在韓米軍が26日未明、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備予定地である慶尚北道の星州ゴルフ場に発射台とレーダーなどの核心装備を奇襲的に設置した。事実上、THAADの配備が「完了段階」に達したと見られる。住民の同意と説得過程はなく、環境影響評価(アセスメント)など最小限の行政的手続きさえも無視した。最近まで韓米当局が相次いで「THAAD配備は新政府のスタート以後に」先送りするような話をしたので多少安心していたが、まるで軍事作戦のように夜陰にまぎれて電撃配備を完了するとは、国民の信用を裏切ったわけだ。
特に大統領選挙をわずか13日後に控えた時点でなされた今回の行動は、韓国に新政権が樹立されてもTHAAD配備を取り返しがつかない状態にしようとする「先取り」としか解釈する余地がない。「THAAD配備」は、朴槿恵(パク・クネ)政権が国民的合意もない状態で強引に押しつけた代表的事案だ。新政権がスタートすれば国民的共感を基に国会での議論を経て、米国・中国とも追加協議する過程を踏むのが正常な姿だ。
ところが、奇襲配備を通じて米国はこうした動き自体を源泉封鎖してしまった。同盟を全く配慮しない振る舞いだ。地域住民はもちろん、THAAD配備に反対する韓国国民の反感も一層高まるだろう。韓国国防部は「環境影響評価と施設工事などの関連手続きは正常に進める」と話したが、すでにTHAAD配備がほとんど完了した段階で実施する環境影響評価などに果たして意味があるのか、疑問を感じる。
さらに、16日マイク・ペンス米副大統領が訪韓した時、ホワイトハウスの外交政策参謀が「THAAD配備は韓国の新しい大統領が決めなければならない」と話したことがある。米国政府はわずか数日後にこの発言を覆したか、あるいはその時意図的に配備強行の動きを隠したと見ざるをえない。最近の航空母艦カールビンソン号航路変更に関する虚偽論議に続き、朝鮮半島政策に対する不信をトランプ行政府自らが高めている。
今回配備されたTHAAD装備の射撃統制レーダーは、中国政府が最も問題視する「エックスバンドレーダー」だ。中国は直ちに「(朝鮮半島の)緊張を一層刺激するもの」として「関連施設の撤去を強力に求める」と明らかにした。最近「4月危機説」と言われるまでに高まった朝鮮半島の緊張を和らげるために、中国は核実験自制を強く要求するなど、北朝鮮を圧迫する態度を取った。ところが今回のTHAAD装備搬入で朝鮮半島の緊張は再び高まり、米中関係も悪影響を避けられない。
米国は今からでもTHAAD配備を中断し、5月9日の大統領選挙以後にスタートする新政府と追加協議をすべきである。大統領選挙候補者らもTHAAD配備に大統領選挙での有利不利により接近してはならない。朝鮮半島情勢の安定という大きな枠組みで国民に明確な代案と立場を提示することを願う。