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韓国国定教科書公開…やはり「朴正煕美化・親日附逆を縮小」

登録:2016-11-28 21:09 修正:2016-11-29 07:48
経済開発5カ年計画など詳細に紹介… 
5・16革命公約まで盛り込み 
ニューライト史観に立ち1948年8月15日は 
「大韓民国政府樹立」ではなく「大韓民国樹立」 
イ・ビョンチョル、チョン・ジュヨンの名前まで 
「親財閥」叙述も目立つ
今月28日、政府世宗庁舎の教育部で公開された国定歴史教科書現場検討本に「大韓民国樹立」という表現が使われている。教育部は大韓民国の正統性を明確にするために「大韓民国政府樹立」という表現の代わりに「大韓民国樹立」と記述したと主張しているが、進歩と保守間の激しい攻防が続くものと予想される/聯合ニュース

 朴槿恵(パク・クネ)政権が国民大多数の反対にもかかわらず、国定歴史教科書を28日ついに公開した。朴正煕(パク・チョンヒ)政権の成果を強調し、親日附逆派の親日行跡を縮小するなど、偏向した叙述が明らかになり国定教科書に対する反対世論が一層高まると見られる。

 イ・ジュンシク副首相兼教育部長官とキム・ジョンベ国史編纂委員長は同日、政府ソウル庁舎で記者会見を行い「今は色々な種類の歴史教科書があるが、大部分が偏向した理念により叙述されるなど、正しい歴史教育がなされていない」と主張して、国定歴史教科書の現場検討本を公開した。現場検討本は完成本に先立ち各界各層の意見を取りまとめるために製作する試案形態の教科書だ。教育部は同日、中学校<歴史1> <歴史2>と高校<韓国史>教科書の計3冊の国定教科書を公開した。

 イ副首相はこの日、教科書を公開して「歴史的争点に対してバランスの取れた叙述を行った」と明らかにしたが、歴史教科書では、これまで歴史学界と教育界が憂慮した通りニューライト系列の「建国史観」を受け入れ、朴正煕政権に対する肯定的叙述を増やし、また親日附逆派に対する記述は減らしたことが分かった。また、労働者に関連する叙述は大幅に減らし、財閥会長の業績を詳細に記述する企業寄りの指向も目立った。

 同日公開された国定歴史教科書の最も著しい特徴は、朴正煕維新体制の陰の部分より成果を強調することに重点を置いたという点だ。高校<韓国史>教科書を見れば、260~269ページまで何と10ページにかけて朴正煕政権を詳しく説明し、その“業績”を評価する傾向が明確だった。「政府は輸出振興拡大会議を毎月開催して、輸出目標達成の有無を点検するなど輸出増大のために努力した。その結果、第1,2次経済開発5カ年計画期間に輸出は年平均36%の割合で急激に増えた。朴正煕政権は持続的な産業化と経済発展を推進するためには、科学技術研究開発に対する中長期的投資と支援が重要と判断し、多様な科学技術振興政策を樹立した」のような叙述が代表例だ。

 特に、中学校<歴史2>には、朴正煕政権が1963年に製作し配布した「経済開発5カ年計画図表」まで詳細に載せた。この図表には新たに建設される鉄道と道路、分野別主要生産目標、保健家族計画、国土建設現況などが図とグラフで表現されている。高等学校<韓国史>教科書には5・16クーデター勢力が前面に掲げた「反共を国是の第一とし…」で始まる6項目の「革命公約」まで載せられた。

 セマウル運動も詳しく盛り込まれた。高校韓国史の268ページには「維新体制の維持に利用されたという批判も受けた」としつつも「セマウル運動は、勤勉、自助、協同精神を強調し、全国的に広がり道路および河川の整備、住宅改良など農村環境を改善する成果を上げた。2013年ユネスコはセマウル運動関連記録物を世界記録遺産に登載した」と叙述した。

