「あなたのための行進曲」を巡り、奇怪な状況が展開されている。
5・18光州(クァンジュ)民衆抗争記念式で「斉唱」してきた歌を、朴槿恵(パククネ)政権に入って「合唱団の歌」に替え、一緒に歌うのを各自の選択に任せた。記念式に参加した官僚たちは歌わない方を選択し、口を固くつぐんだ。 光州の「民衆抗争」を認めたくないのだ。
「あなたのための行進曲」は1982年2月に行なわれた、抗争指導部の一人、ユン・サンウォンの霊魂結婚式のために作られた歌劇『ノップリ』(ノッは魂、プリはハン(恨)などを慰める意)の挿入曲だった。 抗争空間でユン・サンウォンは29歳だった。労働夜学「野火夜学」のリーダーで、名望家や指導部が予備検束された状態で浮上した「若きリーダー」だった。彼は労働現場で鍛錬された夜学組織を抗争期に印刷物(ビラ)の製作・配布組織に切り替えて「闘士会報」1~9号を製作した。「闘士会報」は新聞発行が中断され外部と遮断されて目と耳を失った光州市民にとって、優れた代案メディアであった。
「指導部がいない現実で、 宣伝扇動は命のようなものだ。再び闘うことができるように知らせること、最大限知らせなければならないんだ。全斗煥(チョンドゥファン)は銃剣より一枚の闘士会報をもっと恐れている」
ユン・サンウォンは5月27日の未明、青年、高校生、女性たちには身を隠すように言い、自身は道庁に残って全斗煥軍部の下手人に転落した空挺部隊に立ち向かい 、死亡した。 霊魂結婚式で彼の妻になったパク・キスンは野火夜学の創立者。大学から無期停学処分を受けた後、工場に「偽装就業」し、昼は工場で夜は夜学で労働者と共にあった労働活動家で、ユン・サンウォンの同志だった。新しい社会を夢見ていた彼女は、抗争勃発以前に煉炭ガスで亡くなった。
『五月の文化政治』はこうした話を中心に、1980年5月に光州で繰り広げられた文化闘争を総整理した。 十日間の間そこで生まれた詩、歌、ノガバ(替え歌)、印刷物(ビラ)、スローガン、標語、音響などを全て集めて分析することで、抗争空間で誰がどんな文と歌、どんな印刷物を作ったか、そしてそれらがどのように市民と共有されたのかを見せてくれる。 ヘリから撒布される“ビラ”や拡声器の音声と対比される地上の文化の現場は、生き生きしていて読む者の心を震えさせる。
最も多く歌われた歌が「愛国歌」だというのは意味深長だ。道庁前広場に集まって抗争を誓い合った時、空挺部隊が発砲を始めた時、また、銃で、銃剣で、棍棒で殺されていった人々の葬式においても歌われるなど、抗争期間中、終始荘重に響き渡った。 「愛国歌」は市民と市民軍を一つにし、抗争が愛国であり義挙であることを、鎮圧軍と軍部の行為が偽の愛国でありで暴挙であることを明確にした。 「愛国歌」と同様に多く歌われた「アリラン」は、光州抗争の民衆性を証明していると著者は見る。
これまで研究が抗争後の「記憶の闘い」の方式で抗争を照明、或いは再解釈してきたのに対し、本書は文化的側面を照明することで 5・18のミクロ史とともに抗争のもう一つの層位を修復して見せた。
韓国語原文入力:2016-05-19 20