ開けておいた。未明に乗用車を道路に駐車しておくことは、いつの間にか住民たちの日常となった。THAADが配備されるダルマ山(海抜680メートル)にTHAAD装備を搬入するためには、会館を通って2キロ上らなければならない。

 この日、0時前後にTHAAD装備の追加搬入があるだろうというメディア報道があった。さらに、国防部がこれを否定したというメディア報道も出た。しかしこの日未明、韶成里会館周辺には全国から100人を超える人が集まってきた。韶成里会館と周辺の大型テントは人でいっぱいだった。何人かは会館の前庭にテントを張って夜を過ごす準備をした。

 「韓国国防部が住民たちを相手にあまりにも詐欺を働くので、これからは国防部の言葉を信じません。国防部は今日じゃないと言っても、『THAAD既成事実化』を仕上げるために来るかも知れないんです」。星州草田面でマクワウリ農業を営む住民のイ・ジョンヒさん(60)が腹立たしげに言った。「夜明けまで集会をして、警察が配置されたら仕事を中断して駆けつけ、朝は早く起きて農作業もしなければならず、死にそうです。国防部は自分たちは良く眠って、ここの住民は眠れなくさせている」と、彼は声を高めた。

 「昨年夏、THAADが星州邑の星山に来るといわれたときには、目を覚ませば星州郡庁前広場に出ていた。そしてTHAAD配備地域が草田面ダルマ山に変わった以降からは、ほぼ毎日韶成里会館に来ています」。星州大家面(テガミョン)で稲といちご農業を営む住民のパク・スギュさん(54)は「THAADのために日常が崩壊した」とし、このように述べた。彼は「農業をしながら最小限の仕事ばかりするようになった。韶成里会館に来ても、どうしてもしなければならない仕事があると家に帰って仕事をし、また出てくる生活を繰り返している」とした。

3日午前4時、慶尚北道星州郡草田面韶成里会館前の道路脇で人々がストーブの周辺に集まって夜を過ごしている//ハンギョレ新聞社

 何人かの住民はこの日未明、不安そうに韶成里会館周辺を歩き回り、道路をじっと眺めた。道路脇にはストーブ3つが置かれていた。10人余りがストーブの周辺に集まって座り、韶成里会館に向かう道路の方をちらちらと眺めた。道路脇にコンテナで作った教堂では、円仏教の教務10人余りが寝ずに道路の方をじっと見ていた。韶成里会館からダルマ山の方に700メートル行けば出てくるチンバッ橋でも円仏教の教務たちがパイプテントを張り、一晩中平和を祈って祈祷した。

 「韶成里会館にいる人々が最も少なく、眠っている午前5時までがもっとも脆弱でもっとも緊張する時間です。この時まで何もなければ『今日は何事もなかった』という気がして、緊張が解けます」。道路脇のストーブのそばに座っていたウォン・イクソン円仏教教務がこう語った。「先月26日未明、初めてのTHAAD装備搬入の時にTHAADレーダーと発射台2つが搬入され、発射台4つが残っている状態だが、すっかり全部入れられてしまうかと心配です。新しい政権が発足するまでは最大限防げるところまで防ぐつもりです。今ここは市民と警察、軍隊だけがいて政府は存在しない、そんな空間です」。彼はため息をついた。

3日午前5時、慶尚北道星州郡草田面韶成里会館前の道路脇にコンテナで建てられた教堂で円仏教教務らが朝の祈祷をあげている//ハンギョレ新聞社

 同日午前、韶成里会館前の道路には、たった一台の車も通らなかった。午前4時44分になると鶏が鳴く声が聞こえてきた。夜が明けると、瞬く間に暁闇が消えた。韶成里会館と周辺のテントでしばし眠った人たちが一人二人と起きて、道路脇に集まってきた。午前5時、円仏教教務らは朝の祈りをあげた。午前5時38分にお弁当を積んだ小さなトラックがダルマ山に向かっていった。この日、韶成里会館前の道路を初めて通り過ぎた車両だ。このトラックが過ぎ去るのをじっと眺めていた人たちの間で「今日ではなかったね」という言葉が聞こえた。

 大邱(テグ)から来たパク・ジンウォンさん(25)は「今日午前0時前後にTHAAD装備が追加で入ってくるというニュースを見て、韶成里に行って住民たちを助けたいという思いで来たが、幸いにもTHAADの追加搬入はなかった。しかし一方では、後になって私たちがいない時にTHAADが来たら年配の住民たちはどうなるだろうと心配になる」と話した。

 イム・スンブン韶成里婦女会長(61)は「韶成里を訪ねてTHAAD配備の撤回を約束した大統領選挙候補は正義党の沈相ジョン(シム・サンジョン)候補と民衆連合党のキム・ソンドン候補しかいないが、一番好ましく思っている。共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)候補はあいまいな立場を示していま一つだが、当選の可能性が高くTHAAD問題をどうにかしてくれるという期待はしている」と話した。イム氏はまた、「THAADを賛成する自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補や、正しい政党の劉承ミン候補は期待するまでもなく、もはや気に留めずにいる。国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補は保守票を集めようとTHAAD配備反対から賛成の立場に転じたようだが、私たちを利用したようでけしからんと思っている」と話した。

星州/文・写真 キム・イルウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/793280.html 韓国語原文入力:2017-05-03 15:52
訳M.C(2678字)

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