「先輩がたに医師としての道義を尋ねます」
ソウル大学医学部の在学生102人が、ソウル大学病院が発行したペク・ナムギ氏の死亡診断書について疑問を提起し、先月30日に実名で出した声明のタイトルだ。1日には「ソウル大学医学部同窓生が後輩らの呼びかけに応答します」という卒業生同窓365人の実名の声明が続いた。現職のソウル大学医科大学教授も名を連ねた。
ソウル大学医学部の構成員らが病院の問題を巡り外部に公開声明を発表したケースはほとんどない。さらに医大は他のどの単科大学よりも階位序列の強いところだ。インターン、レジデントのプロセスを踏んでいかなければならない学生たちと現職の医師らが自分の名前をかけて問題提起をしたということは、それだけ今回の死亡診断書の内容が疑問だらけであることを示している。彼らは「ペク氏の死亡診断書は基本的原則に反する」としたうえで、「国民が最も信頼する病院」で学んだという自負心にひびが入ったと表現した。
■医協、統計庁の指針にも違反
ソウル大学医学部在学生102人は声明で「放水銃という誘発要因がなければ、故ペク・ナムギ氏は昏睡状態に陥ることはなかったため、故人の死は明白な外因死に該当する」とし、「職業的良心が侵害された事案に対し沈黙しないことを切に求める」と書いた。学生たちの要請に対して、病院ではなく同窓生らが先に応答した。1日に発表された同窓生らの声明は一部のソウル大学医学部の卒業生が参加しているカカオトークのチャットルームで草案を作成し、署名を受けたという。彼らは「故ペク・ナムギ氏の死亡診断書は、統計庁と大韓医師協会が提示した原則に反する」とし、「外傷の合併症で疾病が発生し死亡した場合は外因死になる」と書いた。
二つの声明書に出た統計庁と医協の指針内容は、以下の通りだ。2014年、統計庁が死亡関連統計の正確性のために発行した「死亡診断書作成マニュアル」には、死亡原因は医学的因果関係順で直接的な死因から記載すること▽症状および兆候だけの記載は禁止▽具体的な用語の使用▽「死亡の種類」は先行死因基準で選択すること、などの内容が盛り込まれている。
ペク氏の死亡診断書によると、死亡原因には4つの欄のうち上から3つの欄がそれぞれ心肺停止、急性腎不全、急性硬膜下出血と書かれている。直接死因は「心肺停止」となっているが、統計庁マニュアルには「呼吸停止、心肺停止、呼吸不全、心臓停止など死亡に伴う現象だけを記載してはならず、具体的な疾病名を使用すること」とされている。死亡の種類は「病死」「外因死’「その他不詳」のうち「病死」と表示されているが、マニュアルには外傷の合併症で疾病が発生し死亡した場合、死亡の種類は「外因死」としなければならないとされている。「病死」は疾病以外に他の外部要因はないと医学的に判断される場合だけを選ぶことになっている。
医協が昨年発刊した「診断書等作成・交付指針」にも同じような内容がより具体的に書かれているが、ソウル大学病院が「外因死」の代わりに「病死」と書いた理由を推測できるような部分もある。指針には「外因死であるならその事故の種類が普通の交通事故なのか、中毒、墜落、溺死、火災なのかを確認して選択し、その次に意図性の有無として意図がない事故、つまり自己過失や、天災、他の人の行為である場合も殺人や傷害の意図がない行為によるものなのか、もしくは自殺や他殺なのかどうかを選択する」という内容が表示されている。病院側が病死と書けばそれ以上記載する内容はないが、外因死と書けば加害者や殺人者を特定しなければならないという負担を抱えることになる。
■隠蔽・外部介入疑惑、ソウル大学病院は応答すべき
死亡診断書をめぐる論争は担当主治医であるレジデントが遺族側に死亡原因の記載などについて「自分の権限がない」と話したことが知られ浮上した。ペク氏の娘のペク・トラジさんは「死亡原因と病名などについてレジデントが『副院長や指導教授が協議した内容通り書かなければならない』と言った」と明らかにした。ペク氏が応急室に入った当初、コンピュータ断層撮影(CT)などの資料を通じてすでに外因死であることが明白であったという事実が再確認され議論は大きくなった。病院側の過ちであるなら訂正すべきであり、故意であれば外因死が明白な事案について事件隠ぺいの疑惑や他の介入がなかったかを明らかにすべきだという指摘が出ているのも、そのためだ。朴槿恵(パク・クネ)大統領の主治医を務め、5月にソウル大学病院の院長に任命されたソ・チャンソク院長らは死亡診断書の作成経緯などと関連し、14日に国政監査に証人として採択されている状態だ。
ソウル大学医学部卒業生である現職の医師らは、ペク氏の死亡診断書をめぐる議論を見て「恥ずかしさと慚愧の念を覚える」と表現した。卒業生の声明書に名を連ねたソウル大学病院臨床講師のイ・ジュンヒ氏(精神健康医学科・2011年卒業)は「ソウル大学病院は他の病院の基準となる病院だ。政治的議論から離れ、医師としての専門性に照らしてみて、病院の立場としても歴史に残ることなら、誤りは正すべきだと思う」と指摘した。仁荷大学医学部のファン・スンシク教授(予防医学・2001年卒業)も2日、フェイスブックに「死亡診断書の哲学が言及される時代は退行の時代」だとし「故ペク・ナムギ氏の死亡原因の議論がいくら増幅されても、国家暴力による犠牲者だという事実は変わらない」という文を書いた。
パク・スジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)