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[ルポ] ソウル地下鉄駅の天井清掃は

登録:2016-09-06 22:54 修正:2016-09-15 05:11
移動式踏台から落下医 
移動中に倒れ負傷は日常茶飯事 
ヘルメット着用と言われるが 
視野が隠され危険 
線路の路盤清掃で事故の危機 
外注業者は安全強化に消極的
ハンギョレのチョン・ウンジュ記者が今月3日、ソウルのある地下鉄駅で清掃労働者がホームの天井清掃時に使う移動式踏台に乗り、天井に手をのばしている=チョン・ウンジュ記者//ハンギョレ新聞社

 4月2日午後1時頃、ソウル地下鉄7号線の加山デジタル団地駅で50~60代の女性清掃労働者3人が駅の天井を清掃中に移動式踏台から落ちて打撲傷を負った。移動式踏台は鉄パイプと踏台を組み合わせ臨時に設置したH型の空中構造物だ。清掃労働者2人が構造物の下を持って移動させたところ、タイヤが視覚障害者用の歩道ブロックに引っかかり構造物が前方に転倒した。鉄パイプの一部が外れ倒れた清掃労働者の脚を襲った。骨折はなかったが内出血は数カ月間消えなかった。

 これらの清掃労働者は、ソウル地下鉄の5・6・7・8号線を清掃する「ソウル都市鉄道グリーン環境」(グリーン環境)所属だった。ソウル都市鉄道公社の子会社であるグリーン環境は「事故当時、ヘルメットを着用して折らず、3人が一度に構造物上に上がった」として、負傷した清掃労働者5人全員を懲戒委員会に回付した。グリーン環境労組の上級団体である民主労総女性連盟のイ・チャンベ委員長は「九宜(クイ)駅のホームドア事故のように、守れもしないマニュアルを作っておき、これに違反したからと懲戒しようとしている」と批判した。

 地下鉄駅の天井を清掃する「高所作業」は春と秋に一カ月ずつ行われる。地下鉄1・2・3・4号線を清掃するソウルメトロ環境(メトロ環境)は、専門担当チームを編成し、清掃を実施しているが、グリーン環境では50~60代の女性清掃労働者が自ら行っている。午前と午後の勤務組が揃って仕事をする昼の2時間に清掃労働者は横2メートル、縦1メートル大の構造物を移動させながら駅の天井を磨く。

 記者は今月3日、ある地下鉄駅で高所作業用の構造物に自分で乗ってみた。構造物のハシゴは幅が狭くしかも長くて、上がるのはとても大変だった。その上、鉄パイプで組み立てられた踏台は、古くてグラグラしていた。からだを支える場所もなかった。構造物の踏台にかろうじて上がり、腕を伸ばしてみたが天井の高い部分には届かなかった。駅の天井をすべて清掃するには、この構造物を数百回移動させなければならない。

 会社側は清掃する際には全員が構造物から降りた状態で構造物を移動させ、再び上がって作業をするよう指示しているが、現場の労働者たちは「現実的に不可能」と口をそろえる。清掃労働者パク・チヨンさん(仮名・62)は「ガタガタする鉄板にバケツを逆さに置き、片足でそれを支えながら麻袋のぞうきんで天井を磨かなければならない」として「清掃時間が一日2時間と決まっているうえに構造物のハシゴが危険なので、清掃する人が座っている状態で構造物を移動させるしかなかった」と話した。また「会社の指示に従えば、一カ月で地下鉄の駅全体を清掃できない」と付け加えた。ヘルメットをかぶらない理由については「しょっちゅうずれて、視野が遮られてかえって危険だ」と抗弁した。最近では会社が保護眼鏡とマスクまで着用しろと言っている。記者もヘルメット、保護眼鏡、マスクを着用してみたが、すぐに熱い息が顔を覆って、息が詰まった。

 ヒヤリ事故を経験した清掃労働者は他にもいる。7月24日夜0時9分頃、ソウル地下鉄6号線月谷(ウォルゴク)駅の清掃労働者5人は、ホームのスクリーンドアを開け、線路に降りて路盤清掃を準備していた。グリーン環境は月に二回ずつ地下鉄駅の路盤を水で清掃するよう指示している。メトロ環境では行わない清掃作業だ。この日、1人の清掃労働者は夜光チョッキを着て線路の両端に蛍光棒を設置した。残りの4人はホーム上で清掃装備を片付けていた。その時、運行を終えて回送してきた電車が月谷駅に入ってきた。機関士が蛍光棒を見て急ブレーキをかけたため人命被害はなかったが、ややもすれば大事故につながるところだった。相次ぐ安全事故にもかかわらず、ここでは12日から秋季高所作業が予定されている。線路の路盤清掃も変わりなく続いている。イ・チャンベ委員長は「日本の地下鉄では、高所作業や電車清掃を専門担当する専門家と最新の機械があり、清掃労働者は日常的な清掃作業だけを行っている」として「私たちも専門担当チームを編成し、人災を予防しなければならない」と話した。

チョン・ウンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/760086.html 韓国語原文入力:2016-09-06 11:50
訳J.S(1994字)

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