検察が農民ペク・ナムギ氏の死亡原因の一つとして「赤いレインコート男性加撃説」を念頭に置いて捜査してきた事実が確認された。この主張は、イルベ(日刊ベスト貯蔵所)など一部の極右オンラインコミュニティが流布したもので、警察さえ公式に否定している論理だ。
■検察押収捜索の目的は「赤いレインコート」
12日共に民主党のパク・ジュミン議員がソウル大病院に提出させた検察の押収捜索検証令状によれば、検察は「被害者ペク氏が放水車の放水を直射されて倒れた事実、被害者が急性外傷性硬膜下出血などの傷害を負い現在意識不明状態である事実は認められます」としながらも「被害者(ペク・ナムギ氏)が放水を直射されて倒れた直後、被害者を救助しようとしていた赤色レインコート着用者が倒れて被害者に衝撃を加えた事実があり、被害者の意識不明などの傷害結果に影響を及ぼした原因行為が何であるかは明確でない」と明らかにしている。この令状は、ペク氏が亡くなる前の先月6日にペク氏の診療記録簿、診療チャート、看護日誌、検査記録紙などの義務記録を押収するために発行されたものだ。
■専門家、「赤いレインコート」説は荒唐無稽
「赤いレインコート」説は、ペク氏が倒れるとすぐに救護のために人々が集まり、その中の赤いレインコートを着たある男性が背中を放水銃水に撃たれ、ペク氏の上に倒れた場面を根拠としている。極右オンラインコミュニティのイルベは事件発生直後からこのような主張を流布してきた。セヌリ党のキム・ドウプ、キム・ジンテ議員は昨年11月、キム・スナム検察総長人事聴聞会で、「赤いレインコート」説を提起して捜査を促した。今月11日には同じくセヌリ党のナ・ギョンウォン議員が国政監査で公開言及して再び注目された。
だが「赤いレインコート」説は、事実関係に基づかずあきれた推定に近い。国家人権委員会は事故の二日後である昨年11月16日、ペク氏の主治医であるソウル大神経外科のペク・ソンハ科長を調査した。この調査でペク科長は「陥没部位を調べたところ単純外傷ではない。高いところから落ちた人に現れる外傷」と話した。単純な加撃や衝撃では発生しえない負傷という意味だ。「赤いレインコート」説を主張する人々は「ペク氏が鼻血を流した」として「一撃を食らってケガしたもの」と主張する。だが、ペク科長はこの調査で「鼻骨などの損傷は観察されなかった。頭蓋骨骨折による出血が鼻腔や咽喉部に流れることがある」として、ペク氏の鼻血は脳出血によるものでありうると明らかにした。
■警察も「放水銃による外傷」を認定
「赤いレインコート」説は、警察も公式に否定している。警察は5月9日、ペク氏の遺族が国家を相手に提起した民事訴訟裁判所(ソウル中央地裁民事42部)に提出した「答弁書」で、ペク氏の外傷が警察の放水銃によるものであることを認めた。答弁書によれば、「被告大韓民国は原告ペク・ナムギが放水車の放水に撃たれて外傷性硬膜下出血という負傷を負った事実は認める」と記されている。警察は「ただし、これは不法デモを鎮圧するための正当な職務執行中に起きたこと」と主張した。
警察は「放水銃に催涙液を混合し放水したことで危険が加重された」という遺族の主張に反論して、繰り返し「放水銃が原因」という点を認めもした。警察は答弁書で「外傷性硬膜下出血は、外部の物理的衝撃(圧力)を原因として、脳の硬膜とくも膜下の間に出血が発生したこと」とし「すなわち、放水の圧力がその原因であって、催涙液がその原因になることはありえない」と反論した。ペク・ナムギ弁護団のチョ・ヨンソン弁護士は、「医師たちの所見と、事件当時の映像を通じて事実ではないことを十分に確認できるにもかかわらず、捜査機関が「赤いレインコート」説を持ち出し続けるのは、警察の責任を曖昧にしようとする焦点ボカシ」と批判した。「正しい社会市民連帯」などの保守団体10個所余りは7日、ソウルの鍾路(チョンノ)警察署に「赤いレインコート」男性を捜査してほしいという捜査依頼書を提出した。警察関係者は「これに対する捜査はまだ何も進展していない」と話した。