肺癌で亡くなったサムスン電子半導体工場の元労働者2人が、勤労福祉公団から労災認定を受けた。サムスン電子半導体工場の労働者が肺癌で労災を認められたのは今回が初めてだ。これに伴い、サムスン電子の半導体労働者が現在までに裁判所と勤労福祉公団から職業病被害を認められた疾病は計8種類、労働者数は14人になった。肺癌はサムスン電子が半導体職業病補償対象に見なした疾病ではないうえに、サムスン側が公団の調査過程で調査を妨害した情況も明らかになり論議が予想される。
「半導体労働者の健康と人権を守るパンオルリム」(パンオルリム)は1日、報道資料を出し「勤労福祉公団が故イ・ギョンヒさん、故ソン・ユギョンさんの肺癌死亡を先月29日と30日に労働災害として最終認定した」と明らかにした。イさんは1994年から2010年まで器興(キフン)と華城(ファソン)の半導体工場で仕事をして38だった2010年に肺癌を発病し、その2年後に亡くなった。ソンさんも1984年から2001年まで富川(プチョン)半導体工場と器興と天安(チョナン)のLCD工場で仕事をして退職した後に43才だった2008年12月に肺癌を発病し、2011年に亡くなった。イさんの家族は2012年、ソンさんの家族は2014年に公団に対して遺族給付を申請し、公団は2~3年経過後に労災と認定した。
イさんとソンさんに対する公団の「業務上疾病判定書」によれば、公団はイさんとソンさんの肺癌による死亡が、肺癌誘発物質への継続露出のためと判断した。今回の事件の業務環境を調査した勤労福祉公団職業性肺疾患研究所(研究所)は、「故人が作業を遂行する時、ヒ素に継続的に露出したと判断され、肺癌に対する他の危険要因がない状態で相対的に若くして肺癌の診断を受け死亡した点を考慮する時、業務との関連性が認定される」と明らかにした。
サムスン電子の協力企業4社が公団の調査を妨害していた情況もイさんの「疫学調査報告書」に記載されていた。イさんとソンさんが仕事をした工程は、現在はサムスン電子の協力企業に外注委託されている。研究所は作業過程で労働者がヒ素にどの程度露出しているかを確認するため、昨年8~10月に協力企業に作業環境評価協力を要請したが、協力企業4社は揃って「事業開始後15年以上にわたり肺疾患などの職業性疾患者は出ていない」「企業機密流出防止のための保安上の理由」を理由に挙げて調査を拒否した。パンオルリムのイム・チャウン活動家(弁護士)は「協力企業の労働者を対象に空気と小便でヒ素露出状態を見ることが調査の目的だが、協力企業側はこれを企業秘密と主張した」として「これは公共機関に対する明白な業務妨害」と話した。
肺癌はサムスン電子が昨年から進めている半導体労働者職業病補償の規定に含まれない疾病だ。今回の労災認定で、サムスン電子の補償手続きと体系に対しても論議が起きると見られる。サムスン電子と同じように半導体職業病補償を実施しているSKハイニクスの場合、肺癌を補償対象に含めている。ソンさんの妻のヤンさんは、ハンギョレとの通話で「サムスン電子の補償規定に肺癌がないため補償申請をしなかった」と明らかにした。
パンオルリムはこの日声明を出して「サムスン電子は今回の事件の調査過程で「発ガン物質を使っていない」と主張したが、その根拠として提出された資料によれば、ヒ素に関しては測定すらしていない」と主張した。さらに「昨年9月からサムスン電子が独断的に進めた補償手続きにおいて“肺癌”は補償対象疾病として議論さえしなかった」として「職業病被害家族と合意した補償基準にともなう公正で透明な補償を実施せよ」と明らかにした。
これに対してサムスン電子関係者は「昨年7月に発表された調停委員会の勧告案で肺癌は補償対象疾病として指定されておらず、補償対象を変更する計画もない」と明らかにした。協力企業の調査拒否についても「協力企業の問題にサムスン電子が言及することは適切でない」と明らかにした。