5月6日、平壌(ピョンヤン)で朝鮮労働党第7回大会が開かれる。直前の第6回党大会(1980年10月)以来、36年ぶりになる。長い空白と沈黙を経たこともあり、話したいことも多いはず。4回目の核実験(1月6日)とロケット発射(2月7日)以降、北朝鮮と国際社会との乾坤一擲の勝負が繰り広げられる中、外部の関心も最高潮に達している。「朝鮮民主主義人民共和国を領導」(北朝鮮憲法第11条)する労働党のことを知らなければ、北朝鮮を知ることができない。そして、党の「最高指導機関」(党規約第14条1項)の党大会を知らずして、労働党を理解できるはずもない。党大会は、北朝鮮を理解するキワードであり、近道だ。
「党中央委員会政治局は、朝鮮労働党第7回大会を2016年5月6日、革命の首都、平壌で開会することを決定する」。北朝鮮の労働新聞と朝鮮中央通信が27日に報じた「朝鮮労働党中央委員会政治局決定書」の一節だ。国の内外のメディアと専門家たちは、「労働党第7回大会」と関連した分析と見通しを、先を争って提示している。韓国をはじめとする北東アジアの主要国政府も様々な情報チャンネルを稼動しながら、北朝鮮の第7回党大会の動向の収集に神経を尖らせている。第7回党大会が直前の第6回党大会(1980年10月)以来、36年ぶりに招集されただけではなく、金正恩(キムジョンウン)労働党第1書記執権5年目に行われるという点で、特に注目の対象になっている。
なぜ、(北朝鮮の)労働党大会にこれほどの注目が集まっているのだろうか?
疑問を解決するためには、北朝鮮で労働党と労働党大会が占める地位と果たす役割を知らなければならない。北朝鮮の労働党は、韓国のセヌリ党、共に民主党、国民の党、正義党などとは地位も役割も異なる。憲法の規定を比較してみよう。「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の領導のもとですべての活動を進める」。北朝鮮の「社会主義憲法」(2012年改訂)第11条にはこうある。「党が国家を導く」ということだ。これを「党・国家体制」という。「プロレタリア独裁」の原則に基づく「唯一党」が国家を作り、国家よりも優位に立って(国家を)導いていくシステムということだ。ウラジーミル・イリイチ・レーニンが率いたボリシェヴィキを主軸にした共産党がソビエト社会主義連邦(ソ連)を作り、毛沢東が率いた中国共産党が中華人民共和国を建国した歴史的な事例を思い出していただいた方が、いいのかもしれない。
■労働党70周年式典直後に招集を決定
一方、「大韓民国憲法」は、「政党の設立は自由であり、複数政党制は保障される」(第8条1項)と規定している。また、「政党の目的や活動が民主的基本秩序に反する際には、政府は、憲法裁判所にその解散を提訴でき、政党は、憲法裁判所の審判によって解散される」(第8条4項)と明記されている。韓国では、すべての政党が憲法に基づいて「民主的基本秩序」を尊重して活動しなければならない。そうでなければ、解散されることもあり得る。韓国では国家が党の優位に立つ。
複数政党制を採用した大半の国では、定期的な選挙を通じて与党が変わる。しかし「党=国家」(党・国家体制)の北朝鮮、中国、ベトナム、キューバなど現存する社会主義国家では、原理上「唯一党」での与党が変わることがないだけではなく、歴史的にも一度もそのようなことは起こらなかった。
労働党大会は「朝鮮民主主義人民共和国を領導」する朝鮮労働党の「最高指導機関」(労働党規約第14条1項)だ。したがって、労働党大会は北朝鮮で最も重要な政治的な行事である。党代表や大統領選挙候補を選出する韓国政党の大会とは位置づけが異なる。あえて比べるなら、韓国の大統領選挙程度が肩を並べることができるだろう。ただし、韓国大統領選挙は、長期に渡る軍事独裁にもかかわらず、すでに18回も行われたが、北朝鮮の党大会はこれまで6回だけだった。
労働党大会は何を議論し決定するのか?様々な分析と見通しが飛び交っているが、北朝鮮のように政治過程が不透明な体制を理解するには、基本に立ち返る方が安全だ。労働党規約第21条に「党大会の事業」が定められている。 「①党中央委員会と党中央検査委員会の事業を総括する②党の綱領と規約を採用または修正し、補完する③党の路線と政策、戦略戦術の基本的な問題を討議し決定する④朝鮮労働党総書記を推戴する⑤党中央委員会と党中央検査委員会を選挙する」。この「5つの事業」をさらに要約すると、「直前の党大会から現在までの党事業と成果の決算→党路線と政策方向の提示→党機構と権力構造の改編」というのが中心内容だ。かなり見慣れないものかもしれないが、そういうものがあることだけ念頭に置いたほうがいい。
