裁判所は故ペク・ナムギ氏の遺体に対する解剖検査の令状を、さまざまな条件付きで初めての形式で発行し、「強制解剖」が可能かどうかをめぐり論議が起きている。法曹界からは令状は無効だという主張も出ている。
ソウル中央地裁は28日午後8時頃、「解剖検査をするとしても客観性、公正性、透明性が確保されるように行われなければならない」とし、検察が2日前に再請求した遺体の解剖のための押収捜索検証の令状を発行した。裁判所は令状に異例の6つの条件をつけ、解剖場所は遺族の意思を確認し、遺族が希望するならばソウル大学病院で行わなければならない▽遺族が希望する場合、遺族が指名する医師2人、弁護士1人を解剖に参加させなければならない▽身体毀損は最小限にしなければならない▽解剖検査の過程を映像で撮影しなければならない▽遺族に解剖検査の手続きと内容について十分な情報を提供しなければならない▽令状は夜間でも執行することができ、有効期間は10月25日まで、となっているという。
これに対し、遺族と「農民ペク・ナムギ氏への国家暴力真相究明と責任者および殺人政権糾弾闘争本部」は令状発行の2時間後に記者会見を開き、「故人の遺体に再び警察の手がかかることは絶対にさせたくないという遺族の立場を表明する」とし、解剖反対の意思を改めて明確にした。「警察が不意打ちで解剖するのではないか」と懸念した市民らは遺体が安置されているソウル大学病院に集まり、夜を徹して警察力の投入に備えもした。
さまざまな条件がついた異例な令状の形式のため、万一令状の有効期間満了日までに遺族が同意しない場合は、令状を強制執行できるのかという問題が浮上している。法曹界の一部からは、遺族との合意がないまま解剖すれば違法になるという解釈も出ている。ソウル中央地裁の関係者は29日、「令状発行の趣旨は遺族と手続きや方法を協議し、客観性、公正性を担保しなければならないということだ。警察が遺族ときちんとした協議をせずに令状を執行した場合は、不適法な執行となりうる。令状執行が不適法であれば遺族らが準抗告を申立て、救済を受けられる」と話した。
令状自体が無効という主張も出ている。イ・ジョンヨル元裁判官はこの日、自分のフェイスブックに掲載した文で「法律専門家の間でも令状の解釈が異なり、むしろ紛争が助長されている。紛争解決という裁判所の基本責務を忘却した判断」とし、「令状に条件を付すことができる法的根拠が明らかではない。令状は無効だ。執行されてはならない令状だ」と明らかにした。
しかし、警察は強制執行が可能だという立場だ。警察の高位関係者は「条件付きとはいえ、令状は基本的に強制性を帯びている。最後まで遺族が協力しなければ、強制執行することができる」と話した。続けて「令状執行はじっくりと行う。時間はあるので遺族の協力を最大限得て、裁判所の令状発行の主旨を充分に生かす方法を模索している」と話した。警察はこの日午後4時50分頃、闘争本部側に「解剖検査関連の協議を進めたいので、代表者、協議日時、場所を来月4日までに知らせてほしい」との立場を伝えた。遺族と対策委側では、対応方針を検討している。民主社会のための弁護士会・故ペク・ナムギ弁護人団の団長であるイ・ジョンイル弁護士は「条件付き令状が刑事訴訟法に基づくものなのか検討中だが、強制的な解剖を避けることができるという方向で意見がまとまっている。ひとまず警察から令状を受け取り、問題点を検討する」と明らかにした。