米国がイランの体制を転覆させるために、イラク国内のイラン系クルド人武装勢力の利用というカードを切ることを検討しているという。攻撃されたイラン政府の統制力が弱まると、中東で不安定さが増し、誰にも予測しえない災厄が発生する恐れがある。米国は「パンドラの箱」を開けるなどという無責任な誘惑を振り払い、早期終戦に向けて外交努力をはじめるべきだ。
ニューヨーク・タイムズなどの主要メディアは現地時間の4日、イラク国内の親米クルド人武装勢力がイラン国境をまたぐ軍事行動を準備していると報じた。FOXニュースが一時、地上作戦はすでに行われていると報じたが、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官らによってすぐに否定された。ただし米中央情報局(CIA)が戦争前から親米クルド人武装勢力に小型の火器を提供しており、トランプ大統領が彼らを利用するかどうかを検討しているのは事実だと思われる。レビット報道官も、トランプ大統領がクルド人指導者たちと電話をしたこと自体は認めている。
イラン、トルコ、イラク、シリアが国境を接する地域に住むクルド人は、独立国家を持たない地球上で最も大きな民族と呼ばれる。独立を求める人々の武装闘争に、これらの国は長いあいだ頭を悩ませてきた。イランも、2022年末の「ヒジャブデモ」と、最大3万人が死亡したとされる昨年12月のデモで、反政府デモが最も激しかったのはクルド人の住む北部クルディスタンだ。武装勢力が米国の支援で同地域を掌握すると、イランは「内戦状態」に突入することになる。
その結果どのようなことが起こるかは、シリア内戦で経験済みだ。難民が大量に海を渡ることで欧州は極右化。残虐なテロを繰り返すISが登場した。イランはペルシャ湾の向かいにある湾岸の産油国を攻撃する軍事的力量を備えており、60%の高濃縮ウランを保管している。世界のエネルギー輸送量の4分の1を担うホルムズ海峡の命綱も握っている。イラン政府が主要国家施設に対する統制力を失うと、その後何が起こるかは誰にも予測できない。
トランプ大統領は、今回の軍事作戦は4~5週間かかると述べているが、ホルムズ海峡の安全な航行が保証されるには、それ以上の時間がかからざるを得ない。彼の無謀な選択により、世界中がすでに多大な被害にあっている。米国はクルド人の投入という「危険な賭け」を今すぐやめ、イランの新たな指導者と終戦に向けた対話をはじめるべきだ。