 一方、維新体制に対する批判的部分は短く叙述するにとどまった。高校韓国史の265ページでは「維新体制の登場と重化学工業の育成」という題目の下に「維新憲法は名目上、言論・出版・集会・結社の自由および労働3権などの社会的基本権条項を維持していたが、このような基本権は大統領の緊急措置によって制限された」と説明されただけだ。

 親日派に関する記述の部分は大幅に縮小された。中学校<歴史2>には、親日派に対する内容は僅か10行に過ぎない。親日附逆者として実名が挙げられたのは李光洙(イ・グァンス)や盧天命(ノ・チョンミョン)、崔リン(チェ・リン)だけだった。高校韓国史では「親日派」の代わりに「親日人士」「親日勢力」と記述された。親日派の親日行跡も「李光洙、朴英煕(パク・ヨンヒ)、崔リン、尹致昊(ユン・チホ)、朴興植(パク・フンシク)ら多くの知識人、芸術家、宗教人、経済人が親日活動の先頭に立った」と記述し、彼らが具体的にどんな親日附逆行為をしたかについては詳しく説明せずにざっとまとめて「徴兵勧誘、親日団体座談会に積極的参加」などと説明されていた。

 それに比べ、現行の検定教科書の中から金星出版社の韓国史教科書の内容を見れば、「李光洙や崔南善(チェ・ナムソン)のような著名な文人は、朝鮮民衆に徴兵と学徒兵に志願することを積極的に薦めるなど、自分たちの文学的才能を朝鮮青年を戦場に出て行かせることに利用した。洪蘭坡(ホン・ナンパ)や玄濟明(ヒョン・ジェミョン)らは日帝の侵略戦争を称賛する歌を作曲し、金殷鎬(キム・ウンホ)や金基昶(キム・ギチャン)は日帝の侵略戦争を擁護する絵を描いた。和信百貨店社長の朴興植をはじめとする親日附逆資本家は、国防献金を出したり飛行機や武器を購入し日本軍に献納した」などとそれぞれの親日附逆行跡を具体的に記述してある。

 最近、最も大きな争点になってきた1948年8月15日については「大韓民国政府樹立」ではなく「大韓民国樹立」と記述された。イ・ジュンシク副首相は「大韓民国はある一瞬にして建てられたのではなく1919年3・1運動をはじめとする私たちの民族の独立と建国のためのすべての努力が光復(解放)を経て、1948年に大韓民国政府が構成されたことによって完成された」とその理由を説明した。これはニューライトなど保守の一角で一貫して主張してきた建国史観であり、「1919年3・1運動で建設された大韓民国臨時政府の法の正統を継承する」という憲法精神を否定する反憲法的見解という批判が提起されている。また、1948年以前の臨時政府と抗日運動の歴史と意味を退色させ、親日附逆勢力までを建国功労者と認定し、親日派に免罪符を与えようとする意図が含まれているという指摘もある。

 「民主主義」という単語を「自由民主主義」に変えて使うニューライト史観も国定歴史教科書にそのまま使われた。中学校歴史2の136~137ページには「自由民主主義は戦争の廃虚を踏んで、どのように発展したのだろうか」という主題の下に記述された内容を見れば、一貫して「民主主義」が「自由民主主義」と記述されている。

 親財閥的な叙述も目立った。高校韓国史の267ページには「韓国の代表的な企業家」が叙述されている。ユ・イルハン柳韓洋行設立者と、イ・ビョンチョル会長、チョン・ジュヨン会長の3人を説明したが、イ会長については「1980年代、半導体産業に投資して韓国が情報産業技術先進国へ跳躍することに寄与した」と書き、チョン会長については「大規模造船所の建設資金を用意するため、当時紙幣に描かれた亀甲船を英国投資銀行に見せ『私たちはすでに1500年代に鉄甲船を作った』として説得したというエピソードは有名だ」と紹介している。これまでは財閥の会長が歴史教科書に実名で登場したケースは殆ど無かった。

キム・ギョンウク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/772250.html 韓国語原文入力:2016-11-28 15:09
訳J.S(3172字)

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