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[記者手帳]憲法裁・特検の“偽ニュース”は誰が作るのか

登録:2017-02-17 23:08 修正:2017-02-18 07:24
憲法裁判所と特検を狙った“偽ニュース”が猛威を振るっている。見かけはもっともらしい解説まで盛り込まれているが、弾劾審判と捜査対象者たちに有利だった内容だという共通点がある。写真は14日に開かれた朴槿恵大統領弾劾審判14回目の弁論期日現場=共同取材団//ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パク・クネ)特検と朴槿恵弾劾審判をめぐり“偽ニュース”が飛び交っている。大型事件が発生すると、いつも様々な噂が流れがちだが、今回は異様だ。とんでもない噂の中では、取材記者たちですら聞き耳を立てるようなものまである。

 特検チームがサムスン電子のイ・ジェヨン副会長の令状再請求をめぐって大喧嘩をしたという噂が代表的だ。パク・ヨンス特別検察官と4人特別検察官補が集まった会議で、令状再請求を主張する側と反対する側が怒鳴り声を響かせながら、激しく争ったという内容だ。争った当事者が誰であり、どのような話を交わしたのか、その内容が非常に具体的なので、事実かどうかを確認せずにはいられなくなる。「パク・ヨンス特別検察官は元々声が大きい(笑)。自由な討論を経るのが、民主的な意思決定ではないか。それを喧嘩をしたというのは、特検を揺さぶろうとする陰謀だ」、「現職の大統領を捜査する前例のない事件であり、捜査範囲も膨大だ。検察の単一事件でも検事たちの間で意見の相違があるのに、このように重要な事件で意見の相違がないわけがない」と特検チーム関係者は語っている。喧嘩したという噂の実体は正常な“意思疎通”の過程に過ぎず、それ以上でも以下でもないという説明だ。

 憲法裁判所を狙ったものもある。パク・ハンチョル憲法裁判所長の退任による「8人裁判官」体制で、2人の裁判官が朴大統領弾劾訴追を棄却するという心証をもっているというのが骨子だ。10回以上行われた裁判で証人や代理人側に彼らがほとんど質問をしなかったというのが、その根拠だ。他の裁判官たちが朴大統領側の証人らに対して非常に攻撃的な尋問をしたのとは明らかに異なるという。大統領弾劾に対する否定的な見解が自然に尋問態度に表れているということだ。また、パク・ハンチョル前所長が退任直前に出席した裁判で、「3月13日(イ・ジョンミ裁判官退任日)以前には判決が行われるべきだ」という発言をしたのも、“2人の沈黙派”を狙ったものという噂も流れている。イ裁判官まで退任して「7人裁判官体制」になると、2人が反対するだけで、弾劾訴追が棄却される。パク元所長がこのような事態を防ぐため、朴大統領側の反発が予想されるにもかかわらず、発言を強行したという噂だ。

 もっともらしい解説まで添えられたこれらの噂にはどのくらいの信憑性があるだろうか。ある憲法裁の関係者は「彼ら(2人の裁判官)は、他の裁判の時も寡黙な人たちだ。彼らのほかにも重複する質問を避けるため、尋問を控える人もいる。まだ一度も評議を開いたことがなく、裁判官たちが自分の心証を示す機会がなかったのに、誰がどのような心証を持っているのかをどうやって知ることができるだろうか」と語った。証人尋問に沈黙を守ったからといって、これを棄却の心証を裏付けていると見るのは話にならないということだ。

 憲法裁と特検をめぐるもっともらしい“偽ニュース”を詳しく見てみると、ひとつの共通点がある。弾劾審判と捜査対象者たちに有利な内容だという点だ。イ・ジェヨン副会長の令状再請求関連の噂は、特検チームがチェ・スンシル国政壟断の事件の本質ではなく、サムスンを狙って落とし穴に陥るという方向に広がっている。今回の事件の“被害者”であるサムスンを狙ったことで、むしろ朴大統領の処罰まで困難にする自滅策におぼれているということだ。サムスンが収賄容疑を脱するために、積極的に防御をすることになれば、結果的に朴大統領の収賄の疑いまで晴らすことになるというシナリオだ。しかし、賄賂供与の容疑で再請求されたイ副会長の拘束令状が、結局17日に発給されたことからすると、かえって特権の正攻法が正しい選択だったと思われる。

 憲法裁の“沈黙派”の噂は実際、朴大統領の代理人団に影響を与えているようだ。朴大統領側がどうやってでも弾劾審判判決をイ・ジョンミ裁判官退任後に引き延ばそうと躍起になっていることを見れば、なおさらである。今月16日、憲法裁判所が最終弁論期日を24日に決め、3月13日以前に判決が下される可能性が高くなったことに対し、朴大統領側代理人団はとんど“放心状態”のような反応を見せた。

 “偽ニュース”を作るのは、それだけ状況が不利と判断しているからだ。偽物と本物を区分できる能力がいつになく切に求められる。

イ・チュンジェ社会エディター席法曹チーム長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/783156.html 韓国語原文入力:2017-02-17 21:16
訳H.J(2091字)

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