基礎学習は終わった。分析と見通しの前に、党大会招集の時期(2015年10月30日)と開会決定時期(2016年4月27日)の間に、何が起こったのかを振り返ってみる必要がある。党大会招集の決定は、労働党創建(1945年10月10日)70周年記念式典を盛大に行った直後に行われた。「党中央委員会政治局は、主体革命の偉業と社会主義強盛国家建設の偉業の遂行において、世紀的な変革が起こっている我が党と革命発展の要求を反映し、朝鮮労働党第7回大会を主体105(2016)年5月の初めに招集することを決める」という「決定書」の文言から、それなりの自信がうかがえる。党大会を招集できないほどの危機と悩みで綴られた「苦難の36年」を乗り越え、立ち直ったという充実感を覗かせているのだ。
ところが、党大会の招集を決定してから、外部環境が深刻に悪化した。まず、朝中関係の改善を加速する契機として期待されていた北朝鮮のモランボン(牡丹峰)楽団と功勲国家合唱団の北京公演が昨年12月12日、北朝鮮側の電撃的な撤収で取り消された。同日、南北関係の改善の転機になったかもしれない第1回次官級南北当局会談(開城工業地区)も決裂した。党大会を控え、同時に進めた朝中、南北関係の改善の試みが失敗に終わったのだ。朝中、南北の間に溝は深まった。モランボン楽団の北京公演が盛況のうちに進められ、南北当局会談も成果をあげたなら、それ以降の北朝鮮の行動と朝鮮半島情勢は今と全く異なっていたはずだ。
「唯一党」が率いる党・国家体制
朝鮮労働党が「最高指導機関」
北朝鮮で最も重要な政治的な行事
招集決定以降、外部環境が悪化
南北、朝中間の溝深まる
国際社会の強力な制裁の中、強行
中期経済計画を提示する可能性低く
党規約に「核保有国」を明示する可能性も
朴槿恵政権に対話を提案せず
主席・国防委員長には就任しない見込み
■「経済・核武力建設並進路線」の見込み
北朝鮮の朝鮮中央通信の報道によると、金正恩労働党第1書記は、その直後に4回目の核実験の進行を命令(12月15日)し、最終命令書に署名(1月3日)した。続いて4回目の核実験(1月6日)、ロケット発射(2月7日)など、「戦略的軍事行動」が相次いだ。朝鮮半島の危機指数が急上昇した。国連安全保障理事会(安保理)は、非軍事的制裁措置としては、国連の70年の歴史上、最も強力とされる「決議2270号」を採択することで、北朝鮮への対応に乗り出した。金正恩第1書記が党大会を招集した時点で、党大会前に4回目の核実験を行う計画を持っていたかどうかは、定かではない。ただし、真実が何であれ、悪化した外部環境が第7回党大会における議論の内容と結果に影響を及ぼさざるを得ないといのは明らかだ。
それでは、労働党規約に明記されている「党大会の5大事業」を確認してみよう。
第一に、「事業総和」。 「総和」とは「決算」と意味が似ている。 第1〜6回党大会の事業総和の報告主体は例外なく、当時、北朝鮮の最高権力者である金日成(キムイルソン)主席だった。このような先例に照らしてみると、第7回党大会の事業総和報告は当然、金正恩第1書記の役割だ。金第1書記は、党大会が開かれなかった36年間の政治・経済・対南・対外分野の党事業を決算し、これを基に新たな政策方向と路線を打ち出さなければならない。直前の第6回党大会の際に、金日成主席は5時間もかけて事業総和報告を行った。党大会開会日または翌日に行われる事業総和は党大会の中核だ。党大会の内容と方向を決定的に規定するからだ。
「総和」は、「成果」を前提とする。金正日(キムジョンイル)国防委員長が十数年にわたる政権期間に一度も党大会を招集できなかったのも、そのためだ。金正日総書記が執権した時期の大半は社会主義圏の崩壊と致命的な食糧・エネルギー難による「苦難の行軍」の時期と重なる。この時期、金委員長は党ではなく、国防委員会を前面に出した「異常な国家運営」(先軍政治)で危機に対応した。
金正恩第1書記は今年の年頭辞で「朝鮮労働党第7回大会には(中略)輝かしい設計図を広げて見せることになるだろう」と予告した。 「輝かしい設計図」が何なのかは、これから見極めなければならないが、少なくとも二つは予見できる。 「経済・核武力建設の並進路線」と「百方に高まった党の指導力」を掲げるだろうという点だ。 「党が国家を領導する」という憲法の規定によれば、論理的には「党の指導力強化=党機能の正常化=国家機能の正常化」になる。
