在韓米軍が26日未明、慶尚北道の星州(ソンジュ)ゴルフ場に高高度防衛ミサイル(THAAD)システムの核心装備であるレーダーと交戦統制所、発射台などを奇襲設置したことが確認された。13日後には決まる韓国の次期大統領が米国・中国と追加協議する余地を遮断しようとする韓国と米国政府の「既成事実化」で、国民を欺瞞する行為であり、大韓民国の主権に対する暴挙だという批判が出ている。文在寅(<ムン・ジェイン>共に民主党)・沈相ジョン(<シム・サンジョン>正義党)大統領選候補は強い遺憾を表明し、慶尚北道星州郡の住民たちも抵抗し、大統領選挙の政局に波乱が予想される。
軍消息筋によると、この日米軍は星州ゴルフ場に移動式発射台やエックスバンドレーダー(AN/TPY-2)、交戦統制所をはじめ、発電機、冷却機などTHAADシステムを構成するほとんどの装備を搬入した。この消息筋はハンギョレに「初期運用のための装備は全部搬入された」とし、「迎撃ミサイルだけが搬入されていないと聞いている」と話した。副次的な一部の装備も近く追加搬入が予定され、米軍が望むなら、装備の試験稼動も可能な状態にあるとされる。
星州郡韶成里(ソソンリ)の住民たちの話を総合すると、軍はこの日午前4時43分と午前6時50分の2回にわたり計26台のトレーラーに装備を積んで運び入れた。現場に投入された警察官4000人あまりが、配備に反発する住民たちの接近を妨げ、住民10人あまりが負傷した。
国防部はこの日午前、「THAADシステムの速やかな作戦運用能力を確保するために努力してきた」とし、「今回の措置は利用可能なTHAADの一部の戦力を供与された敷地に設置した」と説明した。米国防省もこの日資料を出し「THAAD配備完了が可能な限り早く実行できるようにするために、韓国政府とともに努力している」と明らかにした。
手続きを無視して装備を先に配備したことに対し、軍当局は「環境アセスメントと施設工事など関連手続きはこれからも正常に進める」とし、問題はないという立場だ。国防部はこれまで、基本手続きを踏んだ後にTHAADを配備すると説明してきた。ムン・サンギュン国防部報道官は17日にも「短期間に終了するのは容易ではないだろう」と明らかにした。16日にはホワイトハウスの外交政策参謀が「(韓国の)次期大統領が決める事案」だと言い、トランプ行政府が速度調整に取り組みはじめたのではないかという観測を生んだ。奇襲配備は予見されなかった。チョン・ウクシク平和ネットワーク代表は「黄教安(ファン・ギョアン)権限代行もトランプ行政府も韓国国民を完全に欺瞞した。大韓民国の主権に対する暴挙だと考える」と話した。
韓米がTHAAD配備を無理に急ぐのは、「大統領選挙前の既成事実化」のためと見られる。キム・ジュンヒョン韓東大学教授は「韓国で政権交代の可能性が高い状況で、米軍主導で(THAAD配備を)既成事実化するためと思われる」と話した。これに先立ち、ある政府筋は「(韓国)政府が要請して急いでいる」と述べた。
トランプ政権にも急ぐ理由がある。就任100日(29日)を控えて支持率が歴代大統領の中で最低水準を記録し、「北朝鮮核問題解決」に突破口を見出そうとしている可能性もある。米中首脳会談以降、両首脳間である程度THAAD問題をめぐり調整がなされたか、両国が対立する状況でトランプが中国に対北朝鮮圧迫を要求する警告のメッセージを飛ばした可能性もある。“首謀者”が韓国政府なら、「明白な大統領選介入」という批判を免れないものとみられる。また米国行政府なら「カールビンソンの虚偽航路変更」論議に続き、トランプ政権の“マイウェイ”式政策決定が再び俎上に上がるだろう。