朴槿恵(パク・クネ)大統領が任期短縮に言及した3回目の国民向け談話以降の政治日程は依然として不透明だ。いかなる障害物が潜んでいるかは、始まるまでは誰にも分からない。すべての可能性は確率として存在するだけだ。
談話発表の翌日の30日、野党3党は代表会談を開いて、与党との交渉には一切応じず、予定どおり弾劾訴追を進めることで意見の一致を見た。与野党交渉による朴槿恵大統領の任期短縮と「秩序ある退陣」の可能性はひとまず消えた。残されたのは弾劾訴追につながる道だけだ。弾劾訴追は12月2日よりも9日に処理される可能性が高いとみられる。決定権を握っているセヌリ党の非主流勢力に時間を与えなければならないからだ。12月2日には、来年度予算案も処理しなければならない。
チョン・ジンソク院内代表などセヌリ党の一部は12月9日以降に弾劾訴追を延期しようと躍起になっている。しかし、3回目の談話に怒った民心に逆らうことは容易ではなさそうだ。弾劾を求める民心はすでに忍耐の限界を越えた。12月3日にもろうそく集会が開かれる。
国会の国政調査が事態に影響を及ぼす可能性も考えられる。12月6日の第1回聴聞会には財閥トップらが登場するほか、7日に開かれる第2回聴聞会にはチェ・スンシル氏をはじめ今回の事件の主役たちが証人喚問を受ける。テレビは感性的なメディアだ。これまで国民は、チェ・スンシル氏やチャ・ウンテク氏などの言葉に耳を傾けたことも、表情をじっくり見たこともなかった。聴聞会を通じて生々しく伝わる彼らの言葉と行動は、怒った民心をさらに燃え上がらせるかもしれない。
様々な事情を総合すると、異変がない限り、12月9日、国会で弾劾訴追案が可決される可能性が高いとみられる。弾劾訴追案が可決されれば、朴槿恵大統領は職務が停止される。朴槿恵大統領の暴走はそこで止まることになる。しかし、政治的には今とは全く異なる局面が展開されるだろう。碁で石を盤上に置いた瞬間、頭の中で計算したこととは全く異なる場面が広がるのと同じだ。
最も懸念されるのは、今よりはるかに複雑な状況を迎えることになるということだ。混乱の最大の原因は弾劾審判の結果の不確実性だ。どんな結論が出るか、今のところ全く予測がつかない。弾劾決定には裁判官6人の賛成が必要だ。裁判官5人が賛成しても弾劾は棄却される。憲法裁判所裁判官たちの政治的性向と議決定足数を考えれば、弾劾を確信することはできない。弾劾が棄却されれば、朴槿恵大統領は免罪符を与えられ、華やかに復活することになるが、そうなれば大韓民国は誰の手にも負えない"民乱の時代"を迎えるかもしれない。
弾劾が認められたとしても、時期が問題だ。2004年、憲法裁判所は63日間で結論を下した。今回はどのくらいかかるか分からない。2~3カ月かかると仮定すると、2月か3月に弾劾審判が行われ、大統領選挙は4月か5月に実施されることになる。与野党の長老たちが用意した「4月に退陣、6月に大統領選挙」の日程より繰り上げられるわけだ。もちろん憲法裁判所の弾劾審判中に朴槿恵大統領が退陣すると、大統領選挙がさらに前倒しになる。
弾劾審判が行われている間、各政党と政治家は、何をすべきだろうか。大統領選挙の準備や改憲に向けた論議、政界再編を同時に進めることになる。しかし、これらを同時にきちんと行うことは不可能だ。様々な意見や案が飛びかい、大騒ぎになるだろう。第一に、大統領の弾劾が確定していないのに、各政党が大統領選挙候補の予備選挙を行う理由も大義名分もない。各政党の大統領選挙候補は、政治交渉や候補者たちによる調整によって決まる可能性が高い。
第二に、改憲は難しい。改憲には国会在籍議員の3分の2以上の賛成が必要だ。共に民主党の文在寅(ムン・ジェイン)元代表と秋美愛(チュ・ミエ)代表は、改憲に否定的だ。金武星(キム・ムソン)、孫鶴圭(ソン・ハッキュ)、金鍾仁(キム・ジョンイン)、朴智元(パク・チウォン)などが"反文在寅連帯"を結成して、改憲を実現させることができるだろうか? 可能性が低い。第三に、政界改編は可能である。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は1月に帰国する。再執権を狙うセヌリ党の親朴(槿恵)系と非主流勢力はどのような形であれ保守の再構成に乗り出すだろう。野党が最も恐れるシナリオだ。まさに大混乱の時代が到来しようとしている。