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[寄稿]南北関係の作用と反作用

登録:2016-05-15 23:30 修正:2016-05-16 07:28

 北朝鮮労働党第7回党大会で金正恩(キムジョンウン)委員長は、6万字に達する演説の中で統一と南北関係分野にほぼ1万字を割いた。金委員長は「北と南に分かれいまだに互いも反目し、対決するのは、民族の統一的発展の道を自ら塞ぎ、外勢に漁夫の利を与える自滅行為だ」としながら、南北関係を根本的に改善することを呼び掛けた。韓国政府やマスコミ、国民の反応は冷ややかだった。それに先立ち、北朝鮮が核とミサイルですぐにでも韓国を火の海にすると大騒ぎした際にも、韓国国民はこれといった反応を見せなかった。金委員長は南北が互いを認め合って尊重することが、南北が和解し、信頼するための出発点であると同時に前提と述べたが、もはや不信の溝はあまりにも深く、南北関係を抜け出せないほどの深い泥沼に陥れたようだ。何が南北関係をこのような状況に追い込んだのだろうか。

 南北関係は国際的分裂と南北内部の分裂との相互作用の中で生成された。初めから相互共存の関係ではなかった。互いに相手を自分流に征服しようとするだけだった。韓国戦争は、この関係を構造的に固着させた。グレゴリー・ヘンダーソンは、世界中のどこにも朝鮮半島のように徹底的に分裂され、封鎖された地域はない指摘した。その原動力は、まさに南と北の政治にあるというべきだろう。南と北はたとえ統一を至高の目標としているが、それは理想であって、現実ではないようだ。現実における至高の価値目標は、やはり他のすべての国同様、自国の利益だ。南北関係はこの国内政治の「栄養分」となってきた。

 サミュエル・ハンチントンは、戦後の発展途上国は、近代化の過程で爆発的に発生する多くの対立や問題に対応するために、強力な中央集権政府に頼らざるを得なかったと分析した。南北は、同じ民族同士で殺し合う戦争まで経験したため、なおさら強力な政府が必要だったし、これらの政府に力を与えたのが、まさに南北の敵対的関係といえる。 1950年代に南北を揺るがした朴憲永(パクホンヨン)事件や曺奉巖(チョボンアム)事件など、数多くの政敵粛清事件が、まさに南北の対決を口実に行われた。韓国で執権した強力な軍事政権と北朝鮮に築かれた唯一体制は、ともに南北の競争と対決を大きな拠り所にした。「7・4南北共同声明」のような歴史的な事件が、韓国の「維新体制」と北朝鮮の「唯一体制」を胎動させたきっかけと言われるのも、そのためだ。

 結局、南北関係は南北の内部状況に応じて国内政治に作用したり、利用されており、それによって南北の政治は再び南北関係に反作用し、南北関係の歴史を織りなしてきたのだ。その結果、韓国ではいわゆる「従北」の「粛清」が行われた。北朝鮮は徹底的に「悪魔化」され、韓国国民の嫌悪の対象とされたようだ。北朝鮮の方はどうだろうか。南北関係が悪化すればするほど、内部凝集力が強化されるという。南北関係が悪化の一途を辿ってきた過去8年間、北朝鮮は核とミサイルの開発の道を突き進んできた。金正恩政権の初期、全国に開発区を建て、改革開放の意志を強く示してきた北朝鮮が、今や核とミサイルへと突っ走るようになったのには、南北関係も一役買ったといえるのではないだろうか。

金景一・北京大学教授//ハンギョレ新聞社

 今、韓国は、水も漏らさぬ封鎖で北朝鮮を枯渇させ、北朝鮮を投降や崩壊に導こうとしている。何よりも、これまで力を入れてきた国内政治が「天の時、地の利、人の和」で、これを支えているようだ。韓国政治は胎生的な希望を実現しようとするのではないか。北朝鮮の政治も、相手の征服を胎生的目標としている。少なくとも征服されることだけは防ごうとするだろう。

 結局、南と北の国内政治が変わらなければ、南北関係は国内政治の需要に応じてジェットコースターに乗り続けるしかない。南北関係を根源的に改善するためには、南北両方に対応した国内政治に変化を呼び込まなければならない。巨大な勇気と大乗的な見地、高度の知恵が必要である。韓国ではもはや口に出すのも憚れる「太陽政策」が特に惜しまれるのも、そのためだ。おそらく、それは南北関係を新たに生まれ変わらせようとした、偉大な試みだったのだ。

金景一・北京大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-15 19:49

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/743933.html 訳H.J

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