第二に、党大会の政策分野の案件の中で最も重要なのが、経済発展戦略だ。党規約の序文が、「人民生活を絶えず高めることを党活動の最高原則」として規定しているだけではなく、特に、金第1書記が今年の年頭辞で「人民生活の問題」を「千万の国事の中で第1の国事」として掲げたものだ。
第3、4、5回党大会の際には「中期経済計画」が提示された(第3次新経済発展5カ年計画、第4次人民経済発展7カ年計画、第5回人民経済発展6カ年計画)。第6回党大会の際には、中期経済計画の代わりに「社会主義経済建設10代の見通し目標」という、やや抽象的な方針が発表された。第7回党大会が国際社会の強力な制裁の中に強行されていることを考えると、中期経済計画が提示される可能性は低い。
金第1書記が執権してから発表した「新経済管理体系」(2012年6月28日)や、よく「我々式の経済管理方法」と呼ばれる「社会主義企業の責任管理制」(2014年5月30日)を公式化するかどうかも注目を集めている。専門家たちは、現場の経済単位の自律性や責任性、インセンティブの強化などに注目し、これを「北朝鮮式の経済改革」の萌芽と見なしてきた。しかし、大きな期待はかけない方がいいかもしれない。労働党中央委政治局会議(2月23日に推定)を通じて宣言した「70日戦闘」でその兆しが見える。金第1書記の父である金正日総書記が提起した大衆運動方式の経済発展戦略である「速度戦の方針」が初めて適用された1974年の「70日戦闘」を連想させるからだ。 「○○日戦闘」という名前のあらゆる速度戦は、人的・物的な財源が注ぎ込まれ、定められた期間内に目標を超過達成してきたが、実際は資源配分を極度に歪曲して、経済基盤を蝕む。 1950年代の「千里馬速度」を連想させる「万里馬速度」をスローガンに掲げた「70日戦闘」は、短期の成果にこだわった一種の「モルヒネ」だ。 第7回党大会で注目すべき経済発展戦略が提示されることを期待できないのも、そのためだ。国際社会の強力な制裁のため、対外経済開放分野も、特別な言及がないものと予想される。
対南分野では「祖国統一3大原則(7・4共同声明の自主・平和・民族大団結の原則)と6・15共同宣言、10・4(首脳)宣言を尊重し、誠実に履行していこうという意志を示さなければならない」(年頭辞)と呼びかける見込みだが、朴槿恵(パククネ)政権に、新しい対話を提案する可能性は低い。対外分野では、あまり可能性はないものと見られるが、原則的な「平和(な外部環境)」の重要性の強調に留まらず、具体的な提案を行うかも注目される。
■党機構と権力再編にも注目
第三に、党規約の変更と補完だ。通常は党大会の後半に行われる。二つの部分に注目する必要がある。一つ目は、 2012年に改正された憲法の序文に「核保有国」と明示し、2013年に「経済・核武力建設の並進路線」を党の戦略路線として公式採用(3月31日党中央委全員会議)し、「核保有法」を制定( 4月1日、最高人民会議)した流れに沿って、党規約に「核保有国」と明示する可能性があるという点だ。二つ目は、党規約の序文の「朝鮮労働党の当面の目的は、(中略)全国的な範囲で民族解放民主主義革命の課題を実行することにあり」と記された「南朝鮮(韓国)革命」の規定を変更するかどうかだ。これは、第7回党大会のもう一つの関心対象である新しい統一方案の提示よりも、実質的な意味が大きい。南北間の同質性の強化よりも差別化を志向しているような「平壌時間」(2015年8月15日から南北間に30分の時差が発生)の発表に込められた「関係の認識」が、どのような影響を及ぼすかも、見極める必要がある。
第四に、当機構との権力再編だ。金第1書記が執権した以降の党の動きからして、党中央委政治局の強化が予想される。また、金正恩時代を支える世代交代型の人事が「老壮青の調和」という形式の内容を埋める見込みだ。
第7回党大会で行われるすべてのことは、最終的に「金正恩同志を中心とした党の唯一的指導体系」を固めることに集中されるはずだ。 「朝鮮労働党は金日成・金正日主義を唯一の指導思想とする金日成・金正日主義党」(党規約の序文)という宣言のように、「朝鮮民主主義人民共和国を領導」する朝鮮労働党は「革命の脳髄」と呼ばれる首領の指導を受けなければならないからだ。 「永遠の主席」(憲法前文)の祖父(金日成)と「永遠の国防委員会委員長」(憲法前文)であると同時に「永遠の総書記」(党規約の序文)の父(金正日)に従って、既に「天の太陽」(2月23日の最高司令部中隊声明)の金正恩第1書記も第7回党大会を通じて「首領」になる見込みだ。ただし、祖父や父を象徴する主席や総書記、国防委員長の称号は付けないものと見られる。
韓国語原文入力:2016-04-29 19:36